4私は転生者です
実は私、日本という国に住んでいた坂下ゆりかと言う転生者なのだ。
坂下ゆりかだった私はまさに推し活を楽しむ社会人だった。なのに、推しのイベントに行った帰りに事故に遭って死んだらしい。
やっと自分で仕事が出来るようになって一杯推しにお金をつぎ込めると思っていた矢先のことだった。
気づけばこの異世界にいた。
まあ、もうこうなったからにはこの世界で生きて行くしかないって思っているけど。
ちょうど私がリネアの身体に転生したのが1年くらい前だった。
もう、リネアったらずっと恋していた人がいたのに告白もしないで学園に入るつもりだったみたい。
だから私は長年の思いを思い切って告白をする事にしようとしたのがサタリ。
そんな訳で告白してぶった切られたって訳で。
パパはこの国でキプロ商会と言う貿易商会を経営しているけど、会長って感じじゃなくて商会を牛耳っているボスと言った方がいいかも。
大きな体に強面で怒るとうちの若い奴らでもびびるほど恐い人だ。
パパときたら真っ黒い髪にギラギラした金色の瞳。いかつい顔をしていて体だって熊みたいに大きい。
まあ、私とは血が繋がってないから当たり前なんだけど。
でも、私にはもうとびっきり甘い。
大好きなパパ。パパはいつだって私の願いを聞いてくれる。
欲しいものがあればいつだって手に入れてくれたし学園に行きたいと言えば二つ返事でオッケーしてくれた。
私だってもう16歳。ほんとなら仕事の手伝いでもしなくちゃいけないんだろうけど。
これまでも忙しい時期には倉庫の整理とか帳簿の手伝いなどをして来た。
1年前転生した私は家の商会におかしなところがあると気づいた。
どうやら我が家は表向きは商会をやってるけど裏ではアブハジという闇ギルドを束ねているらしいと知った。
パパにそれとなく聞いたけどお前はおかしな事を考え過ぎだって言ってごまかされた。
でも、パパが悪い事なんかするはずがないって私は信じてる。だって本当に優しいパパだから何も知らないふりをする事にした。
でも、学園には護衛が必要だってサタリをつけるのはやめてほしかった。
サタリは表向きには商会の幹部だけど、裏組織のギルドの幹部でもあってそれに私のお守り役だった人、いいえ、私の護衛になってるんだけど。
彼は女の私でも妬けるほどの美しい白銀色の髪で瞳はナイフに移り混んだキラキラ輝く空みたいな銀碧色。
顔は頗るいい男で私にはとびっきり優しいが仕事には厳しい。
何かのキャッチフレーズみたいだけど、ほんと、手下にはひどくきつい事を言ったり容赦はしない。それに彼は家の裏稼業でもかなりの凄腕らしい。
日本風に言えば若頭くらいなのかな?
まあ、私もやくざの事なんか漫画を読んだくらいでしか知らないから。
実際、商会では商売柄色々な揉め事が起きる。
特に貿易を営んでいるし王都では手広く店を経営したりしているので、気の荒い連中とのやりとりもあったりけんかの仲裁や揉め事を収める役とかもやっているらしいし、表向きはまともな仕事だが実際にはいろいろあるみたい。
でもパパから言わせれば多くは人を救うための事情があるらしいから。
転生者でなかったらきっとこんな環境に動揺していたかもしれない。
でも、私の中身はもう大人。大人には大人の事情があるってわかるからこれ以上事を荒立てる気はない。
それよりサタリを忘れるために推し活をしよう!!




