五機目 宣言
「なあ・・・キュアノス」
「何・・・?」
「これって歓迎されてるよな。どう考えても」
「間違いなく歓迎されてる。悪い意味で」
「デスヨネー」
俺たちは無事に捨てられた国。スインベルグへと到着した。
城壁?みたいなので囲まれてるせいか中の様子は見えない。
それに規模も結構大きい。山梨県とか栃木県くらいあるんじゃないかこれ?
「まあここまで無事についたのはいいんだが・・・」
「どこのどいつだか知らねえがこの国に入りたきゃ金か女置いてきな!!」
面倒くさいことに盗賊っぽいのがいた。
「はあ・・・まあ、予想はしてた・・・砦もあって中で自給自足がほとんど可能なんだからこういうやつらがいることぐらいわかってましたよ・・・」
「どんまい」
そう言ってキュアノスは俺の肩に手を置いた。
余計に脱力感が襲ってきたのは仕方ないことだと思う。
「キュアノスあの機体の情報を頼む」
「了解。あの機体は人型の代表的な量産型機体。名称はA2型。ただ何年も前のだけど」
人型というよりも戦車に近く見えるのは鈍重そうにみえるからか?
てか全体的に太いなオイ。
「所々に他の機体の部品が見える。腕は赤いってことは・・・レッドカロンの部品みたい」
「それって危険なのか?」
「少し。腕の中に小型の爆弾を内臓している。近接戦闘になった時注意したほうがいいぐらい」
「後は右手にもってるブレードぐらいか・・・」
近接特化型か・・・どうしたもんか
そういえばユニヴェールの武器って何があるんだ?
ふと疑問に思いキュアノスに尋ねる。
「武器は複合翼しかない」
「・・・・・・つまり近接戦をやれと?」
無謀だろと思いながらキュアノスにそう言ってしまう。
「複合翼使えば遠距離戦もできる」
「便利だなオイ・・・」
本当にチートじみてるなあ・・・
「とりあえず目の前のあれをさっさと倒しますか」
「了解。複合翼展開。モード[雷翼]」
そう言うのと同時に機体に雷が纏わり始めるのがモニターでわかった。
「雷槍展開。照準はこっちで合わせる。父様は右手のグリップを握って大体でいいから敵を狙って。親指の所にあるボタン押せば発射するから」
俺は言われた通りにグリップを握った。それと同時にモニターに照準画面が表示された。
こちらが戦闘態勢に入ったのに気づいたのか相手はこちらに向かって突っ込んでくる。
「雷槍発射!」
敵に的を絞りそう言った。そして雷槍がバチバチ!と音をたてながら10本同時に飛んでいった。
というか1本じゃないのな・・・
そんなことを考えている内に雷槍が直撃した。それと同時に目の前が眩しく光った。
「うお!?眩し!?」
つい目を瞑ってしまった。
「目標撃沈」
後ろではキュアノスがそう言っている。
眩しくないのかね?
「半人半機だから」
便利だな半人半機・・・てか心を読むのをやめなさい。
雷が収まったのか目を瞑っていてもわかるぐらいの光が無くなった。
俺は目を開けて敵がいた方をモニターを通して見る。
そこにはさっきまであった鈍重そうで太い機体は跡形もなく消えていた。
「なんていうか圧倒的だな・・・」
「あたりまえユニヴェールは400年前に作られたけど今の最新型にも負けない」
無表情でドヤ顔をするキュアノスを見てホッコリするのは俺だけだろうか?
「てか博士がいたのって400年前かよ・・・」
「そう説明したはず。博士は父様の時代よりも400年先の時代から来たと」
「だからってそのまま400年前にいるとは思わないって普通。せいぜい100年前ぐらいかと思ってたぞ」
気にしたら負けか?
・・・うん、よく考えてみたら異世界に来てる段階で気にしたら負けだったな。
「ところでキュアノス?」
「ん。何?」
「あの機体というかあんな奴一人だけだと思うか?」
「・・・他にも仲間がいると見るべき」
「だよな・・・」
基本的にああいう奴らは集団で行動する。
何故か?簡単だ目的が同じだからだ。
強奪、強姦、そのほかにも色々あるが大体そんな感じだろう。
「やるしかないか・・・」
「ん。やるしかない」
「キュアノス複合翼を水か光にしてくれ」
「・・・ん。了解。[水翼]起動。ステルスする」
俺の言葉の意味を理解してくれたのかキュアノスがそう言ってくる。
「角度調整確認。光度調整。反射開始」
その言葉と同時にゆっくりとユニヴェールが背景に溶け込み始めた。
ユニヴェールに乗っているもの以外がこの光景をみたら幽霊だとか言いそうだな。
「さてさて、お掃除といきますか」
「ん。汚物は消毒」
「・・・どこからそんな知識持ってきた?」
「博士」
色々と頭痛くなってきたなオイ。というかそのネタ知ってたのね博士さん・・・
「とりあえず国に入るか・・・」
なんか戦闘をするよりもどっと疲れた気がする・・・
そう思いながらユニヴェールに砦の門をくぐらせる。
「おお・・・こりゃすごいな・・・」
中に入ってすぐに見えたものはでかい街だった。
日本の家というかヨーロッパの景色がしっくりくるな。
「それにしてもだ・・・」
人が外を出歩いていない?
