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1章 魔法大学入学 バトルロワイヤル11

そろそろ決着です。

第三日目:廃坑の深淵、静かな終焉

試験の第三日目。廃坑の闇は重く、湿った空気が張り詰めていた。微かに滴る水滴の音だけが響く中、生存をかけた戦いは最終局面を迎えていた。フレッドたちチームフレッドとの激戦を終えたミルディアスは、疲労の兆候を見せながらも、その圧倒的な存在感を保っていた。


エマとルナ、森での静かな終焉

試験の最終日、三日目が過ぎゆく頃、エマとルナは廃坑から遠く離れた森の奥深くで、静かにキャンプを張っていた。夜が更け、薪の燃える音だけが、森の静寂を破る。パチパチと弾ける炎の光が、二人の顔を優しく照らしていた。


「結局、廃坑には行かなかったわね、ルナ」エマが火を見つめながら、どこか安堵したように呟いた。

ルナは静かに目を閉じ、遠くの廃坑から届くはずのかすかな魔力の残響に耳を傾けていた。彼女の表情は穏やかだった。

「ええ。私たちは最初から、森を拠点にして、無理をしないと決めていたもの。それに…」


彼女たちは確かに、試験開始時に「最終的には廃坑へ向かう」という選択肢も視野に入れていた。しかし、廃坑の入り口まで来た際、中から響き渡る凄まじい戦闘の音、特にミルディアスの放つ、肌を刺すような圧倒的な魔力の波動、そして立て続けに聞こえてくる生徒たちがリタイアしていく審判の声に、心の底から恐怖を覚えてしまったのだ。その場に立ちすくみ、足がすくんで一歩も踏み出せなかった。身体が本能的に危険を察知し、それ以上踏み込むことを拒んだのだ。


「あの音を聞いてしまったら、とても中に入る気にはなれなかったわ…」エマは肩をすくめ、小さくため息をついた。その声には、少しばかりの後悔と、それ以上の安堵が混じっていた。

ルナも小さく頷いた。「あの圧倒的な魔力は、私たちで太刀打ちできる相手じゃないと判断した。賢明な選択よ」彼女の言葉には、自分たちの判断が正しかったという確信が宿っていた。彼女たちは無理に英雄になろうとはしなかった。ただ生き残る、それこそがこの試験の目的の一つだと理解していたのだ。


結局、彼女たちは廃坑へ向かうことなく、森の中で最後まで隠れ通し、期末試験の終わりを迎えることになった。試験終了を告げる鐘の音が鳴り響いた時、彼女たちは心底安堵し、互いに顔を見合わせて小さく微笑んだ。彼女たちは、試験のルール上、無理に戦う必要はないという点を最大限に利用したのだった。他の生徒が互いに消耗し、あるいはミルディアスによって次々と脱落していく中で、彼女たちは静かに、そして安全に試験を乗り切ったのだ。


セレス、がれきの下の三日間

そして、ここまで物語に登場することのなかったセレス・ウィンドール。彼女は試験開始時、他の生徒と同様に廃坑でスタートしていた。しかし、その試験は彼女にとって、あまりにも不本意な形で始まった。


セレスは、試験開始直後から、廃坑の複雑な構造を逆手に取り、人目につかない場所を探して身を隠すことを選択していた。彼女の専門は隠密魔法と偵察魔法であり、それを最大限に活かすつもりだった。彼女は身を潜めることに長けており、自身の魔力を周囲の環境に溶け込ませることで、完璧な隠密行動を可能にしていた。誰にも気づかれることなく、彼女は廃坑の奥深くへと進み、静かに時を待っていた。彼女の計画は、他の生徒たちが互いに消耗しきったところで、漁夫の利を得るというものだった。


しかし、試験が開始して間もなく、廃坑全体を揺るがすような激しい戦闘の音が彼女の隠れる場所まで響き始めた。そして、不意に、彼女の隠れていた場所のすぐ近くで、巨大な魔力の衝突が発生した。それは、フレッドたちチームフレッドとミルディアスの、想像を絶する激戦の余波だった。


