イシュールの変貌
このお話は私が以前投稿した、『レラシムの再誕』(urlはhttp://ncode.syosetu.com/n7042r)という短編小説の続きです。この物語はまだ構想中のため設定等は変更する場合があります。
『混沌に満ちたメロディが聞こえてきた。悲哀、憎悪、絶望に満ちた心地のいい旋律……。レラシムの再誕は、イスタリアに巨大な絶望と混乱を引き起こすだろう。――アポピスの盟主アダン』
―イシュールの変貌―
ラフィスの首都イシュールの中心部から、噴き出す灰色の濃霧は次第にイシュールを覆い尽くしていった。
この世界の全ての悲哀や憎悪、絶望を含んだかような灰色の濃霧。
『堕天使レラシム』は再びイスタリアの地に舞い戻ったのだ。
イシュールは濃霧によって、薄暗い灰色の世界となった。ラフィス人とノーザレア人による戦場となったイシュールを、灰色の濃霧は包み込むように覆っていく……
そして、濃霧はイシュールにおける、ほとんどの人々や動物を、生死を問わず、無慈悲な狂気の存在へと変えていった。灰色の濃霧に侵された者たちは皆、正義の心を失い、狂気に飢えた悪魔となった。
イシュールは『レラシムの再誕』によって、魔の都市に変貌したのだ。
『我々の力は及ばなかった……邪神は復活し、イスタリアに大いなる混沌を引き起こさんとしている。
残された、唯一の希望……大天使ミシュカ……我々はあなたが再誕する時を待ち望んでいます。――マーシャル司教』
マーシャル司教はイシュールから帰還したわずかな兵士たちから、凶報を聞かされた。
ラフィス人の都市、イシュールは邪悪に満ちた、灰色の濃霧につつまれていることを……
そして、深い濃霧の中にいる我々の軍との連絡が途絶えたことを……
イシュールの変貌は、彼にあることを確信させた。
邪神は復活したということ……かつてイスタリアの地を絶望の渦に飲み込んだ、堕天使レラシムが。
『堕天使レラシム』はイスタリアに伝わる『七耀神話』に登場する神々の中の一人である。
もともと、天使だったレラシムは『大天使ミシュカ』との抗争に敗れ、イスタリアの地に堕ち、堕天使となった。
レラシムの心は、ミシュカを憎み、復讐心から次第に邪悪さを増していった。邪悪な心は、レラシムの周りを灰色の濃霧として覆う。
次第に、濃霧はイスタリアの地を浸食し始めた。人間や動物の正義の心を奪い、狂気に飢えた悪魔へと変える。狂気に飢えた者たちは、イスタリア全土を侵略し始め、イスタリア全土は絶望と混沌に溢れかえった。
絶望の中で、人々は唯一の希望である大天使ミシュカの降臨を願った。
そして、その時は来た。薄暗い灰色の濃霧に満ちた世界に眩い光がさした。
ミシュカは降臨したのだ。
ミシュカとレラシムは激しい戦いを繰り広げた。その激しい戦闘を人々は『神の怒り』と呼んだ。
両者の激しい死闘の末、ミシュカは己の身体を犠牲にすることにより、レラシムをイシュールの地に封印した。
だが、ミシュカの身体と魂は切り離され、ミシュカの魂は次元の波をただようこととなった。
イスタリアの地では、次第に、灰色の濃霧が薄れていき、世界に平穏が戻っていった。
人々は己を犠牲とし、イスタリアを救ったミシュカに感謝すると同時に哀憐の念を抱き、ノーザレアの地を大天使ミシュカの聖域とし、聖堂を建てた。
一方、堕天使レラシムの意志を受け継いだ者たちがいた。灰色の濃霧に侵された、邪悪な心を持つ者たちのわずかな生き残りである。
彼らは、自分たちの神であるレラシムが、再びイスタリアの地に舞い戻ることを願った。
そして、彼らは混沌の蛇『アポピス』と名乗り、レラシムの復活を策謀していく。
「ならば、アポピスは我々をも利用したのか……ラフィス人、そしてノーザレア人を」
マーシャル司教は絶望に打ちひしがれた。
ノーザレア軍によるラフィス人の大量虐殺が始まった時、イシュールは凄まじい「悲哀、憎悪、絶望」に満ちていった。
それらの負の感情が最大限まで達した時、レラシムは再び蘇った。それは混沌の蛇『アポピス』が策謀した計画だった。
「我々は間違っていたのだ……邪神は復活し、イスタリアを滅ぼさんとしている。
残された唯一の希望、私たちはあなたの再誕を願います」
マーシャル司教はかつて、この世界を救った大天使ミシュカの復活を願った……
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