七機目 出会い
「まあ・・・そういう反応になるわな」
「あたりまえ」
キュアノスが呆れたように頷く。
実際の所、物凄く突拍子も無いことを言ったからな。
「理由を聞かせてもらえるかしら・・・?」
すごいなこの子・・・心の抑え方を知ってる。
高校生の俺が言うのもなんだが・・・
俺が経験してきたアルバイトの環境では心を抑えるというか我慢するのが普通だからな。
まあ、理由なんて1つしかないしさっさと言うか。
俺は彼女・・・アルマ・クラインに何故国が欲しいのかを伝えた。
結果・・・
「・・・私では判断しかねるわね。ことが大きすぎる族長に合わせてあげるから話は族長に話しなさい」
と言われ彼女について行くことになった。
そして、10分ぐらい歩いただろうか。
さっき通ってきた道にあった家よりも数倍大きい家というか日本風の屋敷が見えてきた。
なんというか修学旅行で泊まった旅館を思い出すな。
「ここで待っていて」
彼女はそう俺達に言って、門番らしき人物が立っている場所に彼女は歩いていき、その人物に耳打ちをしていた。
「・・・つた・・い・・・?」
「わ・・・だ・へ・・・?」
小声で話しているせいか少しだけ声が聞こえてくる。
何を言っているのかはわからないが。
「待たせたわね」
話というか伝えたいことを伝えたのか、すぐにこちらに来た。
「少し待つけどいいわよね?」
「それは全然いいんだが・・・」
「だが・・・?」
「・・・耳触らせてくれませんかね?」
「・・・・・・」
すんごい呆れられた目で見られた。
いやだってケモミミだよ!?触ってみたいじゃん!!
「父様のアホ」
なんだろうね・・・なんかキュアノスに言われるとこう・・・心にグサッとくるのは何故だろうか?
「はあ・・・まあ、それぐらいなら良いわよ。命を助けてもらったわけだしね」
その言葉に俺は少し体がビクッと反応してしまった。
「いつから気づいていた?」
「あなたが私の前に現れてすぐ。よく考えてもみなさい。盗賊が私の前で急に死んだ。そしてその後にすぐあなた達が来た。これらから考えれることは1つだけでしょ?」
まあ、それもそうか。
というかそれは意図してやったことだから別に気づかれても問題は無いんだが。
「それよりも私は盗賊の死に方について聞きたいのだけれど?」
「それについてはノーコメント」
「ふーん。私を助けたことは認めるんだ」
まあ、ここまでは公開情報みたいなものだからな。
本当に危ない内容はキュアノスが何かしらのアクションを起こすだろう。主に足の小指を踏むとか。尻をつねるとか・・・
「・・・あれ?俺って意外と酷い目にあってる?」
「気のせい」
ちょっとキュアノスさんやなんで目を逸らすんですかねえ?
「まあいいわ。族長との話で出てくるんでしょうし」
「・・・相手次第だけどな。それよりも触ってもよいのかね?」
ちょっと言葉が変になったのはケモミミのせいだと思いたい。
断じて俺が初心とか女性と話すのが得意じゃないせいじゃない。断じてだ。
「ほらいいわよ」
そう言って彼女は俺に頭を向けてくれた。
「おお・・・これが夢にまでみたケモミミ・・・」
俺はそう言いながら彼女の耳を触っていく。
「ん・・・」
触られるのが気持ちいいのだろうか顔が段々ほんのりとした笑みに変わっていく。
ここらへんか・・・?ついでに頭も撫でていた。
「あなた・・・撫でるのうまいわね・・・」
どこかポワーンとした表情でそう言ってくる。
「ジュンでいい。友人からはそう言われていたからな」
「じゃあ、ジュン・・・あ、そこ・・・」
何か言いおうとしたがどやら気持ちよさが上回って言葉がとまったようだ。
「・・・そこまで」
「痛い!?」
「あっ・・・」
俺が彼女の頭を撫で回していたらキュアノスが尻をつねってきた。
