1章 魔法大学入学 闇の森へ2
バアル再登場、パーティメンバーも少しずつ出てくる予定
闇の森へ入って数日が経つ。
ここまでの道のりは――平坦では無く創造を絶するものだった。
ということもなく、探索は順調そのものだった。
原因は明白だ。
神獣と化したミルディアスは、周囲のモンスターから見れば モンスター以上の“脅威” であり、
付近に生息する魔物たちも、自分より強い存在には不用意に近づかないという本能を持っていた。
結果、進軍は拍子抜けするほどスムーズだった。
その日の夕方、ミルディアス一行は野営をしていた。
今日もトラブルは一切なく、従者たちは慣れた手つきで夜の準備をしている。
野営とはいっても、馬車の中で寝泊まりできるため、
火を起こして簡単な夜食を作り、長時間の移動で固くなった身体をほぐす程度だ。
闇の森の奥地とは思えないほど静かな時間だった。
だが、少し離れたところからは時折、モンスターの咆哮や地鳴りが響いてくる。
「……騒がしいな」
パンを焙っていたクラウスが、耳を澄ませながら呟く。
「近づいてくる気配はない。気にしなくていい」
ミルディアスは落ち着いた声で答える。
実際、外では魔物たちが何かを警戒して騒いでいるようだが、
青白く光るドームの境界を越えて入ってくるものは一体もいない。
いや――正確には “入ってこれない” のである。
従者の一人がドームを見上げて、安堵の息を漏らす。
「本当に……心強いですな。外ではあれだけ吠えたり暴れたりしているのに、近づく気配すらない。これが魔法使いが使う結界というものだろうか?」
青く淡い光を放つ魔力のドームは、ミルディアスが展開した魔力の結晶でできている。
魔力の卵の大型版といったところだ、魔物に対して絶対的な威圧効果を持ち、近づけば本能的に身を引かせる。
さらに、闇の森特有の濃密すぎる魔力を遮断し、
内部の空気を安全な濃度に保つ役割まで果たしていた。
まさに“安全地帯”だ。
「ミルディアス様の魔力が強すぎて、魔物が怯えているだけでは?」
クラウスが少し冗談めかして言う。
「……否定はしない」
ミルディアスは素直に頷き、従者たちが苦笑した。
闇の森に入って数日が経つ。
探索は順調そのもの――“神獣化”したミルディアスの存在が理由だった。
彼の発する強烈な魔力の圧は、周囲の魔物にとって天災のようなもの。
獰猛な魔獣でさえ、青い半球状の魔力ドームの外側から咆哮を響かせるだけで、決して中へ踏み込もうとはしなかった。
その夜、従者たちは馬車のそばで夕食を作り、体をほぐし、明日の計画を話し合っていた。
そんな中、ミルディアスのもとへ従者が駆け寄ってきた。
「ミルディアス様、外で……その、ドームを叩くような音が」
ミルディアスは眉をひそめ、立ち上がる。
確かに、低く鈍い音――ドゴンッ……ドゴンッ……と響いている。
「魔物か……?」
ドームの外側を見ると、何かが影になって大きく揺れた。
次の瞬間。
――ドゴンッ!!
魔力のドームに穴が空き、そこから大柄な影が転がり込んできた。
「っとと! さすがに硬ぇな、これ!」
「……バアルさん!?」
砂埃の中から立ち上がったのは、冒険者バアル。
その後ろから、貴族然とした身なりの男も姿を現した。
「ミルズ……いや、今はミルディアスって呼んだ方がいいか?」
「どうしてここに?」
バアルは後ろの男を親指で指す。
「冒険者ギルドの依頼で調査に来たんだ。こいつは今回の同行者、アスモだ」
アスモは律儀に会釈をする。
「冒険者ギルドが言うにはな……お前の館から闇の森へ向かって、一本道の“巨大な魔獣の通った跡”ができてるって話でな」
「巨大な魔獣……?」
「それを追ってここまで来た。しかし――」
バアルはドームを見回し、そしてニヤリと笑った。
「会わなかった、いや“会っていた”とも言えるかもしれねぇ」
ミルディアスは一瞬だけ動きを止めた。
「……まさか」
「ああ。恐らくだが――ギルボスの言ってた“巨大な魔獣”ってのは、お前のことだろ」
バアルは腹を抱えて笑い出した。
「わっはっはっは!! ところどころに“巨大な卵”みたいな魔力の殻が落ちててな。ギルドは“魔獣の営巣だ!”って大騒ぎしてたぜ!お前達が野営した跡だったんだな。」
ミルディアスは頭を抱えた。
「で、アスモ」
バアルは急に真面目な声で言った。
「荷物を置いて、一旦ギルドに報告へ行ってくれ。交代要員もよこせ」
「一息つく間もなくですか? ……まあ構いませんが、もう少し事情を伺ってからでもよいのでは?」
「そうだな。ミルズ、茶くらい飲ませてくれ。そっちも野営だろ? 時間はある」
ミルディアスは従者に茶の準備を頼み、簡易の椅子を並べた。
その後しばし、バアルとミルディアスは道中の事情や、魔力のドーム、闇の森の状況について意見を交換した。
そして――
「……なるほど。面白そうだ。ミルズ、俺もヴァリス城まで行くぜ。興味が湧いた」
「ええ。歓迎しますよ、バアルさん」
こうして、バアルはそのままミルディアス一行に同行することになった。
次あたりヴァリス城について、、、




