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幕間 黒い鳥
暗い路地裏に、男が一人立っていた。
するとどこからともなく黒い鳥が一羽飛んできて、男の肩に止まる。
そしてまるで何ごとかを囁くように、その嘴を男の耳に寄せた。
「ふうん、」
と、男が呟く。
至極、つまらなそうに。
「あの犬、望みを叶えたのか」
男の脳裏に、浮かばれずこの世を彷徨っていた黒い犬の姿が浮かぶ。
「…良い式になると思ったんだがな」
だが、まあいい。
どうせ怨みを抱えた霊など、この世界には腐るほどいるのだから。
闇の中で、男の唇がにいっと笑む。
それに合わせるように、鳥が一鳴き翼を広げた。
ふわっと、男の黒髪が揺れる。そして垣間覗く男の白い耳元で、銀のピアスがきらめいた。