1章 魔法大学入学 闇の森へ4
対ヒュドラです。
明らかに常軌を逸した質量。
青黒く硬質化した皮膚。
大地を押し潰す四肢。
その上で揺れる三つの長い首。
ヒュドラ。
ヴァリス城を守護する竜種のガーディアンである可能性が高い。
「バアルさん、行きましょう」
二人は距離を詰めた。
近づけば近づくほど、ヒュドラの体躯はさらに異常さを増していく。
「……でけぇな」
バアルがつぶやく。
「バアルさんなら倒せますか?」
「……勝てるかどうかはわからん。負けはしないと思うが、ヒュドラはな……しぶとさが段違いだ」
その時だった。
大地が震える。
腹に響く重低音が、空気を押し潰すように広がった。
「『この先に赴くな。ここより先はヴァリス城のみ。帰るならば追わぬ。帰らぬならば――殺す』」
三つの首が同時に声を発した。
地鳴りのような威圧に、周囲の魔力さえ震えている。
「喋った……知性持ちの竜種か。かなり厄介だぞ、ミルズ」
「知性があるなら、まずは対話を試みます」
ミルディアスは一歩前へ進む。
「ヒュドラよ。私はミルディアス。新たなヴァリス城の主に任じられた者だ。道を開けてもらう」
三つの眼光が鋭く光る。
「『次のヴァリス王を名乗るか。ならば――力を示せ!』」
その瞬間、ヒュドラの体から魔力が爆ぜた。
ミルディアスもまた、神獣の姿へ変貌する。
ケンタウロスを超えた巨躯。六本の腕にそれぞれ異なる剣を握り、魔力の奔流を鎧のように纏う。
体格は互角だった
最初に動いたのはヒュドラだった。
三つの首が同時に咆哮し、衝撃波だけで森の木々がなぎ倒される。
「来るぞ!」
ミルディアスの周囲で魔力が凝縮し、衝撃波を弾き返す。
続けざまに毒のブレスが三方向から放たれた。
大地が瞬時に紫色へ腐食し、生命力を奪う瘴気へ変わる。
ミルディアスは魔力に全身を覆っていて毒の影響は受けていない、このまま数時間戦闘可能だが、
バアルはもろに影響を受けているはず、、、だが当然のように平然としている。
ミルディアスは六本の剣を振り、魔力の盾を何重にも展開して突き進む。
一瞬――一閃。
六本の剣の内三本が同時に三つの首へ向かう。
だが、ヒュドラの首は大樹の幹のように太く、切断しきれない。
「ぐっ……!」
ヒュドラが反撃に転じる。
岩石のような尾が振るわれ、大地が波打つほどの衝撃が走った。
だがミルディアスは巨躯のまま踏ん張り、六本すべての腕で尾を受け止める。
「重い……!」
ヒュドラの全身が紫に光る。
魔力増強か――ブレスよりも危険な雰囲気をまとっている。
「『滅ビヲ――』」
その瞬間、バアルの声が飛ぶ。
「ミルズ、気を付けろ! あれは属性複合の大魔法だ!」
爆裂、雷撃、冷気――三種の魔力が一度に収束し、撃ち出される。
対するミルディアスも魔力を極限まで高め前方に集中させる。
ヒュドラの大魔法とミルディアスの魔力が正面から衝突。
世界がひっくり返るような轟音が響き、視界が白く染まった。
一時間以上が経っていた。
周囲には切り落とされたヒュドラの首が転がり、大地は抉れ、森は燃え、氷は地面に突き刺さり岩の棘が生えている。
ミルディアスは何度も首を落とした。
だがヒュドラはそのたびに再生する。
堂々巡り。
だが――
ミルディアスの魔力は、確実にヒュドラを捉えていた。
「……そろそろ終わりにする!」
ヒュドラを包むミルディアスの魔力を物質化し、ヒュドラの自由を奪う。
偶然ヒュドラの三つの首が横一列に揃った刹那
斬!!
六本の剣が交差し、一閃――。三つの首が同時に宙に舞った。
巨体が崩れ落ち、大地が震えた。
「『……力、認メ、ヨウ』」
ヒュドラの体内から、最後の声が響いた。
ミルディアスはようやく魔力を解き、大きく息を吐いた。
ヒュドラ相手に苦戦したのかな、時間はかかったけど危機はなかったかな。
バアルもミルディアスも人間離れしているので仕方ない。
クラウスとかメイドならいい感じでボロボロになるんだろうけど、ミルディアスが力を証明する必要あるので今回は出番なし。
今後に期待!
次はヴァリス城と先住民とか登場かな