「誰かくる」
「いつつ・・・誰かって・・・」
あー尻が痛い・・・
「おまたせしました。アルマ様。族長がお話を伺うそうです」
「・・・わかったわ。行くわよジュン。それと「キュアノスでいい」キュアノス」
どうやらさっきの門番のようだ。
「とりあえずわたしの呼び方はアルマでいいわ。もちろん呼び捨てでね」
「それまた急だな」
「まあ・・・その・・・撫で方が・・・・・・」
うまく聞き取れないが彼女がそう言うなら良いのだろう。
「わかった。アルマって呼ぶ」
「・・・・・・鈍感」
いや、さすがにそれは意味わからないからキュアノス・・・
「と、とりあえずついてきて」
「了解」
どっちにしろ従うしか無いんだけどな。
そう思いながら俺達は門をくぐり屋敷の中へと向かった。
「あ、履物はそこで脱いでね」
ほう・・・まるっきり日本と同じスタイルか。
この屋敷の玄関を見て思ったことがそれだった。
とりあえず言われた通りに靴を脱ぎ、ちゃんと玄関から右向きに靴を並べた。
「へえ・・・よくここの礼儀を知っていたわね?」
「まあ、生まれた国がここと同じ環境だったんだよ」
さすがに屋敷に住んだことは無いが確かこれが正しい礼儀だったはず。
まあ・・・菓子折りとかは無いんだけど・・・
「アルマ?その人誰?」
靴を脱ぎ並べ、アルマについていこうとするとそんな声が聞こえてきた。
声の主を探してみると玄関からすぐの部屋があるらしき襖から顔と耳をちょこんと出している少女がいた。
「!!?」
何故かアルマがその少女の顔を見たとたん固まった。
「おーい・・・?アルマー・・・?」
手を顔の前で振ってみるが反応が無い。
「誰?」
首をコテンと傾けながら少女がアルマではなく俺に聞いてきた。
「俺か?俺は黒守巡」
「じゅん?」
「ああ」
名前を聞いてきた少女はこちらに歩いてきた。
まだ6歳ぐらいか・・・?
髪は金髪だが、これまた透き通るような金髪だ。
目も金色で耳は・・・狐耳か?
この少女もキュアノスと一緒で将来は美人になるだろうと思わせる容姿をしていた。
「私はトト」
「よろしくな」
こっちまで近づいてきたトトの頭を撫でる。
「んー♪」
これまた気持ちよさそうに目を細めてくれた。
後ろの方にいるキュアノスから冷たい視線を感じるが気にしない。
「じゅんはどこに行くの?」
「俺か?族長っていうやつの所に行くんだ」
「族長・・・」
トトは族長という言葉を聴いた途端俯いた。
「まあ、とりあえずアルマを覚醒させないとな。キュアノス頼む」
そう言いながらアルマの方を向き、キュアノスに頼む。
「了解。えい」
抑揚を感じさせない声と共にアルマの尻をつねるキュアノス。
「っ!!?!?」
あー・・・あれは痛いなー頼んだ俺が思うのもなんだが。
「ちょっと加減間違えた」
「痛すぎるわよ!!」
おう、無事覚醒したようでよかった。
「アルマ。案内してくれるか?」
「え、ええ。それよりも何か衝撃的なことを見たような気がしたんだけど・・・」
なんのこっちゃ。
「トトちゃんも一緒に行くか?」
「うん」
トトちゃんはコクンと頷く。
この屋敷に住んでるってことはたぶん連れていっても大丈夫だろう。
「・・・!!?(パクパク)」
だからアルマはどうしたんだ?そんなに口をパクパクさせて。
「歩くのつらいだろうから肩車するか?」
「いいの?」
「別にかまわないぞ」
俺はそう言いながらトトちゃんを肩車した。
「よし!じゃあ、アルマ案内してくれ」
「わ、わかったわ」
「ロリコン・・・」
キュアノスさんさすがにそれはヒドイっす・・・
何故か顔を引き攣らせているアルマとロリコンと糾弾してくるキュアノス、それにさっき出会ったトトちゃんと一緒に族長がいる部屋へと向かうのだった。