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14サタリに似ているけどそんなつもりでは


 翌朝、いつものように支度をして朝食を取りにダイニングに行った。

 おかしいのよ。

 昨日確かにベッドに置いておいたはずなんだけど‥

 朝起きたら、グッズを作ろうと書いた紙と必死で作った編みぐるみがなくなっていた。

 あれ?私、すっかり疲れてたからどこかにしまったのを忘れた?

 あちこち探しまわってすっかり仕度が遅くなった。

 そう言えばサタリ呼びに来なかったわね。

 昨日あんなこと言ったからかな。ちょっと言い過ぎたかも。彼は私の為に一生懸命仕事をやってくれていると言うのに。

 朝食の時に謝らなくちゃ。

 そんな事を考えながらダイニングの扉を開けて「おはよう」と挨拶をした。


 「おはようございますお嬢さん、呼びに行かなくて済みません。まだ、お休みでしたからもう少ししたら行こうと思っていたところでした」

 「サタリ、昨日は嫌いなんて言ってごめんね。あなたが私の為に頑張ってるのに」

 サタリの顔が破顔する。

 「そんな。お嬢さん心配してくれたんでしょ?俺、うれしいです。いつもはそばに寄って来る女なんか相手にしないんですが、昨日はお嬢さんの顔を立てなきゃと思って、よく考えたら余計は誤解を与えるのが後々面倒だって知ってるのにすみません。それに‥これ。作ってくれたんでしょ。あっ、黙って持ってきてすみません。でも、これ俺そっくりだから‥お嬢さんが俺に作ってくれたってすぐにわかりましたよ。ありがとうございます。俺、一生大切にしますから」

 あっ、それあなたが持って行ったの?

 いや、まあ、いいんだけど。

 完璧に勘違いしているサタリは見たこともないほど機嫌がいい。

 朝からこれだけの言葉を話したことも記憶にない。

 サタリはてきぱきとスープやサラダをテーブルの上に置いて行く。


 それほど嬉しかったなら‥

 今更グスタフの編みぐるみを作ったんだと言えるはずもない。

 って言うか。サタリお前いつ部屋に入って来たんだ?

 そんな事を思いながらスープを口に運ぶ。


 「そう、よかった。その編みぐるみみたいなマスコットを騎士部のグッズで作ろうかと思って作って見たのよ。何しろ初めてだったから、そのあまりうまく出来てないかもよ。そんなので良かったなら‥」

 サタリが手の中にある編みぐるみをぎゅっと握りしめて。

 「そうだったんですか。試作品にしてはすごくいい出来栄えです。それに一番最初なんて俺‥そうだお嬢さん。お嬢さんが書いてたあのグッズの品物ですが既に会長に許可を貰って試作品を作る事になってますから」

 「ちょっと!お前いつ私の部屋に入って来たのよ?そんな勝手な事‥」

 あんな思い付きを書いた紙きれをまじにグッズにするつもり。いや、そのつもりだったけど。

 サタリ。あんた完璧を通り越してストーカーっぽいよ。

 怒っていいのか喜んでいいのかわからない感情が脳内でまぜこぜになっている。


 「お嬢さん?俺、すみません。部屋に入ったのはお嬢さんが食事も取らなかったから夜中にお腹がすくんじゃないかって思ってせめてポットのお茶だけでも置いておこうかと思ったから。そしたら明かりがつきっぱなしでお嬢さんはぐっすりお休みになっていて、ついベッドの上に散らばった物を片付けていたらあの編みぐるみって言うんです?それと紙を見つけて‥編みぐるみを見たら俺そっくりで‥その、すっかり舞い上がちゃって。俺、ついその紙を持ち帰って合金のコインキーホルダーとかペンライトって言うんです?細長い筒で色ガラスを光らせるものは出来るんじゃないかって。だってお嬢さんが一生懸命考えたんですよね?だから俺、朝一番に会長に了解を貰って試作品を作るように指示を出したんです。でも、それ作りたいんですよね?もちろん許可を貰わなかったのは悪かったですけどいけなかったんです?」

 サタリはさっきまでのご機嫌な雰囲気を一変させて困ったように眉を下げている。

 それでもしっかり片手の中にはあの編みぐるみを握りこんだまま。


 「いや、そうじゃなくて‥サタリ。お前が一番のファンみたいじゃない。ったく!」

 そりゃうれしい。けど。

 世話焼きもここまで来ると。 

 ああっ、もぉ!どっちが推しなんだよ!って気分。






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