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1章 魔法大学入学 魔法模擬戦1

魔法大学授業の模擬戦闘です。

今回ミルズの出番はないですね。

魔法大学の広大な訓練場は、授業開始を告げるチャイムの音と共に、期待と熱気に包まれた。中央には直径2mのサークルが二つ、それぞれ15mの距離を隔てて配置されている。その神聖な円の中心には、担任であるグレン教授と、副担任のラガン助教が、まるで舞台俳優のように静かに相対していた。


グレン教授は、その歳月を感じさせない精悍な顔つきに、長年培われた魔力操作の深淵を思わせる落ち着きを湛えている。彼が身に纏うのは、歴史と格式を感じさせる深緑のローブ。その瞳の奥には、火のごとく燃える魔法への情熱が宿っていた。一方、ラガン助教は、グレン教授とは対照的に、どこか飄々とした雰囲気を持つ。彼は動きやすい軽装に身を包み、常に冷静な眼差しで周囲を見渡している。その表情からは、大地のような揺るぎない安定感が感じられた。


「さて、今日の『魔法戦闘模擬戦』は、まず教師陣によるデモンストレーションから始める」グレン教授の声は、魔力で増幅され、訓練場全体に明瞭に響き渡る。生徒たちは息を呑み、静まり返った中で、彼らの言葉の一言一句を聞き漏らすまいと耳を澄ませていた。最前列では、後に続く自分たちの番を想像し、ごくりと唾を飲む音すら聞こえそうだ。


教授は、訓練場の中央にある二つのサークルを指し示した。

「諸君らがこれから行う模擬戦には、いくつか重要なルールがある。まず、見ての通り、この直径2mのサークルが、諸君らの戦闘領域となる。相手との距離は15mだ」


彼は一呼吸置き、生徒たちの顔を一人ひとり見渡した。その視線は、彼らがこのルールをどれほど真剣に受け止めているかを確認するように、教室をゆっくりと巡る。

「最も重要なルールは、このサークルから一歩でも外に出たら、即座に敗北となることだ。これは、魔力制御と位置取りの重要性を学ぶためのものだ。己の領域を死守しつつ、相手の領域を侵食する。それが、この模擬戦の肝となる」


グレン教授は続けて、その眼差しに真剣な光を宿した。

「そして、目的は相手を戦闘不能にすること。ただし、決して相手を殺してはならない。一線を超えたと判断された時点で、諸君らは即失格となる。これは、魔法使いとしての倫理と、刻一刻と変化する戦況における状況判断能力を養うためだ。実戦では、相手を完全に無力化するのと、致命傷を与えるのとの間には紙一重の差がある。その境界を見極める力が、一流の魔法使いには不可欠だ。いいな?」


生徒たちの間には、緊張と期待が入り混じった空気が漂っていた。彼らの多くは、実戦形式の模擬戦に初めて臨むため、その表情には真剣さと、わずかな不安が入り混じっていた。


「では、ラガン助教。頼むぞ」グレン教授が軽く顎を引くと、ラガン助教は静かに頷いた。


「へいへい、お手柔らかに頼みますよ、グレン先生」ラガン助教は片手をひらひらさせながら、口元に笑みを浮かべた。「新入生の前で、あまり見せつけすぎても萎縮させちまいますからねぇ」


「戯言を。最高の戦いを見せるのが教師の役目だ。いくぞ」グレン教授の眼光が鋭くなった。


開始の合図と共に、まず動いたのはラガン助教だった。彼の掌から放たれたのは、地面を這うように広がる**『地脈の波動アースウェーブ』。目に見えない魔力の波紋が大地を伝播し、グレン教授の足元に到達する寸前、突如として無数の鋭い岩の杭**が突き出した。それらは教授の円を取り囲むように出現し、彼の退路を断つ。まるで大地そのものが牙を剥いたかのような、静かながらも圧倒的な圧力があった。


「うわっ、いきなり仕掛けてきた!」生徒の一人が思わず声を上げる。「あのラガン先生が、あんなに攻撃的になるなんて!」


だが、グレン教授は落ち着いていた。詠唱を排し、彼の足元から鮮やかな炎の壁が瞬時に立ち上がる。岩の杭は炎の壁に激突し、爆ぜるような音と共に砕け散った。炎の残光が訓練場に揺らめき、わずかに熱気が広がる。