「ひっ…!」


彼女のすぐそばで、強烈な魔力弾が炸裂したのだ。その爆風は、彼女の隠れていた岩壁を直撃し、堅牢なはずの天井が悲鳴を上げた。セレスは咄嗟に身を固めたが、爆風に巻き込まれ、頭上から降り注ぐ大量のがれきに叩きつけられた。重い岩の塊が彼女の全身を覆い、彼女は身動き一つ取れなくなった。身体を圧迫する重みに、痛みよりも先に、突然の出来事に対する驚愕と、完全に身動きができない焦りが彼女を襲った。


自力で脱出を試みたが、いくら力を込めても、崩れたがれきはびくともしない。魔法を使おうにも、全身を締め付けられ、魔力を練ることもままならない。彼女は、がれきの隙間にできたわずかな空間で、身動きが取れないまま取り残されてしまったのだ。その空間は狭く、暗く、まるで生き埋めにされたかのような絶望がセレスを包み込んだ。


「誰か…!助けて…!」


必死に助けを呼んだが、彼女の声は虚しくがれきの隙間に吸い込まれるだけだった。外の戦闘音は遠のき、次第に何も聞こえなくなった。完全な孤独と絶望の淵に立たされたセレスだったが、持ち前の忍耐力と、わずかな希望にすがって生き延びることを決意した。幸いにも、がれきの奥にはわずかな空気の通り道があり、試験用に持っていた携帯食料と水筒が数日分残っていた。


そして、セレスはそのまま、がれきの下の暗闇の中で、誰にも発見されることなく、そして何もできないまま、ただひたすらに試験の終わりを待つ3日間を過ごしたのだった。彼女の試験は、誰と戦うこともなく、ただがれきに埋もれるという、あまりにも不本意で、しかし皮肉な形で幕を閉じたのだ。


ミルディアスの疲労とオルガの奇襲、そしてリアムの介入

フレッドとの壮絶な戦いを終え、ミルディアスは普段の無表情な顔に、かすかな疲労の色を浮かべていた。さすがの彼も、これほどの波状攻撃を受け続ければ消耗する。廃坑の薄暗い通路の隅で、彼は一時的な休息を取ろうと、静かに目を閉じた。彼の魔力網は健在だが、長時間の酷使により、集中力がわずかに途切れていた。周囲の微細な魔力の揺らぎを捉えきれない、一瞬の隙が生じていたのだ。


その一瞬の隙を、闇に潜んでいたオルガは見逃さなかった。彼女は過去、学園の模擬戦でミルディアスと対峙し、その圧倒的な力の前に完敗を喫した経験があった。その時の雪辱を果たすため、彼女は虎視眈々と反撃の機会を伺っていたのだ。ミルディアスの魔力感知網の隙間を縫うように、彼女は忍び寄り、その手には凝縮された水魔法の刃が、青白い光を放ちながら形成されていた。音もなく振り下ろされたその一撃は、疲弊したミルディアスの首筋、急所を正確に狙っていた。オルガの目は、復讐の炎で燃え上がっていた。


しかし、その水刃がミルディアスの皮膚に触れる寸前、突如として激しい炎の壁が二人の間に割り込んだ。水と炎がぶつかり合い、シュウウッという音と共に大量の蒸気が立ち上り、一瞬視界を遮った。


「そこまでだ!」


蒸気の向こうから現れたのは、廃坑で密かに体力を回復させていたリアム・フレイだった。彼の体からは、休息を経て蓄えられた強力な炎の魔力が立ち上っている。リアムはオルガの一撃を寸前で防ぐと、そのまま身体をひねり、火炎を纏った渾身の拳をオルガへと叩き込んだ。彼の拳には、ミルディアスとの前日の交流で得た、何らかの確信めいたものが宿っているかのようだった。


オルガはリアムの予想外の介入に驚愕し、防御が間に合わない。彼女の顔に、驚きと悔しさが入り混じった表情が浮かんだ。リアムの渾身の一撃がオルガの腹部に炸裂し、彼女は苦悶の声を上げながら、背後の壁に激しく叩きつけられた。全身に走る激痛が、オルガの意識を急速に奪っていく。


