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1章 魔法大学入学 ジャガーノート3

冒険者ミルズがまた何か始めます

ジャガーノート:阿修羅

数匹のグローリー・カメレオンを無事に捕獲したミルディアスは、ガルドたちの元へと戻った。


「これが、グローリー・カメレオンです」

ミルディアスは、捕獲したカメレオンのうちの一匹をガルドに手渡した。

ガルドは、その美しい光を放つ瞳を持つカメレオンを見て、満面の笑みを浮かべた。「おお!こいつが噂のグローリー・カメレオンか!目が本当に輝いてる!ミルズ、本当にありがとうな!」

リリアも興味深そうにカメレオンを覗き込む。「わぁ、本当に綺麗!こんな魔物、初めて見ました」

エリックは冷静に観察しつつも、その生態に興味を惹かれているようだった。「魔力反応も安定していますね。これは貴重なサンプルになりそうだ」


ミルディアスの目的は、あくまで中層の環境を経験しておくことだった。これで目的はほぼ達成されたと言えるだろう。


15層の簡易街:冒険者の拠点

ガルドのパーティーは1週間ほど中層に滞在する予定で、15階層の森の端っこに開けたエリアに作られた簡易的な街を拠点としていた。ここはダンジョン探索の中継地点として使われており、ギルド出張所もあって宿泊も可能だった。


「ここが拠点だ。ギルドが運営してるから、暴利をむさぼるようなことはねえが、地上よりは倍くらいは高いな」ガルドが説明した。

リリアは疲れた様子で頷く。「でも、こんな奥で安全に休めるなら、多少高くても助かりますね」

エリックも眼鏡を押し上げながら言った。「長期間の探索には不可欠な施設ですね。補給もできますし」


彼らは1日で15層まで到着し、2日目には目的の獲物であるグローリー・カメレオンをゲットしてしまった。すぐに地上に戻るのももったいないので、ガルドはパーティーメンバーに提案した。「どうだ?せっかくだから、あと3日ほど滞在して、各々好きに狩りでもして戻るか?」

リリアとエリックは異論なく賛成した。ミルディアスも、自身の魔術の訓練には絶好の機会だと考え、同意した。


滞在期間中、ミルディアスは思う存分ダンジョンを満喫した。彼の関心は、魔力操作の新たな可能性、特に魔力で形成する触手の操作へと向かっていた。


(魔力の触手は、もっと応用できるはずだ)

彼は、自身の魔力で生み出した触手を、まるで生き物のように自在に操る訓練を重ねた。最初は一本ずつしか意識を集中できなかったが、日を追うごとに、何本もの触手を同時に操れるようになり、その形状も自由自在に変化可能になった。


ある時、ミルディアスはふと、ある考えに至った。(この触手を、もっと複雑な形にできないだろうか?例えば、5本の触手を束ねたら、手にできないか?)

彼は早速試みた。自身の魔力を凝縮し、5本の触手を束ねて、まるで人間の腕のような形状にしてみた。そして、その先端に掌と5本の指を作り出した。しかし、それを通常の腕のように細かく動かすのは至難の業だった。指一本一本を意識して動かそうとすると、脳に激しい負荷がかかり、頭痛すら覚える。


(やはり、脳の処理能力が追いつかないのか…)

そこでミルディアスは、自身の脳を魔力強化することを試みた。魔力を脳の神経回路に流し込み、情報処理能力を増幅させる。それは、これまでも行ってきたことだが、今回はさらに踏み込んだ強化だった。


脳を魔力強化した瞬間、魔力の腕の操作が、まるで自分の手足のように格段に容易になったのだ。指の動き一つ一つが、意図した通りに反応する。複数の魔力腕への指示もスムーズに行えるようになった。確かに脳への負担はかかるだろうが、それはミルディアスにとって、自身の限界を広げるための代償に過ぎなかった。


彼は訓練を兼ねて、魔力の腕に武器を握らせ、巧みに扱ってみた。剣、槍、弓、盾…あらゆる武器を魔力腕で操り、自身の体術と組み合わせる。その動きは、見る見るうちに洗練されていった。


ガルドたちは、ミルディアスの異様な訓練風景を遠巻きに見ていた。

「おいおい、ミルズは何やってんだ?腕が何本も…」ガルドが目を擦りながら呟いた。

リリアが呆れたように言った。「あれ、魔力でできてるんですか?信じられない…」

エリックは真剣な表情でミルディアスを観察していた。「魔力で物体を形成し、それを同時に複数操作する…しかも、脳に直接魔力で干渉して処理能力を上げているとすれば、彼は、我々の常識をはるかに超えています」


滞在最終日には、ミルディアスは魔力の腕を同時に4本も操作できるようになっていた。彼の本来の腕と合わせると、まるで6本腕の阿修羅のように魔力の腕を操り、魔物を圧倒するその戦闘スタイルは、遠目から見ても化け物としか言いようがなかった。彼の周囲の冒険者たちは、その異様な光景にただ呆然とするばかりだった。


ガルドは、ミルディアスの戦闘を間近で見て、内心で深く頷いた。「上に行くやつは皆ああいう化け物なんだろうな」彼はそう思い、同時に自身の目標を再確認した。「俺はせいぜいB級まででいいな。これ以上は、俺の胃が持たねぇ」ガルドは、ミルディアスのような道を歩むことはないと、改めて心に誓ったのだった。

リリアはミルディアスの恐ろしいまでの成長に、ただただ畏敬の念を抱いていた。「あの人は、一体どこまで強くなるんだろう…」

エリックは、ミルディアスの能力を目の当たりにし、自身の研究意欲を掻き立てられていた。「彼のような存在を間近で観察できるのは、研究者としてこの上ない喜びだ…」


帰還と予感

3日間の滞在を終え、ガルドのパーティーは地上への帰路についた。ミルディアスは、この中層での経験が、自身の魔術を飛躍的に進化させる、非常に実り多い時間となったことを実感していた。


帰還途中、彼らがダンジョン5層に差し掛かった時、ミルディアスは強化している嗅覚に、覚えのある香りを感じ取った。それは、微かではあるが、あの第三王女の香水の香りだった。


(王女が、なぜ…?)

ミルディアスは一瞬疑問に思ったが、すぐに考えを巡らせた。自分も貴族のはしくれだ。王族もまた、実戦経験を積むためダンジョンを利用することは聞いている。王女もそんな感じなのだろうか、と一人納得した。しかし、その場に王女の姿はなく、ただ香りの残滓があるだけだった。


そのまま歩を進めているうちに、ミルディアスは知らぬ間にダンジョン出口を抜け、冒険者ギルドの明るいロビーに帰還していた。ガルドたちは捕獲したグローリー・カメレオンをギルドに引き渡し、報酬を受け取った。ミルディアスも自身の魔石を販売し、十分な対価を得た。


これで夏季休暇中のダンジョン深層への挑戦に向けた、最初の一歩が踏み出された。ミルディアスの心は、新たな探求への期待で満たされていた。

ジャガーノートが出てこないまま帰還しちゃいました。

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