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八月
通勤に利用しているこの地下鉄も最初の頃は人の多さに目が回ったものだ。改札を抜けて、オフィスのあるビルへと向かう。数分の屋外がこの上なく苦痛だった。東京の暑さは岐阜とは違った厳しさがある。良く言えば自然の多い田舎と、大都会東京では暑さの質が違う。日の強さは岐阜と変わらない気がするが、足元は間違いなく東京のほうが暑いだろう。コンクリートから逃げようのない熱がじわっと上がってくる。まだ七月になったばかりだというのに汗が止まらない。
大学四年生の時、地元を出たくて東京にある会社を片っ端から受けた。田舎だから嫌だとかではない。楽しかった思い出も抱える程ある。それでも手放したいものがあった。
流石に連絡先を消すのは薄情だと思いそのままにしていたのだが、先日サークルの後輩同士が結婚すると連絡があり衝動的に消してしまった。祝う気持ちが全くないわけではないけれど私には耐えられなかった。全員の連絡先を消しても、それでもあの日からずっと彼の連絡先だけは残っている。
暑さが厳しくなる。蝉が鳴き始める。その度に思い出す。夏からは逃げられない。
だから私は、八月が嫌いだ