「ぐっ…!」


その衝撃に、オルガの意識は暗転した。


「オルガ、リタイヤ!」上級審判の声が、廃坑に大きく響き渡る。その声は、この試験における最後の脱落者が出たことを告げていた。


オルガが完全に意識を失ったのを確認すると、リアムはミルディアスの方を向いた。

「これで、借りは返したぜ」

リアムはそう呟くと、そのまま廃坑の闇の中へと姿を消し、去っていった。彼は自分がやるべきことを果たしたとでも言うかのように、一切の迷いを見せなかった。その足取りは軽く、彼もまたこの試験で何かを掴んだようだった。彼の炎の魔力は、廃坑の闇に溶けていく。


リアムの背中へ、ミルディアスは無言で、しかし正確に、ポーションの小瓶を軽く投げた。それは、前日のミルディアスからの「貸し」を、リアムが「返した」ことへの、ミルディアスなりの返礼だったのだろう。リアムは振り返ることなく、まるでそれが来ることを知っていたかのように片手でそれを掴み取り、そのまま闇に溶け込んだ。ミルディアスは、リアムの去る方向をしばらく見つめていたが、やがて視線を閉じ、再び休息に入った。彼の疲労はピークに達していたが、もはや彼に刃向かう者は、この廃坑には残っていなかった。彼の魔力網だけが、静かに廃坑全体を支配し続けている。


期末試験、終幕:覇者の誕生

廃坑に響き渡る最後の「リタイヤ!」の声が静寂に吸い込まれ、重苦しい沈黙が支配した。もはや、この広大な地下空間で動ける生徒は、ミルディアス・ブルークアルただ一人となっていた。彼の魔力は疲弊していたものの、その瞳には一点の曇りもなく、冷徹な勝利の光が宿っていた。


廃坑の深部に設置された魔力監視装置が、生存者ゼロを検知した。その瞬間、学園の上空に巨大な魔法陣が輝き、遠く離れた森や、がれきの下で身動きの取れないセレスの場所にも、試験終了を告げる清らかな鐘の音が響き渡った。


こうして、過酷を極めた期末試験は、ミルディアス・ブルークアルの圧倒的な優勝という形で幕を閉じた。


試験が終了し、審判を務めていた上級生たちが次々と廃坑の奥へと現れ、リタイアした生徒たちを安全な場所へと収容していった。彼らは意識を失った生徒たちを運び出し、負傷箇所を応急処置しながら、学園へと転送していく。ミルディアスは、泥と埃にまみれ、疲れ果てた表情のフレッドが転送されるのを、静かに見送っていた。その顔に、友情に対する感傷の兆しはなかった。ただ、自らの勝利を粛々と受け止めているかのようだった。


数時間後、廃坑は再び静寂に包まれた。ミルディアスは最後に残され、自身の魔力網をゆっくりと解除していく。廃坑を覆っていた半透明の糸が光の粒子となって消え去ると、重く圧し掛かっていた魔力の気配が薄れ、空気がわずかに軽くなった。彼は、誰に邪魔されることもなく、廃坑の出口へと向かう。彼の足取りは、もはや躊躇することなく、次なる場所へと進む者の確固たる意志を示していた。


期末試験の結果は、すぐに学園中に知れ渡った。ミルディアス・ブルークアルという名前は、その圧倒的な実力と、すべての生徒をリタイアさせた冷徹な戦略によって、学園の歴史に深く刻まれることとなった。彼の名は畏敬の念をもって語られ、同時に、彼に立ち向かったフレッドやレオンたちの勇気もまた、多くの生徒たちの心に深く残った。


この試験は、ただ個人の優劣を決めるだけでなく、生徒たちの人間関係、隠された才能、そして極限状態での選択を浮き彫りにする場となった。そして、ミルディアス・ブルークアルは、その全てにおいて、頂点に立ったのだ。

終わった( ´∀`)bグッ!

生存者

ミルディアス

エマ

ルナ

リアム

セレス


退場者

ヴィクトリア

シモン

カイル

ブラッド

ヴァルガス

ゼクロス

ディアナ

レオン

フレッド

レイモンド

エリオット

アリス・ブランシェ

コレット

ズィガ

オルガ


みんな生きているから生存者って変かな。

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