No,23:ロクムナナ
キーワード作りすぎてようわからんくなった;
全部回収しようと思っていますので気長にお待ちくださいm(_ _)m
あと、新作を今執筆中です!
これが終わったら投稿しようと考えています。
何もしないだけで時間は流れる。ならばいっそ行動を起こした方が早いのではないか。
そう考えたのは、月乃の発現があったおよそ一時間後。
やはり待っているより動いていた方が気は紛れるし、目的があることで負の感情を抱かなくていい。
それを月乃に告げたところ、彼女も了解してくれた。とりあえずは、その物資運搬用通路を探してみようということになった。
「とは言っても………どういうところを探せばいいのやら」
ホルスターにしまってある拳銃を触りつつ、月乃に尋ねる。
なんだか、嫌な予感がする。拳銃を触っていないと落ち着かない感じがしてくる。
「そうね……多分、その通路は一つじゃないと思うわよ? 一つだったら結局東西南北の出入り口と便利さ的には変わらないと思うの」
「大きな店の裏とか……かな、物資運搬って言うくらいだから」
考えを巡らせながら歩いていると、いつの間にかこの地下街の中心時計台の前に来てしまっていた。
北口は先ほどの爆破音から何も分からなく危険だから無し。西口は今歩いてきた方向だから無し。まだ行っていないのは……東口付近。
大きな店もあったかもしれない。東口方面を重点的に探そうと決め、月乃の方を向くと。
「月乃……?」
月乃は固まっていた。震えているわけでもなく、ただ固まっていた。
何かを予測したかのような、何かを確信してしまったかのような行動だった。
「どうしたんだ、月乃? 何が……」
「声がしない」
ポツリとそう声をこぼした。
「声………? どういうことだ、地下街に居る人の声なんて──────────」
おかしい。
俺も気付いてしまった。
先ほど南口から西口へと移動する際、この時計台前や移動時にはどれだけの人数がいただろうか。
かなりの大人数の人とすれ違わなかっただろうか。
あれだけの人数が南口にごった返しているとは考えにくい。何か広いスペース求めて移動し落ち着いたころには休憩でもとるのではないだろうか。
それなのに、何故。
何故中心部に誰もいなく、声すらも聞こえない?
先ほどの嫌な予感がゾワゾワと増幅していくのが分かった。なにか胸の内からドロドロとしたものがあふれ出てくるような感覚だ。
気持ちが悪い。
「月乃………、確かにおかしい。あんまり俺から離れるな……」
「うん……」
地下街の中心の時計台の下で身を寄せ合う。
心臓の音だけが跳ね返り、耳に届く。
気味が、悪い。
俺はホルスターに手をかけ、拳銃を取り出す。月乃が不思議そうな目で見ていた。
「ああ、これは生徒会長の姉さん………警察の人からこの間のテロのことがあるからって渡してくれたものなんだ」
「本物……なの?」
「実弾ではないらしいけど……撃てるかは分からない」
ガチリ、と嫌な音がした。
手の内の拳銃からではない、時計台の裏からだ。誰かがいる。
疑心暗鬼に陥った俺たちはおそらくそれをただの民間人だとは考えられない。明らかにこの状況であればテロリストの一人だと思うだろう。
それは間違ってはいなかった。
「あ、ハ、」
歪んだ、いや最早捻じ曲がったかのような笑みを浮かべた男がそこに居た。
「ミつけた! 人肉っ」
男の手には目測刃渡り30cm以上の異常な包丁……いや剣が握られていた。
「月乃っ!」
「ひゃっ……」
月乃を突き飛ばして後退させ、俺は拳銃の引き金を引く。
ズバン、という音とともに硬質ゴム弾が発射されるのだが、男の肩を擦れて外れた。
それはそうだ。特に拳銃の撃つ練習をしていたわけでもなく、何か習っていたわけでもない。
実際問題反動に腕を持っていかれていた。これはひどい有様だ。
振り上げられた剣を見て思う。
どこまで俺の身体に埋まるのだろうか、と。
ぞぶっ、と俺の肉─────────────ではなく、頭上にあった時計台の飾りに剣は食い込む。
チャンスだと頭で理解する前に月乃の腕をつかみ、走り出していた。
「……っげるぞ!」
「亮! 大丈夫なのっ……!」
運。
運だった、こればかりは神様に感謝いなければいけない。本当だったらどうなっていたか分からなかった。死んでいる可能性があった。いや実際死んでいたのかもしれない。
月乃の手を引きつつ走る。どこまで行けばいい? とりあえずは広くて大きな店……!
