No.5 ピエロって・・・②
マジかよ・・・っ・・・。
聞こえないってことがあるのか・・・ッ?!
こんなこと初めてだ・・・。
ピエロって・・・・何者ッ!?!?
そんなことを思いながら、まだ驚きを隠せないまま口の中にトーストをねじ込んだ。
「あっ・・・・美味いッ!!!」
「おやっ?お気に召しましたか??」
こんな美味いトースト食べたもの初めてかもッ!!!
このイイ感じの焼けぐわい・・・・、絶妙な塩加減・・・・・。
なによりッ!!!このパンの食感が美味いッ!!!
まるで・・・プロが作ってみたいだ・・・・。
あまりの美味しさに、晃はピエロの視線を気にせず噛み付くように食い付いた。
「あぁーッ!!!!美味かったぁーっ!!!!」
「ありがとうございましたッ!!!お客さんッ!!!イイ食べっぷりですね!!!」
「コレッ!!!めっちゃくちゃ美味いですよッ!!!
ちょっと見直しましたッ!!!」
余りの感動に少しほほが緩んだのを自分でも感じた。
そんな晃を見ると、ピエロは今まで以上にもっと怪しげな笑みを浮かべた。
あれ・・・・?
何か・・・雰囲気が変わった・・・?
ピエロはその表情のままゆっくりキッチンから出て来ると
晃の席の隣に座った。
「ところで・・・お客さん・・。」
「・・・何ですか?」
「お客さんは、魔法をどう思いますか?」
「はぁっ?魔法???
まぁ・・・・。
あったらいいなとは思いますが・・・。」
「そうですかッ!!!それはよかったっ!!
実はここはね・・・・表的にはバー&カフェなのですが・・・。
実は、この店の本来の商売は、違うのです。」
「はぁ・・・。そうなんですか・・・。」
何だ・・・?何が言いたいんだ???
妙な緊張感と異様な違和感が漂うままピエロは、ゆっくり話を続けた。
「貴方の通っている高校は・・・浜京高校ですよね?
確か・・・あの高校の生徒は、みんな噂や怪奇現象的なものを信じるらしいですが・・・。
貴方は、どうですか?」
「・・・まぁ。信じ切れないこともないですから・・・。」
「なるほどッ!!!それは素晴らしいッ!!!
なら・・・・。聞いたことはあると思いますが・・・。
なりたい自分になるための店があることは知っていますか?」
「・・・・まぁ。噂なら知ってます。」
「ならもし・・・。
それが本当だとしたら・・・・・凄くないですかッッ????」
何だか・・・嫌な予感がする・・・。
そういえばッ!!!
無理矢理入れられたからこの店の看板見なかった・・・。
もしかして・・・此処はッ・・・・?!?!
「では・・・その店が何処にいるか分かります?」
「さっさと本題に入って下さい。」
「おやおやっ!!!お客さんッ!!!
見た目によらずはっきり言いますね・・・。」
そういうと、今まで笑っていた顔を更に口を吊り上げて笑った。
「では・・・改めまして。
ようこそッ!!!ワンダーショップへッ!!!
貴方の人生を変えるお店です。」
やっぱりぃいぃッッ!!!!
此処があのワンダーショップッ!!!
確かにカフェ屋にしては、席が少ないし・・・。
バーにしても・・・こんなに早い時間から聞くのも珍しい・・・。
店のいたるところに、人形が沢山あり、少しゴスロリ風の赤いカーテン。
カウンターや店内は普通だが・・・・。
全体的に見て暗い印象を与えている。
外から見たら人形屋か・・・何やら怪しげな店だ。
言われるまでは気づかなかったけど・・・
言われてみれば・・・・ワンダーぽいっ!!!
「当店、ワンダーショップは、お客さんの望んだどんな姿にもなることが出来ますし・・・
新たな人生をスタートさせることが出来ます。
お客さん・・・何か悩み事とかないですか?」
「・・・まぁ。ありますけど・・・。
僕の悩みは、絶対無理だと思いますよ??」
この呪いの様な能力がそんな簡単に消える筈がない・・・。
「いやいやッ!!!!
私がどんな願いも叶えてあげますッ!!!
さぁッ!!!願い事をッ!!!」
「・・・・オカルト的なものでも・・・ですか?」
「おや!!!貴方は何か特異な能力を身に付けたいんですか???」
「いえ、逆です。
消したいんです。」
「ほほほほほほほぉおっ!!!!
それはそれはッ!!!一体どんな異能なのですかっ???」
「近い近い近いッちかぁーいッ!!!!!顔めっちゃ近いからッ!!!」
「ほらほらぁぁ~!!!
早く言ってくださいよ~!!!」
ピエロは、リズミカルな軽い動きで器用に椅子の上で踊りながら、にやけ面で顔を近付けた。
そんなピエロに深いため息をついて、何を言っても無駄だな・・・。
っと思い、呆れながらも話を始めた。
「・・・実は僕・・・・。
人の心の声が聞こえるんです。」
「・・・・・えっ?」
さっきまで踊っていたピエロの動きがピタッと止まった。
「あのぉぉ・・・・・・・もう一度?」
「だぁかぁらぁぁ~ッ!!!!
