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1章 魔法大学入学 ジャガーノート

夏休みになるので冒険者活動開始です。

魔法大学の夏休みは、研究だったり鍛錬だったり帰省したり、

まとまった時間を確保するためにあります。

ジャガーノート:中層への誘い

期末試験の激戦が終わり、魔法大学にはようやく束の間の平穏が訪れていた。張り詰めていた緊張感は解き放たれ、生徒たちの間には、解放感と夏季休暇への期待が満ち溢れていた。多くの生徒が実家へ帰省する準備を進める中、ミルディアス・ブルークアルは静かに、しかし確固たる計画を胸に秘めていた。


彼は学期中も週末冒険者として活動を続けていた。週末のわずかな時間しか動けないにも関わらず、かつては厄介な盗賊団を討伐成功させ、高純度の魔石をギルドに安定して提供するなど、C級冒険者としては異例の実績を上げていた。しかし、週末限定の活動では、ダンジョンの深層に潜り、自身の限界を試す機会は限られていた。彼の目的は、常に自身の魔力を高め、未知の領域を探求することにあった。だからこそ、この2ヶ月間の夏季休暇は、ミルディアスにとって絶好の機会だった。彼はこの期間を利用し、念願のダンジョン深層への到達を計画していた。手始めに、まずは中層までの探索から始めることにした。


気心の知れた誘い:ガルドとの再会

ダンジョン遠征の準備を進める中、ミルディアスは冒険者ギルドで、気心の知れたベテラン冒険者、ガルドのパーティーにばったりと出会った。ガルドは豪放な体格と、常に楽しげな笑みを浮かべる男だ。彼もまた、ダンジョンへと獲物を狩りに出かける準備をしていた。


「おう、ミルズ!期末試験は圧勝だったらしいな!さすがだぜ!」

ガルドは、ミルディアスの肩を軽く叩き、朗らかに声をかけた。彼の後ろには、剣士のリリアと、後衛で回復魔法と支援魔法を扱うエリックが控えていた。どちらもガルドと共に何度かダンジョンに潜ったことのある顔見知りだった。


ミルディアスは小さく頷いた。「おかげさまで」


ガルドはミルディアスが学園の生徒でありながら、非常に使える魔術師であることを知っていた。以前、偶発的に共闘した際のミルディアスの冷静な判断力と圧倒的な魔力を見て、その実力を高く評価していたのだ。


「なぁ、もしよかったらなんだがよ。俺たちもちょうど中層の獲物を狙ってるところなんだ。どうだ、一緒に一狩り行かねえか?ダメ元で聞いてみたんだが、もし来れるなら大助かりなんだがな!」

ガルドは軽い調子で誘ってきた。普段であれば、パーティーにソロの冒険者を誘うことは少ないが、ミルディアス相手ならば話は別だった。彼の実力と、どんな状況にも動じない冷静さは、ガルドにとって魅力的に映ったのだろう。


ミルディアスは即座に頷いた。「構いません。ちょうどダンジョン慣らしとして都合がよかったです」


ガルドは意外そうな顔をしつつも、すぐに破顔した。「おお、そりゃありがてぇ!助かるぜ!ミルズが来てくれるなら百人力だ!」


リリアが少し心配そうな顔で尋ねた。「ガルドさん、ミルズさんって学生さんですよね?ダンジョン中層は、ちょっと…」彼女はミルディアスを一瞥した。彼の端正な顔立ちと、年齢不相応な落ち着きは、ダンジョンの荒々しさとはかけ離れて見えた。

ガルドは大きく笑い飛ばした。「ハハッ!リリア、ミルズを侮るな。あいつは見た目によらずとんでもねぇ化け物だぜ?前にちょっと手合わせしたことがあんだけどよ、俺たちが束になっても歯が立たねぇだろうなってくらいだ。それに、ダンジョン慣らしって言ってるくらいだから、深層狙ってるんだろうよ」

エリックも眼鏡を押し上げながら口を開いた。「私も同感です、リリアさん。彼の魔力は底が知れません。むしろ、彼がいてくれるなら、今回の狩りは非常に安全に進められるでしょう」