「ん。人はいる確かに。でも・・・」
「何かに怯えてる?」
「ん・・・」
よーく見ると家の窓っぽい所から人みたいな影が見える。
「父様あっち・・・」
キュアノスに言われた方向を俺は見た。
そこには盗賊らしきやつらが広場っぽい場所で集まって何かを囲んでいた。
「や、やめて!!」
キュアノスが音を拾ってくれたようだ。
「それ以上近づくなこの変態!!」
「クケケ。威勢のいいお嬢ちゃんだな」
「私を誰だと思ってるの!?誇り高き獣人一族のアルマ・クラインよ!!」
「知らねえなあ。おいお前たちこのお嬢ちゃんをひん剥いてやんな」
「や、やめ・・・」
どうやら強姦されそうになっているようだ。
「キュアノスやれるか?」
「問題ない。マルチロック開始。水刺弾展開」
そうキュアノスが言うとモニターにいくつものロックオンマークが出てきた。
ちなみにこの水刺弾とは10cmぐらいのサイズの弾だ。
撃つとさらにサイズが圧縮する。とキュアノスが説明してくれた。
モニター越しに見てるせいかちょっと大きく見えるのは距離のせいだろう。
「あとはさっきと同じ。ただ・・・」
「ただ・・・?」
「さっきとは違って人を撃つことになる・・・平気?」
「・・・覚悟はしてる。いつかこの手で誰かを殺すことなんてこの世界に来てわかりきってたことだからな」
そう考えるとさっきの機体に乗ってた奴は俺が殺ったんだよな・・・
「父様手が震えてる・・・」
「え?」
あれ?気がつかない内に震えてたか・・・ははは・・・
心の中で軽く苦笑しながら俺は左手で震える右手を押さえた。
そして俺の肩にキュアノスの手が優しく置かれる。
「・・・大丈夫。これは人殺しじゃない。害虫駆除」
「大丈夫だ。覚悟はできてるっていっただろ?それに害虫ってひどいな」
「ん・・・。害虫は害虫」
俺は再び苦笑しながら盗賊がいる方向を見た。
いつの間にか手の震えは止まっていた。
「ありがとうな。キュアノス」
「ん」
それじゃあ1発いや12発か?いってみますかね!!
俺はこれから人を殺すだろう。だが間違ってはいないと思う。
それはこの世界では必要なことだとわかってるから。
だから俺はこのボタンを押す。
「水刺弾発射!!」
俺はそう叫びながらボタンを押した。それと同時に12発の水刺弾が飛んでいった。
そして獣人の少女?を囲っていた12人の盗賊は水刺弾を頭にくらい直撃し一瞬で絶命していた。
「・・・え?」
盗賊に囲まれていた獣人の少女は一瞬なにが起きたのかわからなかった。
急に自分を掴む手の力が弱くなったと思い、瞑っていた目を開け。
盗賊の方を見た。
「っ!?」
私は驚いた。全員が頭を撃ちぬかれた用に倒れていたからである。
「でも・・・火薬独特の臭いがしない・・・?」
それに音もなかった。
サイレンサーをつけてるにしても一斉に12人も殺す・・・しかも同時になんてどう考えてもおかしい。
西部の方の武器・・・?
「とりあえず死体を見てみよう。それで何かわかるかも・・・」
私はすぐに死体の元に近づいた。
最初に見たのは仰向けに倒れている盗賊だった。
「なにこれ・・・?」
撃たれた後が無い・・・?
いや・・・よーく見ると3cmぐらいの穴が開いていた。
「それにしてもなんで出血が一滴も無いの?」
再び盗賊の頭に空いた穴を見た。
「これは・・・!」
凍っている・・・!
一体何が起きたと言うの!?
この世界で属性を操れるのはエルフだけだ。
「エルフが私を助けてくれた?」
いやそんなはずは無いエルフは基本的に干渉してこない。
エルフが動くときは自分の領地を侵攻してきた者に対してだけだったはず。
「あー・・・そろそろいいか?」
「誰!?」
私は声がする方向を向いた。
向いた方向にいたのは変な風貌の少年だった。
髪は黒く瞳も黒い。しかも顔が幼い、13、4歳?それに・・・
「(なに?この服?)」
彼女がいるこの世界には無い服なので疑問に思うのも仕方ない。
巡が着ている服はTシャツとジーパンだ。
この世界では彼女が着ているような、綿で出来ているボタン付のシャツとロングスカートか長ズボンが一般的だ。
ただ貴族や王族となってくるとまた違う。
黒のタキシードみたいなのが貴族の中では一般的だ。
そして王族に関しては異端といって言い程豪華だ。
宝石がついてるのなんて普通だ。
中には服に拘らない王もいるらしいが。
「・・・デレデレしない」
「いでででで!!」
そして黒髪の少年の後ろから出てきたのは淡い青色の髪を持つ少女だった。
「(こっちも不思議ね)」
緑色の髪とか銀や金などならよく見るが青色は見たことが無い。
確か北の方にそういう種族がいるって話は聞いたことがあるけど。
「あなた達は・・・?」
「あー・・・俺の名前は黒守巡。こっちは・・・」
「キュアノス」
「クロモリジュン?変な名前ね」
「・・・大体予想していたけどやっぱり変な名前扱いなのな」
そう言うと彼は肩をがっくりと下げた。
「ああ。ごめんなさい。別にそういうつもりで言ったのではないの」
単に珍しいなと思って口に出してしまった言葉が彼を傷つけてしまったようだ。
「それで君は?」
「ああ。私だけ自己紹介してないわね。私はアルマ・クライン獣人族よ」
「やっぱりか・・・」
何がやっぱりなのだろうか?いやそれよりも確認したことがある。
「あなた達何者?」
少なくともこの街の人ではない見たことがない。
なら外から来た人に違いないと踏んだ私は疑問を投げつけた。
しかし帰ってきた言葉は予想外のものだった。
「えーとだな・・・」
「何か言いづらいことでも?」
「いや・・・」
「なら聞かせてもらえる?」
「・・・ただ、この国をもらいに来た」
「はあ!!?」