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6推しがいれば


 私達はクリステン侯爵令嬢が去ってもまだその場でしゃべっていた。

 「もう、リネアったら驚いたわ」

 ニジェが興奮した様子で話す。

 「私もこんなにうまく行くとは思わなかった」

 「でも、扇子とかタオル大丈夫なんです?」

 エーヴァが尋ねる。

 「まあ、それくらいは何とかなると思う。帰ったら父に相談してみるから安心して」



 そこにサタリが恐い顔で現れた。

 「お嬢さん。もう、探しましたよ。時間になってもいらっしゃらないので‥」

 気づけばとっくに帰り時間を過ぎていた。

 「ごめんサタリ。ちょっとみんなと話をしてただけよ」

 集まっていた人だかりが女の子ばかりだと分かるとサタリはなぜかほっと肩を落とした。

 「そろそろ帰りましょう。あっ、お二人も一緒にお送りしますので」

 「あっ、私達は寮なので自分で帰れますから」

 ニジェとエーヴァもわたわたと帰り支度する。

 「ええぇ~もう帰るの?サタリ。もう少しだけ、グスタフがここを通るかもしれないし」

 すでに呼び捨て私は完全に前世の推し活の気分だった。

 颯爽と去って行く推しもまたいいだろうと。

 「私も。シグルド様見れたらいいのに」ニジェ達もそう言う。

 サタリの目が白けたようになって冷たい声がした。

 「それは誰です?」

 「ああ、騎士部の三年生です」

 ニジェがさらりと答える。

 途端にサタリの眉に皺が寄る。

 「まさか、男を待つつもりですか?練習で汗臭くなった汚い奴らをです?」

 サタリは素っ頓狂な声を出して呆れたような表情をする。

 冷たいな‥

 ああ、そうだった。ここは異世界。推し活なんか存在しない世界だった。

 見渡せば、グッズ売り場もなければ出待ちをしているファンもいないのだから。



 急にすっと背筋に悪寒が走る。

 私ったら‥先走り過ぎ。

 ニジェとエーヴァでさえ少し引き気味に私を見ている。

 ちょっとやり過ぎた?

 「そうね、なんだか冷えて来たわ。ニジェ、エーヴァもう帰りましょうか」

 私は二人に声をかけた。

 でも、ついつい気持ちが昂ぶっていて馬車までの道のりの間にもこれからの応援計画を話をした。

 もちろんニジェもエーヴァも驚いていたが私は夢中で話す。

 私なら出来る。だって知ってるから。

 扇子はもちろん。タオルや革のキーホルダーにマスコット人形。バッジはボタンでいけるわよね。うちわもいいしアクリルスタンドは無理でも額に入れた姿絵に、あっ、それにポスター(写真はないので似顔絵になるけど)こうなったら魔石を仕込んでペンライトもどきなんかもいいわねと本格的な話をしたので、二人は大喜びで一緒にグッズを考えようと約束した。



 サタリはその横でやれやれと言った顔をしていた。

 「お嬢さんには男なんてまだ早いですからね。わかってます?」

 「何言ってるの?そんなんじゃないから!それに私はもう子供じゃないわ。好きな男の一人や二人出来たっていいじゃない」

 「好きな男‥‥」

 サタリはそう呟くと何も言わなくなった。

 そうよ。私はやっとあなた以外の男の事を考えれるんだからじゃましないでよねと心の中で呟いていた。

 私には推しがいてくれれば生きて行けそうな気がした。

 よし!帰ったらパパに相談してグッズ作成に取り掛かるわよ!!









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