終結。
沈黙を割ったのは、キイチさんでした。
「犯人は、あんただよ。印南さん」
ですよね。僕もそう思ってたんですよ!!なんせ、助手ですから!!
「除雪しながら、降雪・・・雪も降らせたんだ。あんたは。」
僕は、思った事をそのまま言ってしまいました。
「え!!すごいですね。ハンドパワーとか?」
ものすごーーく、冷たい目で見られました。
「ドアホ。降雪機だよ。」
コウセツキ??
僕が首を傾けていると、眉間を指で弾かれた。
い・・痛いです。じみーーーに、痛いです。
「スキー場とかにあんだろが。雪が少ない時に人工雪を降らせるんだよ。」
「あ、この前のドラマで見ました!!アレですね。でっかい扇風機みたいなヤツ。」
とりあえず、スルーされました。
「書斎のベランダに雪降らして、跡を消したんだよな?
・・・溶けて凍った上に被せた雪が滑って、ずれてたな。」
じぃっと印南さんを睨むキイチさん。俯く印南さん。
・・・・。
印南さんは、大きく息を吸うと、吐き出しながら目を瞑って答えた。
「・・・俺が殺った。」
印南さんは、肩を落とすと話し始めた。
印南さんの両親は工場を経営していたが、経営不振で潰れてしまった。
そこに、融資会社の竹田氏の横暴な取り立てに遭い、父親は自殺。母親もショックで、病気がちになり一年後に亡くなってしまう。
大人になった印南さんは、屋敷に上手く潜り込んで、復讐の機会を窺っていたそうだ。
その機会が、来てしまったのだ。
凶器は、マントルピース近くの猫足テーブルの上に置いてあった花瓶。
血のついた花瓶は、山になった雪の中から出てきた。
あの時、部屋の中を見た執事さんが無くなった花瓶に気がつかなかったのは、動揺し過ぎて主人しか目に入らなかったのだろう。
それから、逃走の際に開けた窓から雪が中に入ってしまって、カーペットが濡れてしまった為、それを乾かそうと室内の暖房を強めた。
発見時に部屋が異常に暑かったのは、それが故。
そして、窓から出た後、近隣のスキー場から借りていた降雪機で人工雪を降らせて、跡を覆う。
降雪機は、筒口になっていて、狙ったところに積もらせる事が出来るタイプだった。
巨大モニュメント造りがあったために、降雪機を借りても怪しまれなかったそうだ。
音は、同時に除雪機を動かしていたために、前日よりも騒音になったが、特に誰も気に掛けなかった。
それぞれが、自分の事しか考えてなさそうな一家だったし・・・と、寂しく思う。
次の日になってやってきた警察に、印南さんは罪を告白し逮捕された。
僕たちは、警察の人に駅まで見送られて、帰途に就いたのだ。
その後、あの家の人たちは、どうなったんでしょうね?
復讐・・・ですか。
厭な言葉ですね。キイチさん。
キイチさんもそう思いますよね?って、事務所の応接セットのソファーで、爆睡しないで下さい!!
「ああ!!!」
僕は、気がついてしまいました!!!
僕の声に吃驚したキイチさんが、ソファーから跳び起きた。
「な。なんだ?どうした?」
キョロキョロするキイチさんに、僕は言いました。
「僕たち、タダ働きじゃないですか~!!!」
叫んでる僕は、条島要、探偵助手です。




