追放されたけど数時間後には魔王を倒していた
「お前はもういらない」
そう言って勇者パーティーは俺を追放した。
理由は簡単だ。
俺のスキルが《不干渉》だったから。
仲間の補助はできない。敵の攻撃も引きつけない。
何をしても誰にも関われない。
……まぁ、確かにそうかもな。
「お前、存在薄すぎんだよ」
「空気ってレベルじゃねぇよ」
「いない方がマシだろ」
三人が口々に言い放ち俺は荷物を放り投げられた。
あー、うん。これで何度目だっけ。追放。
とりあえず街に戻る。酒場で飯でも食って適当に寝よう。
――そのつもりだったんだよ、ほんとにさ。
***
その夜、魔王が現れた。
街は火に包まれ勇者パーティーは初手で全滅。
あれ、やばくない? ――って思ったら、なんか……俺のとこに来た。
「お前、誰にも干渉できないんだろう?」
……うん、まぁそうだな。あんたにも。
「じゃあ、俺の“自壊呪法”も効かねぇな。俺自身すら破壊する究極魔法。誰にも近づけさせねぇが……お前だけは別だ」
魔王は満足げに笑った。
そして次の瞬間――俺の短剣がそいつの喉を貫いた。
街は救われた。
国王は感涙した。
神殿は俺を勇者に認定した。
英雄だってさ。まったく、冗談みたいだろ。
***
そして今。
俺の目の前に跪いているのはあの三人だ。
「すまなかった……俺たちが間違ってた……!」
「帰ってきてくれ……勇者様……!」
「お前がいないと、やっぱりだめなんだよ……!」
なるほどね。
俺は静かに笑って、こう言った。
「悪いけど、俺……“もう誰にも関われない”んだ」
そして、背を向けた。
それが俺のスキルだから。