No,07:倒壊数十分
桜参亮………この物語の主人公。科学技術者の父を持つ、差別を許さない。人間
鵜川月乃………金髪ツインテールの美少女であり、亮の幼馴染。ドSである。number
岩沢蓮………茶髪ツンツンの亮の友達。チャラく見えるがお洒落なだけ。number
壊れない実験台………暗がりに住む(?)、一人の少年。眼帯をしている。
愛玩用………髪を薄い赤に染めた可愛い女の子。欠陥製品をよく知る。
使い捨て………感情の起伏を見せない少年。パソコンを常に起動している。
欠陥製品………numberとして機能しなくなった、または製造段階で廃棄されたもの。
瓦礫の山だった。目が覚めるとそこはいつもとは全く違う景色になっていて、灰と紅の色彩しか存在しない世界になっていた。
周りには多く怪我人がいた。それはそうだ、ここは中央街のショッピングセンターなのだから人がたくさんいるのは当たり前だ。
いや、違う。そんなことを言っているのではない。この景色はなんだ、なんでこんなに血が流れてる。
どうしてこんなにも全身が震えるんだ。前方も後方も天井も囲まれている。
抜け出すのにはたくさんの時間がかかりそうだ。それ以前に抜け出せるのだろうか。
何かの燃える臭いがすぐ近くでする。火事………?違う、もっと何か恐ろしいことが、あった。
おい、君は大丈夫なんだな? 無傷だな? なら手伝ってくれ! ここを脱出する。
誰だ、話しかけてきているのは誰なんだ? 知り合いではない、こんな人は知らない。
頭がぼうっとして何も考えられない。
しかし、ふと頭をよぎったことはあった。
そうだ、あいつは。あいつはどうなった。一緒にいたあいつは。
分からない、分からない………。
三連休の初日であるということから、蓮から誘いのメールが来た。
今回はクレーンゲームではなく、中央街へ行くらしい。適当にふらついて遊ぼうぜ、ということらしい。
クレーンゲーム以外のあいつの考える遊びなんてものは俺には想像できないのだが、まぁこれを機にあいつの別の趣味を知っておくのも悪くないだろうと誘いに乗ったのだ。
中央街を拠点に、歩きまわるのだという。そこには大型ショッピングセンターもあるのでよい暇つぶしにはなるだろう。
とりあえずはエントランスに集合ということになった。
朝起きてから素早く着替えを済まし朝食も軽く食べて、最低限の身だしなみを整えてエントランスにでた。先にはすでに蓮が待っていた。
「おーっす」
「よう、珍しいな。蓮が先にいるなんて」
「な、俺だってたまには………いや、ほんとにたまにだが早く来ることだってあるわい!」
「いや、悪かったって。でもなんでゲームセンターでクレーンゲームじゃなくて中央街で遊び歩くんだ?」
「まぁまぁ、それは歩きながら話そうじゃないか」
ヴインと自動ドアが開き、先へと進んでいく蓮。足取りは軽かった。
そんな蓮にちょっと笑いつつ、俺はそのあとについていった。
空は快晴で、まぶしいくらいに太陽が輝いていた。
少し歩いたところで唐突に蓮が語りだす。
「あー、休日にむさ苦しく男二人で出歩くってのもどうかしてるとは思わないか?」
突然のよくわからない語りに混乱する。
こいつは何を言いたいんだ………。
「いや、お前が誘ったのは俺だけなんだろ? しかもいきなりどうした」
「いんやね、前にも言ったけど年齢=彼女いない歴 ってのももう嫌なんだ」
いきなり真面目な顔になった蓮。それに追加するように、
「亮が誰か………そう、鵜川とか誘ってくれればいいのに」
「なんで月乃なんだよ。つか、何お前。月乃が好きなの?」
「はっ」
何故鼻で笑ったし………。
「何その反応」
「だからさー、そんな同じ学校じゃなくてさ他校の可愛い生徒さんとかさぁ」
「ちょっと待て、お前なんかめちゃくちゃ言ってるぞ?」
「そう、だから今日はナンパです! 決定です!」
「よし、帰ろう」
「まてまてまてまて! いや、お願いします。帰らんでくでさいよぉ。お前はいいじゃんよぉ、鵜川とどうせ付き合ってんだろ! いや、付き合ってるね! 否定なんかさせるもんか畜生、なんであんな可愛い子をゲットできんだよ、教えてくれよぉ!」
レベルが上がったのか下がったのかよくわからないことになった。
それに9割方間違っている。俺と月乃は付き合っていないし、これからもそういうことはないだろう。
つうか、それが目的ですか。
壊れた蓮を引きずりながらも俺はしかたなく中央街へ向かうのであった。
「はっ、ここは!?」
中央街の一角のベンチに横たわらせていた蓮がいきなり素っ頓狂な声を上げた。
「おはよう、悪い夢から覚めたか?」
「あ、ああ………亮。悪かった、俺は目が覚めた」
すくっと立ち上がった蓮は対面側のベンチに座っている女性に走り寄っていく。
