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1章 魔法大学入学 ジャガーノート8

そろそろ限界なので眠い

探索、そして予期せぬ出会い

満身創痍のミルディアスは、荒い息をついていた。全身を蝕む激痛、疲労困憊の肉体、そして魔力酷使による脳の倦怠感。それでも、彼の瞳には、まだ消えぬ目的意識の光が宿っていた。


「…王女」


彼は、杖を支えにゆっくりと立ち上がった。千切れた左腕の根本から、再び血が滲み出している。だが、今はそれどころではない。時間との戦いであることは明白だった。こんな深層で、王女が無事である可能性は低い。一刻も早く見つけ出さなければ、手遅れになる。


ミルディアスは、自身の膨大な魔力を頭部に集中させた。脳を無理やり活性化させ、**嗅覚を極限まで強化していく。**同時に、周囲の五感を一つずつ閉じていく。視覚から光が失われ、聴覚からダンジョンの不音が消え、肌に触れる冷たい空気の感覚も薄れていく。


意識が研ぎ澄まされ、感覚が嗅覚一点に集中していく。音もなく、光もない、真っ暗な空間に、強烈な臭気が押し寄せた。血と、魔物の腐敗した匂い、そしてダンジョン特有の土の匂いが、鼻腔をこれでもかとばかりに刺激する。


「ぐっ…!」

彼は思わず呻いた。吐き気を催すほどの悪臭だったが、ミルディアスは精神力でそれを抑え込む。


(余計な情報は不要…)

彼はさらに魔力を集中させ、脳内で匂いのフィルターをかけた。まず、むせるような血の匂いを排除する。次に、鼻を突く魔物の匂いを排除。地面から立ち上る土の匂いも排除した。


全ての雑音(匂い)が消え去り、極限まで研ぎ澄まされた嗅覚が、微かな、しかし特別な香りを捉えた。それは、ギルドで事前に記憶した、王女の持つ高貴で繊細な、甘く清涼な香りだ。ダンジョンの悪臭の中に、まるで一輪の花が咲いたように、その香りだけが鮮明に浮かび上がってくる。


ミルディアスは、その香りへと意識を集中し、足を踏み出した。感覚を匂いだけに頼り、一歩、また一歩と、慎重に進んでいく。彼の全身が、嗅覚のアンテナになったかのようだ。


そして、不意に、その香りが強く感じられる場所があった。

「…あっちだ。見つけた…!」

彼は、その方向へと駆けた。


しかし、王女の姿はそこにはなかった。代わりに、岩陰に横たわっていたのは、一匹の黒い猫だった。その黒猫は、ミルディアスが近づくと、弱々しく目を開けたが、すぐにまた瞼を閉じる。なぜか、この猫から、ミルディアスが必死に追っていた王女と同じ匂いがする。強く、鮮明に。信じられないことだが、彼の嗅覚はそう告げていた。


(一体、どういうことだ…?)

混乱しながらも、ミルディアスは直感的に、この猫が王女の手がかりだと感じた。彼はそっと黒猫を抱き上げ、自身の服の懐に大事にしまい込んだ。


その時、猫の匂いとは別に、ミルディアスの嗅覚が別の匂いを捉えた。王女のそれとは違うが、間違いなく人間の、そして戦いに傷ついた者の匂いだ。それは、この先に続いている。おそらく、王女の護衛だったパーティメンバーなのだろう。


彼は再び歩き出した。香りのする方へと進むと、壁の近くに崩れた瓦礫の山が見えた。その下から、微かな、しかし確かに人間の匂いが漂っている。


ミルディアスは、深藍の魔力腕を展開し、その巨岩のような瓦礫を力任せに押し退けた。瓦礫の下から現れたのは、ボロボロになった女性冒険者が二人。血と泥にまみれ、意識を失っているようだが、微かに呼吸をしている。まだ息はある。


(助かった…!)

安堵の息を漏らし、ミルディアスは腰のポーションを取り出した。躊躇なく、一本を一人に、もう一本をもう一人に、それぞれ頭から惜しみなくかけた。琥珀色の液体が傷口に染み込み、みるみるうちに血が止まり、顔色が少しだけ改善する。


彼は残っていた最後のポーションを、自身も頭から浴びた。だが、その回復効果は、彼の疲弊しきった肉体には焼け石に水だった。王女を見つけることはできなかった。しかし、もう限界だった。体は鉛のように重く、意識も朦朧とし始めていた。これ以上、この深層に留まるのは危険だ。


ミルディアスは、深藍の魔力腕を再び展開し、気を失っている二人の女性冒険者を担ぎ上げた。そして、重い足を引きずりながら、8層を後にし、上層へと向かって歩き出した。彼の使命は、まだ終わらない。


ギルドへの帰還、そして後日談

深い疲労と激しい痛みに耐えながら、ミルディアスは気を失った二人の女性冒険者を魔力腕で担ぎ上げ、重い足を引きずり、ようやくギルドの入口まで辿り着いた。ダンジョンのひんやりとした空気から、喧騒に満ちたギルドの熱気が肌を打つ。


ギルドの扉を開けると、受付にいた職員が彼の姿を見て、目を見開いた。血と土にまみれ、片腕が千切れかかったミルディアスの姿は、あまりにも痛々しかった。


「ミルディアス様!?これは一体…!」

驚きと同時に、職員はすぐに状況を察し、奥にいる別の職員に声をかける。ミルディアスは、担ぎ上げていた二人をゆっくりとギルド職員へと引き渡した。


「この者たちは…ダンジョン8層で発見した冒険者だ。治療を頼む…」

それだけを告げるのが精一杯だった。何か重要なことを忘れているような、微かな引っかかりが胸の中にあった。だが、その正体を掴む前に、彼の意識はプツリと途切れた。


次に目覚めた時、ミルディアスは自宅のベッドの中にいた。見慣れた天井が目に入り、ゆっくりと体を起こす。全身の痛みはいくらか和らいでいたが、まだ重い倦怠感が残っていた。


1週間後

多少回復したミルディアスは、ギルドに立ち寄った。受付の職員に軽く頭を下げ、情報掲示板へと目を向ける。そこには、今回のダンジョン異変に関する新たな情報が貼り出されていた。


「そういえば、今回のスタンピートはひどかったらしいな。黒い特殊個体が大量に出たとか」

休憩スペースで耳にした冒険者の会話に、ミルディアスの意識が向く。


「ああ、まったく恐ろしいもんだぜ。聞くところによると、上層に上がってきた黒いライノスを含め、厄介な特殊個体の群れはバアルが一人で片付けたらしいぜ。さすがはあの男だ」

別の冒険者の言葉に、ミルディアスの眉が微かに動いた。バアル――彼の同期であり、常に一歩先を行く存在。上層に上がった黒いライノスの件は、彼の中で引っかかっていた事柄の一つだった。


「今回のスタンピートは、通常の冒険者では太刀打ちできないレベルだったってよ。ギルド上層部が**『厄災級スタンピート』と認定したらしいぜ。そして、その正式名称が…『ジャガーノート』**だそうだ」


「ジャガーノート」

ミルディアスは、その言葉を心の中で反芻した。自身の死闘を思い返す。確かに、通常のスタンピートとは比べ物にならない脅威だった。そして、彼はその「ジャガーノート」と、ダンジョンの深層で真正面から対峙し、生き抜いてきたのだ。


あとがきって何書いたらいいんだろう。

次は、自宅療養中に1週間をまったり書こうかな(゜-゜)

きっとめちゃくちゃ心配したメイドたちが、ミルディアスの部屋をうろちょろして

クラウスに怒られたりするんだろう。

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