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1章 魔法大学入学 空へ

三日後――ミルディアスは空にいた。

背中に鳥のような大きな翼を広げ、風を切って滑空している。


最初は、ただの好奇心だった。

上空の鳥たちが、ほとんど羽ばたかずに空を滑っているのを見たのだ。

てっきり鳥は、常に羽ばたいていなければ飛べないと思っていた。

なぜ、彼らはあの高さを、あのまま維持できるのか――。


考えても答えは出なかった。

ならば、試してみるしかない。


ミルディアスは鳥を数羽捕獲し、その翼の構造を徹底的に観察した。

羽の形状、骨の可動、飛行時の姿勢、風の受け方。

職人のような目で分析を重ね、やがて自らの背に魔力で模した翼を生やすことに成功した。


初めて空に上がったとき、それはまるで“凧”のようだった。

魔力糸を幾筋も張り、大木と自分を繋ぐ。

魔力の柱を上空へと伸ばし、翼を広げて鳥の真似をする――その瞬間、

突風に煽られ、魔力糸は容易く弾け飛んだ。


「うわっ――!」


地面が迫る。

咄嗟に魔力の卵で自分を包み、落下地点にクッションを展開。

衝撃を受け流して事なきを得たが、ほんの一瞬でも判断が遅れれば死んでいた。


再挑戦。

魔力糸の強度を高め、飛ばされないよう慎重に翼を広げる。

今度は風を真正面から受け、水平に構えると――身体が、ふっと浮いた。

その刹那、歓喜が胸を突き抜けた。

だが次の瞬間、バランスを崩し、再び墜落。

またも魔力卵とクッションで衝撃を逃がす。


何度も、何度も繰り返した。

風を読み、姿勢を修正し、翼を操る。

やがて、風の力を掴む感覚が身体に染みついていく。


上空に達すると、地上は霞み、木々が小さな点のように見えた。

だが――冷たい。あまりにも寒い。

強風が絶えず吹き荒れ、肌を刺すようだった。


一時間も経たないうちに、指先の感覚が消えた。

魔力糸を握っていた手は凍傷寸前。

慌てて魔力を体表に展開し、魔力のコーティングで全身を覆う。

外気との間に層ができ、冷気を遮断すると、やっと痛みが引いていった。


三日目には、風を掴み、空気を読めるようになっていた。

翼をわずかに傾けるだけで方向を変え、上昇も下降も自在。

魔力の柱を下に伸ばし、上昇気流の代わりに自らを押し上げる。

ようやく“飛ぶ”という行為を、支配できるようになった。


風はもはや敵ではなく、味方だった。

その時、彼の視界の彼方に――灰色の石壁が見えた。

森の奥、闇に沈むようにして佇む影。


「あれが……ヴァリス城か」


興味本位で空を飛んだだけだった。

だが思いがけず、闇の森の中心を上空から見つけることができたのだ。

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