聞こえるんですッ!!!人の心がッ!!!!」
声を張って迫力のある大きな声で叫んだが・・・ピエロは唖然として口を開いたまま動かない。
あぁ・・・。
やっぱりいくら何でも・・・この呪いを消すことは無理なんだ・・・。
「あっ!雨止んでますね。僕、そろそろ帰ります。
いろいろ親切にしてくれて、ありがとう。」
まぁ・・・あまり期待してなかったけど・・・。
ちょっと残念だな・・・。
晃は、席を立ちあがりピエロを横を軽く頭を下げて通ってドアに向かったとき・・・。
「・・・・ぃ・・・」
「えっ??」
「素晴らしぃいいいぃいいいいいいいぃぃいいいいいいいッッッ!!!!!!!!」
「はぁ?!うわぁあぁああっ!?!?ちょっ!!!!」
晃が外に出ようとした瞬間、勢い良く腕を掴まれ、飛びつかれた。
「ちょっッ!!!!おいッ離せッ!!!離れて下さいッ!!!!」
「嫌ですッ!!
私は、今まで貴方の様な生まれながらにして異能を持った人を見るのは初めてなんです!!!
実は、私は・・・貴方のような方をずっと探していたんです。
凄く面白ろ・・・・・あ、いや・・凄い力を持った方を観察・・・いやッ!!
見守りたいと思っていたのですッ!!!
こんなところで見逃すことは出来ませんッッ!!!」
「途中から本心駄々漏れなんですけどッ!?!?!?」
「しかもッ!!!!そのクールなギャップも素晴らしいッ!!!
一見、ただの存在感のない貧弱で気弱な・・・いわゆる草食系男子なのかと思いきやッ!!!!
なんとッ!!!人の心の声が聞こえるなんてッ!!!!」
「・・ッ・・・・ピエロ・・・お前ッ・・・!!!
・・・・いい加減に・・・ッ!!!」
「・・・実に気に入った。
実に気に入ったぞッ!!!!!!
貴方ッ!!!!此処で働いてみないかいッ!?!?
2-B榛名晃君。」
「はぁあぁあっ?!?!嫌ですよッ!!!
っていうかッ!!!何で名前知ってるんですかッ!?!?」
「それに、こんな凄い力を消すのは、勿体無いですよッ!!!!
こんな力を持っているのは世界で貴方一人だけなんですよ???
まぁ・・・貴方が消したいなら・・・・・。
貴方の望みも叶えてみせます。」
「ハァ・・・貴方は知らないからそんな事が言えるんです・・・。
それに、この力は消えないんですッ!!!!」
「えぇえええッ!!!!そう言わずにッ!!!
消すことは出来なくても・・・
もしかしたら・・・その力・・・役に立つかもしれないよ?」
「ッ!!・・・」
「此処の常連客は、君と同じような少し変わったお客さんが沢山いましてね・・・。
ですから此処で働けば、もしかしたら・・・その力が役に立つかも知れませんよ?」
「でも・・・・・この力が何の為に・・・」
「・・・榛名君。
なりたい自分になるためには、まず自分を良くしることです。
自分から変わろうとしない限り・・・君はずっとその力を一生抱えないといけない。
潔くあきらめたつもりでも・・・君はただ、自分を見ようとせず、逃げているだけ。
まずはその力をもっと良く見て・・・そして此処でその力を活かしませんかッ?!?!」
・・・・自分を・・・変える・・。
「さぁッ!!!!話は決まりましたねッ!!!!!
ではまずッ!!!履歴書を書いてくださいッ!!!!」
「いやいやいやいやいやッ!!!!
それとこれとは話が別ですッ!!!
僕は、バイトする気はないですッ!!!!」
「えぇぇええええぇぇぇええッ!?!?!?
やりましょうよ~ッ!!!!
人助けだと思ってッ!!! ねぇッ!!!!」
相変わらず嫌な笑みを浮かべているが、真剣な眼差しでじっと見てくるピエロにため息はついたものの・・・
晃は、何だか嬉しく感じた。
だから・・・・。
「ハァ・・・・分かりました。
僕、ここで働きますッ!!!!」
「ほほほほほほぉおっ!!!!!!!
君ならそう言ってくれると信じてましたッ!!!!
あぁッ!!!申し遅れましたッ!!!!
私、ワンダーショップ、店長。 黒高 です。
これから・・・よろしくお願いしますね。」
「・・・・・・はいっ!!!」
だから・・・・。
こんな変な店でも・・・変な店長がいても・・・。
働いてもいいかな・・・と思ったのかもしれない・・・・。
「と・こ・ろ・でッ!!!!
榛名君ッ!!!早速、君のその不思議な能力の事・・・。
洗いざらい全て教えてくれませんかっ!?!?」
「却下。」
「えぇぇっ!?!?即答ッ?!!
全くぅ!!晃君ってばぁ~!!超クールだねぇぇえ!!!
あっッ!!!ならッ!!!
あそこのベンチでイチャイチャしているカップルは、何を思っているんだいっ?!?!
ん~?? 私が見る限りあのカップルは腹黒そうですねぇ!!!」
いや・・・・・。
・・・・やっぱ・・・・・失敗したかも・・・。
第一章、完結っ!!!!
見てくださった皆様っ!!!
ありがとうございましたっ!!!