「ほう、さすがはグレン先生。いつ見ても炎の制御は見事なものですね」ラガン助教は、どこか楽しげな口調で呟いた。彼の言葉に反して、その眼差しは鋭く、次の手を冷静に考えていた。地面に刻まれたサークルを基点に、彼は再び魔力を練る。


「フン、お前の土魔法も随分と小癪になったものだ」グレン教授が鼻を鳴らした。


ラガン助教の足元から、今度は複数の**『岩石弾ロックバレット』が生成され、連射された。それらは不規則な軌道でグレン教授へと向かい、高速で回転しながら飛来する。土魔法とは思えないほどの速度と精密さだ。グレン教授は、飛来する岩石弾に対し、掌から『炎のフレイムスピア』**を放ち応戦した。炎の槍は、正確に岩石弾の中心を貫き、小さな爆発と共に粉砕する。訓練場には、激しい衝突音と土煙が舞い上がった。


「すげぇ! 先生たちの魔法、教科書で見たのよりずっと迫力ある!」

「あれが、魔力制御の熟練度ってやつか…」

生徒たちの間から、興奮と驚きの声が漏れる。


互いの手の内を探り合うような攻防が続く中、グレン教授が仕掛けた。彼の周囲に集まる魔力が、鮮やかな朱色に輝き始める。そして、一瞬の間に彼の掌から放たれたのは、まるで生き物のようにうねる**『灼熱の奔流インフェルノストリーム』**。それは単なる火炎放射ではなく、意思を持ったかのようにラガン助教を包み込むように広がり、彼の視界を完全に奪い、逃げ場を封じ込める。紅蓮の炎が訓練場の空気を揺らし、熱波が観客席の生徒たちにまで届くほどだった。


「おおっと、これは熱い!」ラガン助教は、冗談めかして言いつつも、その顔は真剣だった。彼は咄嗟に身をかがめ、地面に複雑な魔法陣を瞬時に展開する。土の粒子が空中で集まり、彼の周囲に厚い**『鋼鉄のアイアンシールド』**が形成された。それはただの土壁ではなく、魔力で強化された鉄のように硬質な輝きを放っている。炎と鋼鉄の盾が衝突し、訓練場にはけたたましい衝突音と焦げ付くような匂いが立ち込める。盾は炎の熱を受けて赤く染まり、白い蒸気を上げながらも、その堅牢さを保っていた。炎が収まると、ラガン助教は盾の裏から涼しい顔で姿を現した。


「相変わらずの火力ですね、グレン先生」ラガン助教は、軽やかな足取りで円内を移動しながら、次の魔法の準備に入る。「しかし、その炎では私を円外へ押し出すことはできませんよ」彼の足元から、地を這うような魔力の震動が広がり始めた。それは、グレン教授のサークルへと向かって、地面の魔力を活性化させていく。


「お前の土魔法も、以前にも増して精密になってきているな、ラガン」グレン教授は、額にわずかに汗をにじませながらも、口元に笑みを浮かべた。「だが、その程度ではまだ甘い」互いの実力を認め合うような会話が交わされるが、その間にも魔法の駆け引きは止まらない。


ラガン助教の足元から、訓練場の地面に複雑な魔法陣が瞬時に展開される。その魔法陣から放たれた魔力は、訓練場全体の地面を瞬く間に侵食し、グレン教授の足元に**『泥沼の領域スワンプフィールド』**を生成した。通常の土魔法とは異なり、粘性の高い泥が教授の足元に広がり、その動きを著しく鈍らせる。魔力の泥は、教授の足元で「ズズッ」と音を立て、彼の身体を下方へと引き込もうとする。この広範囲魔法は、教授の自由を奪い、円からの逸脱を誘う戦略だ。


「先生、足が!」生徒の一人が焦ったように叫んだ。「あれは、動きを封じる狙いだな…」


その隙を逃さず、ラガン助教は右手を掲げ、空中の塵や砂を魔力で集束させた。そして、**『砂塵のサンドストーム』**を巻き起こす。視界を奪うほどの激しい砂塵がグレン教授を包み込み、彼の方向感覚と聴覚を麻痺させた。砂塵は、教授の炎の壁をすり抜け、彼の肌に細かくぶつかる。


生徒たちは固唾を飲んで見守っていた。グレン教授は不利に立たされているように見えた。ラガン助教の戦術は、広範囲魔法で動きを封じ、視界を奪い、精密な遠距離攻撃で追い詰めるという、非常に完成されたものだった。