視界にスーパーマーケットを発見した。
人、人、人………。床一面に人が敷き詰められていた。もちろん綺麗に並べてあるわけではない、山積みになっていたり折り重なっていたりと色々だった。それらは全部当たり前のように血を流していた。凶器は刃物。狂気は壊れたその心。
今回はすごく活躍してくれたようだった。使い捨ても喜んでいるだろう。
このテロが終わったら次はクニの中心部を叩こうと決めていた。
そのためにはここから出て、全員を集めたうえでいつもの場所に戻らなければならない。だが、外では機動隊やらと新参3名が戦っているらしい。誰かの命令なのか、そうせざるを得なかったのか、どちらにせよあまり良い展開ではなかった。
余計なこと、が起きている以上終結するまで地上には出られなかった。
暇つぶしに地下街に降りたものの、余計にすることが無くなって退屈になってきていた。
盗みをはたらこうにしても何が必要なのかが分からない。正確にはあそこには足りないものがありすぎて持っていくものを決められないと言ったところか。
もうじきこのクニも終わるのだろう。
俺が終わらせるのだろう。
そんな時、何か長方形の機械のようなものを踏んだ。それは携帯電話だった。
ちょうどいいと思い、記憶している番号に電話をかける。
「あァ、久しぶりだなァ。……本当に楽しいな、在ったものが崩れていく様を眺めるのはよぉ」
「貴様っ…………またテロをっ。……狙いはそうか、国家転覆か…」
「ちゃんと勉強したみたいじゃねぇか。感心だ、次はオマエラ、中心部を叩く」
「考え直せ……お前たちはこんなことをしてっ……」
「考え直せ、だァ? 何ふざけたこともらしてんだ? ……俺はオマエタチとほとんど変わらないことをしているだけだぞ? ただ、規模が大きいか小さいかの話だ。そこのところを理解しているのかァ? まだまだ勉強不足だなァ!」
彼は近くにあった自動販売機を蹴り倒す。自動販売機は機能を停止した。それは倒れたからではない、蹴られた箇所に穴が空いて内部の機械が破損したからだった。
「う、く………。はははっ。では貴様も私たちと同じ、ということだな?」
「いや、俺は違うなァ。……最後は危険因子を一つ残らず核の海に消えてもらうってところは違うだろう?」
「ふ、ざっ……けるなぁ! お前らは、どこまでっ……」
「なんども言うがなぁ、お前たちがナニカを言える立場じゃねぇんだ。それに今までのは全部自然災害だろう?」
彼はさらに笑みを深める。
「何を……いって?」
「忘れたわけじゃないだろぅ? 俺たちは虚数【imaginary number】だ。オマエラがつけた名称だよ。製造番号刻まれず、ただ腐ったクニのためと欲のためと造られた存在だよ。社会的には存在してないということらしいがなァ!」
「それは……」
「俺たちは本気だ……って言わなくても現状で把握できるよなァ」
「そうか……では、私たちも国のために本気で立ち向かうとしよう」
「ハッハァ! ふざけたことをぉ!」
彼の手の中にはもう携帯電話と呼べるものは無くなっていた。
近くで誰かが叫ぶ声がした気がする。多分男の人の声だとは思う。しかし、見に行くようなことはできない。近くまであいつが迫っているから。
すぐ近く。おそらくこの商品棚のとなりに居る。どうするか。ここはもう迎え撃つしかないのか。
そう考えていた時、人影が見えた。先ほどの剣を持った男ではない。
もしかしたらあの人も狙われるかもしれないという思いだけが先走り、その人の近くへと月乃とともに駆け寄っていった。
それは今思うと間違いだったのかもしれない。
人影はスーパーの入口付近に居る。頑張って走ればその人を連れてそのままスーパーの外へ逃げ出せるかもしれない。そう考えて走り抜ける。
剣を持った男からの逃走は成功した、しかしさらなる問題は積み重なった。
その人影は。
一回目のテロの時に姿を現したあの少年だった。
「あァ? 生き残りか……メンドウだな………っ?」
「お前っ!」
彼は眼帯をしていない方の目を丸くしていた。
その視線は俺ではなく月乃に注がれていた。正確には月乃の顔の製造番号に向けて。
俺はためらことなく拳銃を構えて零距離で撃とうとするが、いとも簡単に拳銃を払われてしまう。その間も彼は月乃から目を離さずに。
奇怪だった。
こんなときに何が。その問いを発する前に少年は笑い出す。
「ギャハハハハハハハハハッ! 何だァ、クニは最早ここまでやっちまうのかァ! 終わってやがる。腐りきってやがるぜ! ギャハハハハハッ! 馬鹿か、馬鹿だろうな、馬鹿なんだろうねぇ!いや馬鹿じゃないはずがねえよなァ! すげぇじゃねぇかオマエさんよぉ、いつの間に世界最古誇ってんですかァ!?」
「な、に……? 何なの」
月乃は困惑している。俺だってそうだ、意味が分からない。少年は何に対して笑っている? 月乃の製造番号の位置? たぶん違う。彼は確かに番号そのものを見ていた気がする。
「あ、ハ、」
そこに男が現れる。背後から月乃を殺そうと迫りくる。
ワンテンポ遅れて俺は気付けない。完全に死角だった。それに拳銃先ほど彼に払われたばかりだった。
だが、
「取り込み中だァ、邪魔すんなァ」
彼は男の剣を掴み折ると、そのまま殴り飛ばした。
レジに派手に突っ込んだ男は動かなくなる。異常な光景だった。
そしていつの間にか隣に彼がいた。
「最っ高だねぇ、こんなものがあるなんてなァ………。異常だ、俺たち以上に異常だなァ……」
「何を、言っているんだお前は、何を知っている!」
彼は口元を歪めて笑みを垂れ流しつつ、答える。
「4296078(しにゆくろくむななは)。………そこの女の頭にはなァ、初代numberのカーヌルブレインが使われているってことだよ! それにその左頬に強調するように刻むなんてなァ、国家反逆の印を表す以外意味なんてねぇよなァ! ギャハハハハハハハハハハハッ!」
彼は大きく息を吸い込む。
世界が軋む音が聞こえた。
「懐かしいな、録武ナナ。ほんっとうに懐かしい!……こいつにはな、世界最古で世界最初のnumberである反逆者。造られたことを恨んだ一番最初のカワイソウナ実験台。そんな奴の脳味噌が詰まってるって言ってんだよ!!!」
世界は闇に堕ちていた。