睨み合う二人。
ドンドンドンッ!!
「旦那様!!旦那様!!」
エントランスホールの中間辺りに、ソファーとテーブルが置いてあり、僕らは座っていたそこから立ち上がると、先程入ってきた玄関扉のすぐ脇にあった階段を駆け上った。
そして、真正面の廊下ではなく、右手に折れて奥の廊下を目指す。
そして、左の屋敷の裏側になる廊下を奥の方へ突き進む。
いた。一番奥の部屋の前で、扉を叩いている。
フカフカのソファーは高級そうで、走る足音を吸収した。
「どうしました?」
声を掛けると、執事さんは扉を叩く手を中途半端な位置で止めて、こちらを振り向いた。
少し、目を瞠ってから、直ぐに取り繕う様な顔になった。
それでも、動揺しているのが伝わってきた。
「し・・失礼しました。旦那様からの返答がないものですから・・・。」
・・・単に居ないんじゃありませんか?
僕は、心の中で言ったつもりでしたが、どうやら口から零れていたようで。
眉をハの字気味に下げて、視線を彷徨わせながら執事さんは、僕らに向かって言いきった。
「いえ。いらっしゃる・・はずです。一時から会議を行う為に、籠ってらっしゃったんです。
会議の方は、終わっているようですが・・鍵が掛かってますから。」
「鍵?」
目を細めたキイチさんが短く、聞き返した。
「・・・はい。旦那様が室内にいらっしゃる時以外は、普段、鍵を掛けておりません。」
と、話をしていると、また別の誰かの声が聞こえてきた。
「高槻さん?何があったんです?」
廊下を大股で、歩いてくるのは、背が高くてガタイのいいキイチさんぐらいの年齢、30歳前後と思われる男性だった。
キイチさんも背が高いですが、それ以上に大きいです。
僕、背はあまり高くない(というより小さい)ので、立ち話してると首が疲れそうです。
なんて思っていると、その男性は僕たちを一瞥し、執事さんに視線を移した。
「なんです?この人たち。」
ああ、不審者に見えるんですね。僕じゃありませんよ。
絶対、キイチさんのダルダルが滲み出ているんですよ。
「要、口に出てるぞ。誰がダルダルだ。」
ボソリと、僕に教えてくれたのは、キイチさんでした。
は。お・・怒ってらっしゃる?
キイチさんを上目でちらりとのぞき見るが、キイチさんは男性を見ていた。
「すみません。道に迷ったモノです。
電話を拝借するのに、下で待たせてもらってたんですが、音が聞こえたもので。」
キイチさんと男性は、向かい合ったまま互いを凝視している。
睨み合ってるように見えるのは、気の所為だろうか。
・・・こ、怖いです。でかい二人は、迫力がありますよ。
執事さんはというと、ああ、迫力に押されちゃってますね。僕もですけど。
ここは、僕が勇気を持って・・・。
「あ・・あのぉ。」
睨み合ってた二人が一斉にこちらに顔を向けた。
!!ひーー、怖いです。その怖い顔で僕を見ないで下さい。
「い・・いいいいんですか?そこの部屋の・・・。」
と、”い”が若干多いが、頑張ってここにいる理由を思い出してもらった。