「これは厳しいな…グレン先生もさすがに動けまい」誰かが呟いた。

「いや、まだだ! グレン教授の切り札はまだ出てない!」別の生徒が食い入るように見つめる。


しかし、グレン教授の真骨頂はここからだった。彼は泥沼の中で、ゆっくりと、しかし確実に魔力を集中させていく。詠唱はない。ただ、彼の周囲の空気が重く、歪んでいくような感覚が、訓練場全体を覆い始める。訓練場の天井の魔力灯の光が、教授の周囲だけ僅かに揺らぎ、その場に異質な熱量が生まれたかのような錯覚に陥る。ラガン助教の表情に、それまでの余裕が消え失せ、かすかな警戒の色が浮かんだ。「これは…本気ですか」彼の声が、無意識のうちに漏れる。それは、教授が普段、模範試合では滅多に見せない『切り札』を意味していた。


グレン教授の全身から、文字通り**『紅蓮のオーラ(クリムゾンオーラ)』**が噴出した。それはただの魔力発光ではなく、彼の肌から炎が直接吹き出しているかのような光景だ。泥沼は瞬く間に蒸発し、砂塵の嵐はオーラの熱で吹き飛ばされた。訓練場の空気が一気に過熱し、観客席の生徒たちは思わず顔を覆う。この魔力オーラは、彼自身の領域に侵入するあらゆる異物を燃やし尽くす、絶対的な防御と攻撃を兼ね備えていた。


「なんだ、あれは!?」

「全身から炎が…!?」

生徒たちの間からは、悲鳴にも似た驚愕の声が上がる。ミルディアスもまた、その途方もない魔力の奔流に、ただただ圧倒されていた。


ラガン助教は、その圧倒的な魔力の奔流に驚きを隠せない。「まさか、ここまでやるとは…!」彼は即座に自身の最大防御魔法である**『絶対防壁アブソリュートウォール』**を構築しようとする。地面から分厚い岩盤が次々と隆起し、幾重にも重なる壁を形成していく。しかし、グレン教授の紅蓮のオーラは、そんな防御をものともしない。


教授は一歩、泥沼が消えた地面を踏みしめる。その動きに合わせて、紅蓮のオーラからまるで生き物のような**『炎の触手フレイムテンタクル』**が複数伸び、ラガン助教の絶対防壁へと猛然と襲いかかった。炎の触手は、まるで溶岩のように壁を溶かし、内部へと侵食していく。絶対防壁が悲鳴を上げ、亀裂が入る。ラガン助教は、迫りくる熱に顔をしかめながらも、必死に壁を維持しようと魔力を注ぎ込んだ。


そして、炎の触手の一つが、絶対防壁のわずかな亀裂を突き破り、ラガン助教の腕をかすめた。直接のダメージこそないが、その高熱で彼のローブが焦げ、わずかに皮膚が赤く変色した。


「勝負あったな、ラガン助教」グレン教授の声は、紅蓮のオーラに包まれていてもなお、穏やかだが、その存在感は圧倒的だった。彼が紅蓮のオーラを収束させると、訓練場の空気は一瞬にして元の状態に戻った。しかし、生徒たちの脳裏には、その異様な光景が焼き付いたままだった。


ラガン助教は、燃え焦げたローブの袖口を払いながら、苦笑いを浮かべて立ち上がる。「参りました、教授。まさかあの『紅蓮のオーラ』をここまで制御されるとは…模擬戦で、あれほど広範囲の魔法操作と精密な攻撃を両立させるとは…」彼の額には、うっすらと汗がにじんでいた。


「ふむ、お前も良く耐えた。だが、実戦では常に相手の予測を上回る一手が必要だ」グレン教授は生徒たちをゆっくりと見渡し、その視線は一人ひとりの顔を捉えていく。静かに、しかし有無を言わさぬ口調で告げた。「今の試合で、何か感じ取れた者はいるか? 見たままを模倣するのではなく、その裏にある思考、そして己の魔法の特性をどう活かすか、それを深く考えることだ。」


教師陣による模範試合は、生徒たちに魔法戦闘の奥深さと、その厳しさをまざまざと見せつける結果となった。彼らの目には、グレン教授の圧倒的な魔力と技術、そしてラガン助教の巧妙な戦術が焼き付いていることだろう。そして、次はいよいよ自分たちの番なのだ。訓練場には、興奮と、同時に拭い切れない緊張感が漂っていた

グレン先生とラガン先生仲悪そうですね、

そんなことはないと思います。

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