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1章 魔法大学入学 アルベール領の窮地3

これで決着ですね。

領主の館へ、そして決着

潜伏者が目指したのは、領の古い廃屋とは正反対の方向、アルベール領の中央に厳重に構える領主の館だった。廃屋の群れを抜け出した潜伏者は、市街地の上空へと一気に舞い上がり、そのまま領主の館へと一直線に移動し始める。これこそが、通常の魔力網では捉えきれなかった、空中を移動する特殊な術だ。ミルズの広域魔力解放がなければ、その存在すら感知できなかっただろう。


「やはり……エドワード領主を狙ってきたか!」


シャドーが他の場所へ目もくれず、ただひたすらに領主の館へと突き進むその軌道を確認し、ミルズの確信は怒りにも似た冷静さに変わった。彼は速度を上げながらも、領主館の手前でケンタウロススタイルを解除した。巨大な獣の姿は、人の住まう館の敷地には不適切だろう。


領主の館に近づくにつれ、遠くから微かに聞こえてくる金属がぶつかる音、そして怒号は激しさを増す。館の庭園では、警備の兵士たちがすでに何人か倒れ伏し、残された者たちも満身創痍で戦線を維持している状態だ。そして、B級冒険者パーティらしき者たちが、黒いローブの「シャドー」と激しい攻防を繰り広げていた。しかし、彼らの連携は乱れ、攻撃はシャドーに軽々と躱される。リーダー格の冒険者が、未知の魔法で弾き飛ばされ、地面に叩きつけられるのが見えた。シャドーは勝利を確信したかのように、倒れた冒険者には目もくれず、館の入り口へと滑るように迫る。その狙いは、紛れもなく領主エドワード・アルベール男爵その人だ。


「間に合え……!」


ミルズは、自らの魔力をさらに高めた。領内全域に広げていた煙状の魔力は、彼の意思に従い、一気に領主の館の周囲へと集中される。まるで透明な巨大な壁がそそり立つかのように、館の全方位を覆い尽くす濃密な魔力の壁が瞬時に形成された。これで、万が一にもシャドーを逃がすことはない。館の周辺は、ミルズの魔力で完全に隔離された空間となった。


シャドーは領主室前の扉に手をかけることなく、その直前で姿が掻き消えた。空間跳躍だ!次の瞬間、シャドーは扉を飛び越え、領主室の中に現れた。領主の姿を目にしたシャドーのローブの下から、冷たい殺意の波動が迸る。


「エドワードさんを狙っても無駄だ!、、、させない!」


ミルズは電光石火の速さで反応し、シャドーを追って領主室へと踏み込もうとする。だが、シャドーはミルズが扉をくぐろうとした瞬間、残像を残すかのように再び空間跳躍で背後に回り込み、黒いローブの袖から、幾筋もの漆黒の魔力の刃を、軌道を予測不能な曲線を描きながらミルズに向けて放った!刃は唸りを上げ、壁や調度品を削り取るが、ミルズの周囲には瞬時に展開された青い魔力の壁が揺らめき、全ての攻撃を完璧に弾く。障壁と刃が衝突するたびに、室内に乾いた衝撃音が響き渡った。


シャドーはその焦りが伝わるかのように、次々と空間跳躍を繰り返す。部屋の四隅、天井、そして床下からも、歪んだ空間の破片や、周囲の空気を捻じ曲げるような不可視の衝撃波をミルズに向けて放ってくる。空間魔法の真髄とでもいうべき変幻自在な攻撃だ。しかし、ミルズの周囲を濃密に覆う魔力は、それらをことごとく防ぎ、あるいは無効化していく。シャドーの猛攻は、まるで実体のない幽霊に触れるように、ミルズには一切届かない。


「効かんか、、、小賢しい!」


焦りからか、シャドーから初めて感情のこもった声が漏れた。その言葉と共に、シャドーの周囲の空間が大きく歪み、ミルズを閉じ込めようと圧縮される。だが、ミルズの魔力は、その空間の歪みさえも掌握しているかのように、軽くその場から身をずらすだけで回避した。


「この程度で、止められるとでも?」

「しかし変わった魔法だな」


ミルズは冷静にシャドーの動きを捉え、同時に幾本もの青い魔力の糸を放つ。それは目に見えない速さでシャドーを拘束しようとするが、シャドーは寸前で空間跳躍を発動させ、まるで蜃気楼のように姿を消して拘束を回避する。しかし、ミルズの魔力は館の空間全体に、そして領主の館周辺には特に濃密に張り巡らされており、シャドーが跳躍できる範囲は、ミルズの支配下にあるこの部屋の中、あるいはせいぜい館の敷地内に限られている。逃げ場などない。


