21学園祭
それから1カ月後には学園祭があり私やニジェ、エーヴァ達ファンクラブの会員は騎士部のグッズ販売を手伝う事になった。
学園祭ではクラスがそれぞれの出し物をするが舞台で劇や音楽を披露するのはほぼSクラスやAクラスの高位貴族の生徒らしい。
おまけに飲食の提供は禁止で食事はカフェテラスでのみだ。
なんだつまらない。
2年生は主にカードゲームやルーレット、ビリヤードなどで1年生のクラスではダーツ、射的、輪投げなどが行われる。
私たちはクラスのダーツをやるだけなので騎士部の手伝いに行っても良い事になった。
騎士部のグッズ販売はかなりの人だかりでにぎわった。
何を隠そう。グッズ販売のおかげか騎士部のファンクラブの数は怒涛のように増えて今では100人を超えた。
そのせいで学園祭のグッズ販売の人手にもかなり余裕がある。
出店の準備係。販売担当。補充係など時間を区切って担当する事になった。
マロン様は会長だけど、クラスの出し物にも出演するので午後から手伝いに来ることになっている。他の貴族令嬢たちも同じ感じ。
でも、他の会員のおかげで困ることはなさそうだ。
そうそう、マロン様とシグルド様は婚約を発表して仲良くやっている。
騎士部も最初は激震が走ったが、ふたりはお似合いだと言う意見でまとまった。
私の作った編みぐるみは人気で今回は講習会を行う事になったので私は他の事に構っている暇はなさそうだ。
申し込みを募ると物凄い人気で講習会は事前に整理券を配るほどだった。
私達はグッズ販売の隣に作られたスペースで時間を分けて編みぐるみの講習をする事に。
おまけに私はすべての編みぐるみ講習に顔を出す事になっているが、ファンクラブの人たちも数人は編みぐるみを作れる人がいるので助かる。
集まった人たちに一緒に作り方を説明しながら作って行く。
サタリが作り方の説明書を作ってくれて助かった。
「まず、最初に‥」
生徒となった女子生徒に説明をしていく。
サタリは世話しなく私の周りでてきぱきと材料を手渡したり、喉が渇いたと思うとさっとグラスに入った飲み物を差し出してくれた。
ニジェが笑いながら言う
「なんかサタリさんってリネアの恋人みたいって言うか夫婦みたい。なんていうか阿吽の呼吸って感じでさ」
「それにリネアもまんざらじゃないって顔で、ねぇニジェ、リネア。いっその事サタリさんと付き合えばいいんじゃない?」
サタリがすぐそばで荷物を取り落しそうになる。
私は二人がからかっていると分かっている。
「もう、ふたりともそんなことあるはずがないわよ。サタリは私の護衛なんだから!」
「そうですよ。二人とも喋ってないで手を動かしてください。ほら、皆さんに教えてあげなきゃ!」
サタリは取り落しそうになった荷物をもう一度持ち上げるとそつない態度で二人の冷やかしをさらりとかわす。
だよね。
はぁぁぁぁぁぁ~。
みんなとわいわいやりながら、なんとかある程度の編みぐるみが出来て行った。
その後もサタリは荷物を運びこんだりグッズを並べたり、編みぐるみを作っている私の様子とちょいちょい見ながらうれしそうに飛び回っていた。
考えてみればこんなに手伝いをしているのはサタリだけだ。
まあ、商品がうちの商会のものだからなんだろけど。
ほんと、サタリって気が利くし親切で優しくて‥
はぁぁぁ、もうだめ好きすぎてどうにかなりそう。
そんな気持ちにもやもやしながら思う。
すでに推し活の意味はないも同然だ。
私達の関係はと言えば。
1カ月前、血迷ってサタリに告白して以来サタリの態度はめちゃくちゃ甘くなった。
表向きはあくまで護衛という態度を崩していないが人のいない所では私を抱きしめたり手を握ったりしてくる。
でも、サタリの気持ちがわからない。
「お嬢さん好きです」
そう言っては来るがそれが異性としての感情なのか、身内のような感情なのか私にはわからなかった。
もう、サタリお前の気持ちがわからないんだってば!!!
胸のもやもやは募るばかりだった。
もうどうすればいいの?
サタリに直接訪ねるにはもう少し勇気が必要な気がした。