ミルディアスは、彼らの会話に特に表情を変えることなく、淡々と応じた。「ご期待に沿えるよう尽力します」


こうして、ミルディアスはガルド率いるパーティーの一員として、初めてのダンジョン中層へと足を踏み入れることになった。


道中:ミルディアスの「異常な便利さ」

ダンジョンに入って数時間、ガルドのパーティーは浅層を順調に進んでいた。ミルディアスはパーティーの最後尾で、周囲の魔力とダンジョン全体の情報を無数の魔力網で感知していた。


「ガルド、前方二十メートル。天井に粘着性のある魔物、三体。同時に左右の壁から待ち伏せている小型の魔物、二体ずつ。合計七体」ミルディアスが静かに告げる。

ガルドは驚きもせず、ニヤリと笑った。「よし、ミルズの索敵は相変わらず完璧だな!不意打ち上等!行くぞ、お前ら!」


ミルディアスの索敵能力は、異常なほど正確だった。彼の魔力網は、目に見えない糸のように空間全体に張り巡らされ、わずかな魔物の気配や、仕掛けられた罠の魔力反応までをも正確に捉える。これにより、パーティーは一度たりとも不意打ちを受けることはなかった。常に魔物よりも先に存在を察知し、必ず先制攻撃を仕掛けることができる。これは、ダンジョン探索において計り知れないアドバンテージだった。


リリアは感嘆の声を漏らした。「すごい…ミルズさんの索敵のおかげで、こんなにも安心して進めるなんて。いつもはヒヤヒヤものなのに、まるで私たちに合わせたように敵が現れてくれますね」彼女は素早く剣を抜き、ミルディアスの指示に従って位置についた。

エリックも額の汗を拭いながら言った。「これなら、余計な消耗も最小限に抑えられます。彼の後ろにいれば、ほとんど無敵と言っていいかもしれません」


戦闘になれば、ミルディアスの魔力は猛威を振るった。彼の放つ魔力弾は正確無比で、敵の急所を的確に貫き、魔物たちは次々と沈んでいく。時に現れる大型の魔物には、ガルドが先陣を切り、リリアが剣技で応じ、エリックが回復と支援魔法で後方から支える。しかし、ミルディアスの援護があれば、その討伐速度は格段に上がった。彼の魔力はほとんど尽きることがなく、まるで無限の泉のようだった。


「ミルズ!助かるぜ!そいつの足止めてくれ!」

ガルドが叫ぶと、ミルディアスの手から放たれた漆黒の糸が、暴れる巨大なオーガの足を絡め取り、その動きを一時的に封じた。その隙にガルドの渾身の一撃がオーガの頭蓋を砕いた。