十数度に及ぶ、光と影の目まぐるしい攻防。室内の調度品は破壊され、壁には無数の傷が刻まれる。しかし、ミルズには一切の傷がない。シャドーの魔力消費は激しく、その動きにもわずかながら鈍りが生じ始めた。


ミルズはシャドーの疲弊と、その空間跳躍のパターンを完全に読み切った。


「終わりにしよう」


シャドーが再び空間跳躍を行おうとした瞬間、ミルズの膨大な魔力が部屋中に充満しシャドーに纏わりついた。シャドーが跳躍が失敗におわった、ミルズの魔力がまるで生き物のようにシャドーに纏わり付き動作を阻害する。


「っ…な!?」


回避する間もなく、シャドーはその魔力に閉じ込められた。高密度に圧縮され、結晶化寸前の魔力は、シャドーの肉体はもちろん、空間魔法の発動すら完全に阻害している。先程までの俊敏な動きは影を潜め、シャドーは空中で完全に動きを止めたまま、為す術もなく拘束された。そのフードの下の顔には、隠しきれない絶望と、そして自らの常識を打ち破られた驚愕が浮かんでいる。


だが、ミルズの真の拘束は、ここからだった。


ミルズは、自身の魔力解放によって、既に領主室全体に満たされた煙状の魔力をさらに濃密にした。空間を埋め尽くす青い魔力の粒子が、シャドーの全身を重く圧迫し、わずかな動きすら許さない。まるで粘度の高い液体の中に囚われたかのように、シャドーの動きは極限まで阻害され、思考さえも鈍っていく。


動きが鈍ったシャドーめがけ、ミルズの指先から、針のように細く研ぎ澄まされた魔力の糸が放たれた。それは瞬く間にシャドーの足元へと到達し、皮膚を貫通して骨に食い込む。激しい痛みがシャドーの全身を駆け巡り、脳髄を直撃した。


「ぐっ…あぁぁっ…!!」


シャドーから、初めて苦痛に満ちた呻き声が漏れた。足に食い込んだ魔力の糸は、そのままシャドーの全身を巻きつけ、拘束していく。その魔力の糸は、激痛と同時に、シャドーの体内の魔力循環そのものを乱し、空間魔法の発動に必要な集中力を完全に奪い去った。


「もう逃げ場はない。観念するんだな」


ミルズは静かに告げた。彼の表情に、一抹の迷いもない。完璧な索敵と、圧倒的な魔力、そして思考を断ち切る激痛による拘束。この「影」を逃がす術は、どこにも残されていなかった。


すると、領主室の奥から、エドワード・アルベール男爵が兵士に支えられながら姿を現した。彼はミルズと、その手によって空中に拘束され、苦痛に顔を歪めるシャドーを見て、大きく目を見開いた。


「おお、貴殿は…!まさか、本当に間に合うとは…!よくぞ、この危機を救ってくれた!」


男爵は、未だ震えの残る声で、しかしその目に確かな安堵と敬意を宿してミルズに語りかけた。彼の背後からは、辛うじて立ち上がった冒険者たちが、信じられないものを見るようにミルズを見つめている。


「この者から、全て聞き出すことができるでしょう。これで依頼は完了かな」


ミルズは、捕らえたシャドーを前に、静かにそう告げた。機密書類の回収については、**シャドーの自白とともに明らかになるだろう。**夜空には満月が輝き、領内を優しく照らしている。彼の顔に、疲労の色はなかった。むしろ、魔力操作の新しい可能性の発見に満足感が漂っていた。


拘束されたシャドーは、兵士たちによって地下へと運ばれていった。アルベール領の地下には、特別な魔法断絶処理が施された厳重な牢がある。そこでは、いかなる魔法も発動することはできず、空間魔法の使い手であるシャドーも、もはやただの人間と変わりない。彼の絶望的なうめき声が、館の廊下に響き渡り、やがて闇の中に消えていった。


今回の事件は、ひとまずの解決を見た。領主エドワード・アルベールはミルズに深々と頭を下げ、惜しみない感謝と相応の報酬を約束した。


ミルズの顔に、疲労の色はなかった。むしろ、自身の「魔力脳」を最大限に活用し、未踏の広域索敵と空間操作への対抗策を確立した満足感が漂っていた。彼の新たな力は、この事件を通して確かに成長した。


しかし、シャドーが単独で行動していたのか、背後に誰がいるのか、そして奪われた機密書類何が掛かれていたのか――今回の事件の核心は、まだ全てが解き明かされたわけではなかった。この問題は、より大きな陰謀の一端に過ぎないのかもしれない。


だが、それはまた別の話となるだろう。


霧状に魔力を展開して魔力操作で自由自在に操れるようになりました。

これからもっと発展していきます。( ´∀`)bグッ!

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