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16シグルド様に告白される


 それからサタリとはしばらく顔を合わせなかった。

 珍しくサタリは何も言ってこなかった。

 護衛をやめさせると言った事が相当堪えているんだろうと思う。けど。

 ふん。あんな奴。

 もう知らないんだから!!

 少し言い過ぎたと思うものの、さっかくの推しの癒しをあんな風にされて苛ついていた。

 サタリへの気持ちをすり替えるための推しなのに、これじゃ意味がないじゃない。

 意地になってわざとサタリを避けた。

 

 翌日には護衛が代わりサタリの手下のモネグロという男が付いた。

 パパはいい人だ。私の言う事は何でも聞いてくれるんだけど‥

 ううん、もう決めたんだから。サタリには護衛をやめてもらうって!!

 モネグロは朝食の後挨拶にやって来た。

 「お嬢さん。モネグロと言います」

 モネグロはもそっと挨拶をした。体格はいいが何しろ不愛想で無口、顔だってゴリラみたいだが、私が変えて欲しいって頼んだんだから文句は言えない。

 サタリは朝も顔を見せなかったなぁ。

 ううん、何でもない。

 

 

 それなのに‥

 あんなに息巻いていたがサタリの顔を見なくなって私はすぐに寂しくなった。

 サタリは今頃どうしてるんだろう?あんなひどい事言わなきゃよかったかなとか、もう私の事なんか嫌になったかもしれないとも考えると何だかすごく恐い気持ちになった。

 こんな事ならあんなひどい事言わなきゃよかった。


 数日後、私は我慢できずにサタリの居場所をパパに尋ねた。どうやら仕事で東部にあるイルラン公爵領に行ってるらしい。

 イルラン公爵はパパの商会をひいきにしている。王宮では政務局の長官をしていて国の政策や軍事面においてもかなり影響がある人らしい。

 ちなみにドバゴ公爵家。あのシグルド様の家は西部の領地に鉱山を持っていてこの国のお金の原料となる金や銀などの生産をしているらしい。

 それにこの国には魔石となる石がなくて輸入に頼っているが、その魔石の取引もドバゴ公爵家が行っている。

 はっ?ドバゴ公爵家ッてどんだけ~って感じでシグルド様の家はものすごいお金持ちで貴族の中でもすごい実力者らしいと知った。

 そんな貴族間では色々と権力争いがあってパパも苦労しているらしい事も知った。

 それでサタリがイルラン領に行ったってわけ?

 まあ、私もサタリと距離を置くにはちょうど良かったんだし。

 いつまでも彼を思ってたって仕方ないんだし。

 それに私は騎士部とグッズ作りなんかに夢中でほんとパパには感謝しかないよね。


 何だか騎士部の応援に行くのもおっくうだったけどニジェやエーヴァの手前嫌とも言えず練習を見に行った。

 1週間が過ぎた頃騎士部の練習が終わった後シグルド様から声を掛けられた。

 

 「やあ、リネア。何だか元気がないな。どうした?」

 いきなりそんな事を言われて身体がビクリとなる。

 彼が心配してらしく手が肩に触れた。

 「いえ、何でもありません」

 あんなに嬉しいと思っていたのに、今は触れられるのが嫌で一歩後ろに下がる。

 えっ?どうして?グスタフ様ではないからかな。

 「あれ?どうしたんだい?何もしないよ。ちょっと話があるんだ」

 そう言われてニジェ達が気を利かせていなくなった。

 練習も終わりほとんどの人が出て行った講堂には私とシグルド様だけに。


 「あの‥お話って?」

 いたたまれず先に尋ねた。

 シグルド様を見上げる。彼は満面の笑みを浮かべた。 

 まじかで見ると彼はかなりの美形。整った眉。大きく美しい紅の瞳は宝石みたい。鼻筋の通った鼻に薄く形の良い唇からはいつも響きの良い声音が発せられる。

 はぁ~どこをとっても完璧な男ってあなたの事よね?

 グスタフ様にはない王子様のような輝きがこの人にはあった。

 「じゃあ、明日お茶でもどう?君の商会がやってるカフェがあったでしょう?」

 「<リセッタ>の事です?」

 「ああ、そこ。じゃあ、明日の10時はどうかな?」

 「でも、どうして私を?」

 「リネア、君って自分の価値をわかってないんじゃない?君はすごく魅力的だって事だよ」

 スマートな口説き文句。こんなの嘘だと思うけど、面と向かってこんな事を言われたら超恥ずかしくて、まんざらではない気も。

 いやいや、私の推しはグスタフ様だし。

 何の冗談?

 「あの、せっかくのお誘いなんですが‥私、個人的に会う気はないので。すみません。せっかく誘っていただいたのに、でも、そんなのファンを裏切る事になると思うので」

 「俺の誘いを断るのか?はっ、ほんきか?チッ!」

 シグルド様は断った事にひどく腹を立てた様子を見せたがすぐにすっと微笑みを浮かべた。

 なに?これ、これが貴族の仮面をかぶるってやつ?

 気持ち悪さを感じながらもその場から立ち去ることも出来ないまま。

 いきなりシグルド様に手を取られた。

 「ちょ、何を‥?」

 「すまない。リネア。俺は君が好きになってしまったんだ。君が俺達の為に一生懸命になる姿に心を鷲掴みにされたんだ。ねぇ、こんな俺の気持ち。わかってくれるだろう?」

 甘いささやき。蕩けるような視線。熱の籠った言葉に耳元に落とされる吐息。

 いやいや、私はそんなつもりは‥って言うか。絶対うそでしょ!

 一瞬思考が固まって動けずにいると、さらに彼の顔が近付いて目の前に彼の唇が‥

 ああ、これってキスされる?

 えっ?やっ!

 

 戸惑っていた気持ちははっきり拒絶を現した。

 彼とどうにかなるつもりはこれぽっちもないし、推しはそんなものじゃないから!

 繋がれていた手を引く抜くと彼の胸に押し当てる。

 「シグルド様、わたしは‥」




 







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