「ありがとうございます、ミルズさん!おかげで助かりました!」リリアが息を弾ませながら感謝の言葉を述べた。

エリックも感心しきった様子で呟く。「回復魔法を使う機会が激減しましたね。これほどスムーズなダンジョン攻略は初めてです」


中層10層:安全で快適な一夜

一日がかりでダンジョンの浅層を突破し、彼らはついに中層10層に到達した。ここは広々とした空間があり、一時的な休息地点として利用されることが多い。


「よし、今日はここで一泊するぞ。明日からはいよいよ中層の本格的な探索だ、気を引き締めていこう」ガルドが言った。

リリアが少し不安げに尋ねる。「ここなら比較的安全とはいえ、夜間の警戒は必要ですよね…私たち、疲労も溜まってますし」

ミルディアスが静かに答えた。「警戒は私が担当します。魔力網を周囲に展開し、侵入者は即座に察知可能です」


そして、ミルディアスはもう一つの「異常な便利さ」を見せた。

夜になり、ガルドたちが交代で警戒に当たる中、ミルディアスは自身の周囲に半透明の魔力の卵を形成した。それは彼の体をすっぽりと覆い、外敵からの干渉を完全に遮断する。


「ミルズ、それ、なんだ?」ガルドが目を丸くして尋ねた。

「魔力によって外部と隔離された空間です。この中で休めば、安全を確保できます」ミルディアスの声は、魔力の卵越しにかすかに響いた。

「おいおい、そんなモンあんのかよ…」リリアが呆れたように呟く。「そんなの、快適すぎるでしょう…?」

エリックが苦笑しながら言った。「多少の魔力は消費するのでしょうが、警戒に割くリソースを考えれば、むしろ効率的ですね。さすがです、ミルズさん」

「ええ。魔力消費は微々たるものです」ミルディアスは淡々と答えると、そのまま魔力の卵の中で静かに目を閉じた。


ガルドは、ミルディアスの眠る魔力の卵を見て、思わず苦笑した。

「あいつ、マジで何なんだ…。警戒いらず、魔力は無限、しかも快適に寝れるとか、冒険者として反則だろ」

リリアが小さく笑った。「でも、私たちにとってはありがたいですよね。おかげでぐっすり眠れそうです」

エリックも頷いた。「ええ、こんな安心できるダンジョン泊は初めてです。彼の存在が、ここまで精神的な負担を軽減してくれるとは…」


ミルディアスの魔力網による絶対的な警戒と、魔力の卵に入って安全に寝ることができるという点は、ガルドたちにとってまさに福音だった。ぶっちゃけ、これほど快適なダンジョン泊は初めてだと彼らは感じていた。普段は眠りの浅い者も、ミルディアスの存在に安心して熟睡できたのだ。


15層へ:加速する探索

翌朝、十分な休息を取ったパーティーは、いよいよ中層のさらに奥深くへと進んでいった。ミルディアスの索敵能力は変わらず健在で、彼らは一度も手痛い奇襲を受けることなく、スムーズに進行した。


「左前方、巨大な影。グリムゴブリンの群れ、十体以上。隠れて近づいています」ミルディアスが冷静に指示を出す。

ガルドはニヤリと笑った。「よし、ミルズがそう言うなら、正面突破だ!リリア、エリック、行くぞ!」


ミルディアスの正確な情報と、強力な遠距離支援が加わることで、ガルドのパーティーの戦闘効率は飛躍的に向上していた。本来なら苦戦するような魔物の群れも、彼らの連携とミルディアスの圧倒的な魔力の前には、紙切れのように散っていった。


「ミルズさん、もう少し右にいるオークを!」リリアが叫ぶと、ミルディアスは寸分違わず魔力弾を放ち、オークの動きを止めた。

「ナイスカバーだミルズ!」ガルドが感嘆の声を上げる。

エリックは回復魔法の準備をしつつも、ほとんどその出番がないことに驚いていた。「素晴らしい連携です…まるで長年組んでいるパーティーのようですね」


そして、彼らは中層をさらに進み、ついに目的地である15層に到達した。

そこは、ダンジョンの中とは思えない光景が広がっていた。天井は遥か高く、薄暗いダンジョン特有の閉塞感は全くない。空は見えないはずなのに、まるで屋外の昼間のように明るい光が降り注いでいた。そして、その光の下には、どこまでも続く木々がうっそうと茂る森が広がっていたのだ。足元には苔が生え、小鳥のさえずりのような音がどこからか聞こえてくる。まるで、知らないうちにダンジョンを抜けて、別の森に辿り着いてしまったかのような錯覚に陥る。


「…これが『光の森』。想像以上ですね」ミルディアスは、周囲の魔力と生態系を分析するように静かに呟いた。

「驚くよな。魔力によって光と生態系が維持されてるらしいぜ。俺たちの獲物は、この中にいるグローリー・カメレオンだ。体長は1メートルくらいで、カメレオンにしてはでけえが、目が光ってるからすぐわかる」ガルドが興奮気味に説明した。


リリアが森を見上げ、大きく息を吸い込んだ。「わぁ…本当にダンジョンの中とは思えませんね。空気が澄んでいて、外にいるみたいです」

エリックも周囲を観察し、メモを取り始めた。「これは学術的にも非常に興味深い環境ですね。魔力の循環が特異な構造をしているようです。私ももっと調べてみたいものです」


ミルディアスは静かに頷き、新たな環境へと意識を集中させた。彼のダンジョン探索は、ここからが本番だった。

初めての中層に難なく到達してしまいました。

楽しい冒険の始まりです。

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