1章 魔法大学入学 猫屋敷
猫屋敷になったミルディアスの館
ミルディアス邸には、最近“猫”が増えている。
一匹二匹という話ではなく、十数匹、いや数十匹。
黒を基調とした毛並みの猫が多く、どこを見ても猫、猫、猫。
朝。
フローラが廊下を掃除していると、天窓から一匹の黒猫が飛び降りてきて床を滑る。
「わっ! また猫!」
リーネ「増えてる気がするねぇ……十匹目?」
エステル「正確には十三匹。昨日の時点で。」
三人のメイドが館の中を歩くと、そこかしこで猫がくつろいでいる。
階段の手すりの上、暖炉のそば、カーテンの影。
そして、ミルディアスの書斎の前だけは、なぜか猫たちが行儀よく並んでいる。
――主を待っているように。
日常の中の猫
メイド見習いたちは、猫に気を取られながらも仕事の練習を続けている。
フローラが明るく教え、エステルが淡々と指導し、リーネが「そこ違う」と実演。
窓の外には、庭で転がる猫たちの姿。
「なんか、猫の方が増えるの早くない?」
「……もしかして、餌やってる?」
「ちょっとだけよ?」
執事クラウスの場面
一方そのころ。
クラウスはワイン蔵にいた。
新しい樽の香りを確認し、古い年代物を丁寧に磨いている。
蔵の中は静まり返っているが、外から「にゃー」という声がする。
扉を開けると、樽の上に黒猫が一匹。
「……君も見張りのつもりかね?」
猫は尾をゆるやかに振り、蔵の奥に視線を向けた。
クラウスがその視線を追うと、空気が微かに震えている。
――魔力の残滓。
下僕たちの場面
屋敷の外では、少年の下僕たちが薪を割っている。
その周りで、猫たちがのんびり昼寝中。
「こいつら、全然逃げねぇな」
「むしろ増えてる……」
「ミルディアス様、動物使いでも始めたんじゃないか?」
冗談混じりの会話に、猫たちは耳をぴくりと動かすだけで動じない。
ミルディアス帰宅
夕方。
ミルディアスが館へ戻る。
玄関前で、十数匹の猫が一斉に立ち上がり、道を開ける。
ミルディアス「……また随分と増えたな」
その瞬間、館中の猫たちが一斉に鳴き声を上げた。
まるで――“報告”するかのように。
ミルディアスがバスローブで暖炉の前でくつろいでいると、
例の黒猫がはゆっくりと擦り寄り「にゃぁ」と鳴き、ミルディアスの足に体をぶつけてくる。
そして膝の上に飛び乗りゴロゴロ喉を鳴らす。
今日も一緒に寝るようだ。
王女様は確実にじぶんの居場所を確保しています。




