27パパの言い分
「待って下さい会長!」
パパに引きずられたサタリは私から引きはがされた。
言葉よりも先にパパの手がサタリの頬を張った。
「バシッ!サタリ。お前を信じていたのに。これはどういう事だ?」
サタリのシャツの襟もとをねじり上げパパがサタリに怒りを浴びせる。
「違うのパパ。私とサタリは本気で‥」
私はとっさにパパにしがみついた。
「リネア。俺が話す」
サタリは殴られて唇から血が滲んでいた。それをグイっと拭うとパパと面と向かった。
「ああ、話しを聞こうか。ったく。リネアはまだ子供なんだ。それなのにお前は‥くっそ!」
パパは相当興奮しているらしく大きく息を吐いた。
「会長、俺はいい加減な気持ちじゃありません。お嬢さんを愛してるんです。本気でお嬢さんを好きなんです。俺の気持ちはもうずっと前決まってたんです。ずっと彼女を守ろうって。生涯彼女のそばを離れないって。だから、お嬢さんと。リネアさんと結婚させて下さい「おい、リネアはまだ16なんだ。結婚させられるわけがないだろう!」
「わかっています。結婚はもちろん彼女が学園を卒業してからですが、彼女と結婚の約束をさせて下さい」
「それはだめだ。リネアはこの商会を引き継いでもらわなくてはならん。それにはそれ相応の男と結婚させなくてはならん。それくらいお前にもわかってるはずだ。だから、諦めてくれ」
パパはピシャリと冷たい言葉をサタリに言い放った。
そんな‥そんなの。
私はパパに縋りつく。
「パパ。いや。私はサタリを愛してるのお願いパパ。サタリと結婚したいの」
「それは無理だ。わかってるだろう?」
わがままな子供を諭すようなパパの顔。
「いくらパパだからってそんなの絶対に嫌だから!私はもう子供じゃないわ。パパの言う事なんか!」
「そんなわがままを言うな。リネア考えてみろ。うちの商会で働いている奴らがどれほどいる?うちだけじゃない関わっている商会やギルド。そいつらを路頭に迷わせれるのか?お前のわがままで?お前にはこの商会を引き継いでもらわなくてはならん。そのためにはふさわしい男と結婚しなくては。わかるだろう?」
最初は苛立った声だったパパも最後は優しい声音で私に話しかける。
確かにみんなに迷惑をかけるわけには行かない。でも、この気持ちはもう抑えようがない。
パンとパパが手を叩いた。
「リネア、いい考えがある。騎士部のグスタフ。あいつを婿に迎えよう。リネアはあいつが好きなんだろう?それなら問題ないだろう。それにあいつは男爵家の出だし今度騎士になると決まっている男だ。ああ、そう言えばあいつの家は借金があって困っていたな。その借金を肩代わりすればグスタフは喜んでお前を結婚するはずだ。なぁリネア」
パパはいい音を思いついたとばかりに嬉しそうに話をする。
「違うのパパ。聞いて、私がグスタフを好きだって言ってたのはすべてうそなの。本当はサタリが好きだったけど、サタリは私の事好きじゃないって勘違いしてそれで気持ちを何とか切り替えようとして‥グスタフはサタリと同じ銀髪で瞳の色も似てたから‥私が好きなのはサタリなの。ずっとよ。だからパパお願いサタリと一緒にならせて、もちろん学園はちゃんと卒業する。仕事も手伝うから」
パパは驚いた顔をした。そして困った顔をしてしまう。
そしてパパは私にゆっくりと優しく話をした。
「リネア、お前を悲しませる気はないんだ。でも、私には責任があるんだよ。商会にいるみんなの生活を守るって言う責任が、だからわかってくれ。お前がグスタフが嫌ならそれでいい。でも、いずれはお前は私の眼鏡にかなった相手と結婚してもらわなくてはならない。それだけはどうしても譲れないんだ。いいねリネア」
サタリがパパの真正面に立った。
「だったら会長、俺を鍛えて下さい。俺、どんな事でもします。商会を守って行けるように仕事を覚えます。だから、お嬢さんと添わせて下さい。お願いします」
「私からもお願いします。私もこれから仕事の事一生懸命勉強して商会を盛り上げて行けるように勉強します。努力します。だから、どうかパパお願いします」
私達はパパにひれ伏すように頭を下げた。
「はぁぁぁ~、仕方がない。ここで反対して駆け落ちでもされたら困るからな。サタリ、お前にはこれから新たに開く仕事を一から切り盛りさせるっていうのはどうだ?その代りリネアとはこれからリネアが学園を卒業するまで会えないと思え、その間、商会のノウハウをすべて身体に叩き込め。それが出来たら二人の事を考えてやろう。だが、もし私が見込みがないと判断した時はそれまでだ。それでもいいなら考えてもいい。どうだ?」
サタリの顔が一瞬ほころんだが、次の瞬間一気に陰った。
私だってそうだ。
パパありがとう。って思ったのに‥これから学園を卒業するまでサタリに会えないなんて!そんなの我慢できない。
「パパ、ひどい。そんな意地悪しないで。サタリにチャンスをくれるのはすごくうれしい。でも、卒業するまで会えないなんてそんなのひど過ぎよ!パパなんか大っ嫌い!」
私はサタリにしがみ付いた。
いやだ。これからずっと会えないなんてそんなの死んでも嫌だ!
サタリの手が私の背中を優しくさする。何度も落ち着かせるようにその手は優しく私の背中を行き来している。




