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5ファンクラブ結成


 私達はニジェの情報を得て講堂に来ていた。

 騎士養成コースで訓練受ける生徒の授業が終わった後、放課後の講堂で騎士部の人たちの訓練があるらしいのだ。

 女子生徒たちはすでに授業も終わりお目当ての人を見に講堂に集まっていた。。

 集まっているのは総勢30人ほどだろうか、貴族令嬢が多く上の学年の人もいるみたい。

 でも、みんな静かに練習を見ているだけで応援グッズもなければ声援を送ったりもしていない。

 私はかなりがっかりした。

 なに?応援もしちゃだめって事?グッズなんかもあったらいいのに‥脳内であれこれ思い浮かべる。

 「ニジェ?ファンの人ってわかる?」

 「えっと、あっ、あの最前列にいる数人の女性かと」

 「ああ、あの人たちが」

 きちんとした制服に身を包みしとやかに手を振っている女性がいた。

 あれ応援してるうちに入る?

 もっと何というか‥‥

 胸の中にどんよりとしたものが溜まる。

 「エーヴァ?確かシグルド様とグスタフ様には婚約者はいなかったはずよね?」

 「ええ、ふたりとも3男でいらっしゃって卒業するまでには決めたいみたいですけど、今のところ特別な女性はいないみたいですよ」

 私がガシッとガッツポーズをする。

 「あの、ファンの女性も婚約者がいないの?」

 「確かそうだったと‥」

 ニジェが記憶を手繰るようにして答えた。

 「婚約者狙いかしら?まあ、推しはそう言うんじゃないから」


 そうこうしていると騎士部の練習が終わった。

 私は急いでさっきの女性に近づいた。

 「あの、失礼ですが‥私はこの学園の1年生なんですが、騎士部の方のファンクラブに入りたいと思いまして少しお話をしても?」

 「あなたは?」

 いきなり知らない女性から声を掛けられた彼女はすっと淑女の仮面をかぶった。

 「突然、失礼しました。私はリネア・シルベスタと言います。学園の1年生で父は王都でキプロ商会を営んでいます」

 「キプロ商会と言えば人気のカフェ<リセッタ>の?」

 彼女の顔がふっと緩む。

 「はい、ご存知ですか?」

 「ええ、あのカフェのパフェ人気でしょ。まあ、ごめんなさい。私はマロン・クリステンよ。どうぞよろしく」

 「やっぱり、クリステン侯爵令嬢でしたか。クリステン領と言えば果物の宝庫ですね。うちの商会でもたくさん取引があっていつもお客様から美味しいって人気なんです」

 「まあ、うれしいわ。今はラフランの最盛期でパイやケーキもいいけどそのままも美味しいんですよ」

 「まあ、生ではなかなか手に入りませんから知りませんでした。今度食べてみます」

 「よろしければ,お分けできるわよ」

 「いいんですか?」

 「ええ、キプロ商会の方にって言えば父も喜ぶはずよ。明日お持ちするわ。シルベスタさんは明日もここに来る?」

 「はい、もちろん。ありがとうございます」

 良かった話しやすそうな人でこれなら行けるかも‥私は意を決して息を吸い込むと「実は折り入ってお話があるんですが」と切り出した。

 「まあ、なにかしら?」

 「あの、クリステン侯爵令嬢が騎士部のファンクラブの会長さんでしょうか?」

 彼女は頬を真っ赤にした。

 「ファンクラブってあなたいきなり何を言ってらっしゃるのかしら?そんなものありませんわよ」

 「では、皆さんは個人で応援をされてるんですか?」

 「まあ、そうね。騎士部に興味のある人たちがいつの間にか集まるようになっているだけですわ」

 「あの、でしたら。騎士部のファンクラブを作ったらどうでしょうか?いえ、特になにかをするのではなく。ただ、同じ思いの人どうしで一緒に彼らを応援して盛り上げると言うか‥それに応援用の扇子やタオル。自宅用に絵姿入りの額とかもいいですし、大きめのボタンに姿を映したものをバッジのように加工すればカバンに付けたりも出来ますしそれぞれのカラーをライトにしたり、あっ、マスコットなんかもいいですね」

 「あなた、そんなものを作る気なんですの?そんな大それたこと私達には出来なくてよ!」

 令嬢が声を荒げる。

 ああ‥つい調子に乗ってしまった。


 「すみません。脳内で妄想がさく裂して‥いえ、ただ、一緒に応援する仲間同士でお揃いの物を作って応援できたらと思いまして。我が商会にならばそれも可能ですし。あっ、すみません。今はファンクラブを作るお話でしたね。あのそれでもし良ければ私もファンクラブに入って応援を一緒にしたいと思ってまして‥いかがでしょうか?」

 「そ、そんな事私の一存では出来なくてよ。生徒会の皆さんと相談して」

 「いえ、そこはここにいらっしゃる騎士部を応援している皆さんに決めて頂いた方がいいのではないかと思いますが‥いかがでしょうか?」

 すでに話を聞いていた他数名の令嬢たちが色めきだつ。

 「マロン様、私は賛成です。ファンクラブいいじゃありませんか。一緒に応援する仲間がたくさんいた方が騎士部も盛り上がりますし応援も華やかな方が彼らもやりがいがあるのでは?」

 「そうね。何だか楽しそうだわ」

 「そうですよ。実が私、応援にはもっと声を出した方がいいんじゃないかってずっと思ってたんですのよ。それに扇子とかあるといいと思いますわ」

 そう言ってリネアの案に賛成したのは確かカロラ・ヨルディス伯爵令嬢だ。


 すかさず私は話をする。

 「ですよね?扇子やタオルは応援する型の髪色とか瞳の色などで色を決めるとどの方を応援しているかがはっきり伝わっていいと思うんです」

 「まあ、じゃ、シグルド様だったら紅色かしら?」

 「はい、金色と紅色を入れるといいのではないでしょうか?」

 「いいですわね。ねぇ、マロン様今日ここにいる方たちはいつも応援に来ている人ばかり、皆さんが賛成ならファンクラブ結成いいんじゃありません?」

 「ええ、皆さんがそうおっしゃるなら」

 そうしてあっという間に騎士部ファンクラブは結成された。

 会長はマロン・クリステン侯爵令嬢に決まった。

 グッズは取りあえず扇子とタオルを作成する事になった。






 



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