表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/43

8

 四日目の夜、ルーシーが部屋にやって来た。

 何だか久しぶりに顔を見る気がする。相変わらず、見惚れるような美貌だ。凛々しい詰襟の軍服がよく似合っている。


『アスカ、*******……』


「ルーシー」


 ルーシーの傍へ寄ると、観察するように見下ろされた。


“元気そうだな”


 心外に思い、飛鳥は不服そうに眼を眇めた。

 ルーシーは、リオンの差し入れた絵本やぬいぐるみに気付くと、部屋を見渡して飛鳥を見やる。


“いろいろ増えたな……。十二、三歳?”


「えっ!?」


 子供に思われていることは知っていたが、そこまで下に見られるとは思わなかった……。


“……まただ。何を驚いている?”


 まずい。ルーシーの心の声に、つい反応してしまった。気をつけていても、なかなか上手くいかない。表情を動かさないよう、かなりの努力が必要だった。


“エーテルを使っているようには見えない……、しかし適応能力がある……”


『アスカ***、エーテル******?』


 飛鳥は判らない、というように首を左右に振った。


“ルジフェル閣下はアスカを見て、何と言うだろう……”


「ルジフェル」


 その名前には聞き覚えがある。リオンの思考にも何度か出てきた名前だ……。その人が、飛鳥の今後を左右する鍵を握っているのだろうか――。


『********?』


“今、ルジフェルと言った? 行政庁長官を知っているのか?”


 弾かれたように顔を顔を上げると、ルーシーと目が合った。しまった。どんな顔をすればいいのか判らない。咄嗟に背中を向けると、肩を掴まれて体を反転させられた。


『********?』


“知ってるのか?”


 慌てて首を左右に振ったけれど、その仕草を見て、ルーシーは眉を顰めた。


『……』


“言葉を、理解している?”


「――っ!」


 誤魔化そうとすればするほど、裏目に出てしまう。思いっきり視線を逸らしてしまい、余計に疑念を与えてしまった。ルーシーはなかなか許してくれない。飛鳥がどれだけ顔を背けても、視線を合わせてくる。


『*******?』


“なぜ話さない?”


「すみません、判りません! 離して」


『アスカ**、**********、******?』


“なぜ話せない振りを?”


「判りません!」


『***********……』


 ルーシーは飛鳥の顎を掴むと、間近で顔を覗き込んだ。不思議な虹彩の青い瞳に、目を丸くしている飛鳥の顔が映っている。


『*********』


“話せ”


「すみません、判りません」


“何を隠している?”


 ルーシーはすっかり疑っている。言葉を話せないのは、本当のことなのに。飛鳥の耳元に顔を寄せると、吐息を吹き込むように囁いた。


『*********……』


“話すか?”


 長い指で耳たぶに触れられて、飛び上がりそうになった。とても冷静でいられない。飛鳥を追い詰めるように、妙に優しい手つきで触れて、プレッシャーを与え続ける。

 耐え切れず、暴れて逃げようとしたら、振り上げた両腕を簡単に掴まれてしまった。


『******!』


“話せ”


「ルーシー、メル・アン・エディール!」


 不安と緊張が限界に達し、ついに言ってしまった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=837031108&s
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