あれ? 何一つして理解してないんじゃあ………。
「おねいさん! かなり可愛いですね!?」
「あ、はぁ………。どうも」
「今暇かな? 」
「ごめんね? 彼氏を待ってるの」
ズバゴォン! と聞こえそうなほどに蓮は崩れ去った。
そのまま転がってこちらに戻ってくる。
「大佐、私には無理でした」
「おい、何一つ学習してないだろ。 つかみっともないから止めろや!」
「うーうーうー」
「気持ち悪いな………」
俺の脚に絡みつきながらむせび泣く蓮。
そう言えばもうすぐお昼時だ。
「まぁ、もうすぐ昼だからさ、とりあえずそこの大型ショッピングセンターの中入って飯食おうな」
「そ、そういうさりげないエスコートが!?」
「が、なんだよ………」
そう言いながらもゾンビのような足取りで俺についてきた。
昼食を簡単な店で済まし、ショッピングモールをぶらぶらと歩く。
この大型ショッピングセンターの中はエリアごとに区別されており、食事をする店が集まる食事エリア、雑貨や生活用品、洋服、靴などを扱う中心エリア、ゲームセンターや映画館がある遊びエリア、食品を扱う食品エリアなどがある。
今は中心エリアを歩いており、人通りが比較的多い。蓮はゲームセンターに向かうのではなく、あえて人の多い中心エリアを選んだのだ。
もちろん、学習せずにナンパを繰り返すために。
先ほどから辺りを見回してはいるが、午前中よりは積極性がないように感じられる。
少しは学習したのか、それともただ傷ついて自信がなくなっただけなのか。
どちらでもいいが、他人のふりをさせてもらいたい。
と、その時。
地面が揺れた。
いや、大気が揺れた? 衝撃のようなものがだんだんと伝わってきて、建物がきしみ始める。
「な、何が………蓮!」
「ああ、これは………地震じゃない……?」
ずいぶん先を行っていた蓮に声をかけた。すぐさまこちらに駆け寄ってて来て合流する。
ズガァァァン!と続いて爆発音が鳴り響き、地面が先ほどより大きく揺れる。
そして──────────柱が崩壊し、天井が降ってくる。
ショッピングセンターの側面が倒壊する。
破壊、それがこんなにも恐ろしいものだとは思ってもみなかった。
自らに降りかかる恐怖で身体が硬直し、身動きがとれなくなる。
自分の脳ではもはや制御できない身体、そのまま瓦礫にのまれ、俺の意識はそのまま途絶える。
ブラックアウト───────────────────。
ショッピングセンターが倒壊する数十分前。
昼間であるにもかかわらず、日の光が一切差さない暗闇が支配する廃虚の中に少年はいた。
美しい顔立ちだが、左眼には眼帯をしておりもう片方の眼の奥には黒い悪意のようなものが渦巻いてた。
それはこの廃虚の中の暗闇と同等かそれ以上の濃度だった。
しかし、彼の口元には笑みがた携わっている。
「欠陥製品は全部で4体、プログラムも順調に改竄完了。後は起動させるだけです」
彼の対面方向に当たる部屋の角に、この場には不釣り合いなパソコンの光によって顔が照らされている男の姿があった。
彼は淡々と告げる。
「数十分後、起動させますが?」
「全然かまわねぇ」
少年は笑った。楽しさと、狂気の混じって歪んだ感情に。
第一歩、序章、始まり。
…………最初のハプニング、相手の対応、死亡数、流れるニュースの内容。
すべてが楽しみでもう仕方がなかった。まるで新作のゲームが発売される前日のような感覚。
「楽しそうね、壊れない実験台。おもちゃを買ってもらえる子供みたいよ?」
暗がりの奥から薄い赤に髪を染めた実に可愛らしい美少女が歩いてきた。
フリフリのワンピースに小さな鞄を掲げて歩いてくる。
明らかにこの場には合っていなくて、表側の人のようにも見えた。
「うるさいな、愛玩用。お前は今まで何してた」
「その呼び方はやめてもらいたわね」
「お前の言葉、そっくりそのままお返しするぜ」
しばらく殺気を吐き出していたが、それも止めた。今から楽しいところなのだ。
沈黙を切り裂き、部屋の隅にいる男に話しかける。
「使い捨て、監視カメラのハッキングは?」
「それ、はなんだ?」
ギュロリ、と眼球だけを動かしてこちらを射抜く。常人であれば、足が震えて動くこともできないだろう。
「わりぃって。今の流れだよ、冗談だから」
こちらに向けられたパソコンにはとあるショッピングセンターが映しだされていた。
今からここが爆心地となる、混乱を導くための。国を惑わせるための。
「起動開始だ、ここからは欠陥製品次第だな。どこまでやってくれるかな」
「起動………完了」
瞬間、大きな爆発が発生し黒煙が青空に立ち上った。
PCの調子が悪くて更新できませんでした;
鏡の方は、出来次第投稿しますのでお待ちくださいm(_ _)m