表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

18/77

1章 魔法大学入学 週末冒険者2

週末冒険者後編

サクサクっと行きましょう。

冒険者活動:因縁の盗賊団討伐【後半】

週末が明け、再び冒険者ギルドに集まったミルズとガルドのパーティーは、衝撃的な報告を受けることになった。


「…何だと!? 他のパーティーが、アジトに突入して捕まっただと!?」ガルドが怒鳴るように叫んだ。


ギルドの職員は、申し訳なさそうに頭を下げた。「はい…。我々が到着する前に、手柄を焦ったいくつかのパーティーが、独断でアジトに突入したようです。そのうちの一組から、救援を求める魔力通信が途絶えました…」


ミルズは、静かに目を閉じた。彼の予感が的中してしまった。

「…やはり、そうなりましたか」


リリアが悔しそうに拳を握りしめる。「くそっ、だから言ったんだ! 無茶はするなって!」


エリックが青ざめた顔で言った。「捕まった冒険者たちは、どうなるんでしょう…」


ガルドは、苦虫を噛み潰したような顔でミルズを見た。「ミルズ…お前の言った通りになったな。こうなったら、お前の作戦とやらで、一気に決着をつけるしかねえ」


「はい。そのために、準備してきました」ミルズは、背負っていた大きなリュックから、いくつかの道具を取り出した。それは、大学の魔道具研究部から借りてきた、試作品の魔道具たちだった。


「これは…透明化マント。魔力を通すことで、周囲の光を屈折させ、身につけた者を透明にする効果があります。ただし、長時間使用すると魔力消費が激しいのと、強い衝撃を受けると効果が途切れる可能性があります」


次に彼が取り出したのは、手のひらサイズの小さなランタンだった。

「これは魔法ランタン。通常の光だけでなく、魔力を帯びた光を放つことができます。遠くからでも視認できるように、強力な光を放つ設定にしてあります」


そして最後に、手のひらに収まるほどの小さな球体。

「これは爆音弾。内部に魔力を圧縮し、解放することで、広範囲にわたって強烈な爆音を発生させます。一時的に敵の聴覚を麻痺させ、混乱させる効果があります」


ガルドたちは、ミルズの取り出した魔道具に驚きを隠せない。

「おいおい、そんなとんでもねえもん、どこで手に入れたんだ?」ガルドが目を丸くする。


「大学の魔道具研究部で、研究の一環として開発されたものです。今回のような状況を想定して、いくつか貸してもらいました」ミルズは淡々と答えた。


潜入、救出、そして総攻撃

作戦はこうだ。

まず、アジトから少し離れた森の中に、魔法ランタンを設置する。ランタンは、盗賊団の注意を引くために、あえて目立つように強力な光を放つ。盗賊団の一部がランタンの光に気づき、持ち場を離れて確認に向かった隙に、ミルズは透明化マントを羽織り、単独でアジトに潜入する。


「私が潜入し、捕らえられた冒険者たちの位置を特定します。もし生きていれば、彼らを保護し、安全な場所へ移動させます。その後、この爆音弾をアジトの奥で炸裂させます。それが、皆さんの突入の合図です」ミルズは説明した。


リリアが心配そうに言った。「単独で潜入なんて危険すぎるわ! もし見つかったら…」


「大丈夫です。私の五感強化と透明化マントがあれば、見つかることはありません。それに、捕らえられた冒険者たちを救出するには、奇襲が最も効果的です」ミルズは揺るがぬ決意を瞳に宿していた。


ガルドは、ミルズの覚悟を感じ取り、深く頷いた。「分かった。お前を信じる。だが、無茶だけはするなよ。もし、合図がなかったら、俺たちが突入する」


「承知しました。では、行ってきます」


ミルズは、魔法ランタンを設置し、その光が盗賊団のアジトから見える位置であることを確認した。そして、透明化マントを羽織り、その姿を消した。彼の強化された五感は、マントの効果で視覚情報がわずかに歪む中でも、周囲の情報を正確に捉え続けていた。


数分後、アジトの入り口から、数人の盗賊が警戒しながら出てきた。彼らは、森の奥で輝くランタンの光に気づき、訝しげにそちらへ向かっていく。その隙を突き、ミルズは音もなく洞窟へと足を踏み入れた。


洞窟内は、相変わらず薄暗く、盗賊たちの話し声や魔物の唸り声が響いている。ミルズは、強化された聴覚でそれらの音を分析し、捕らえられた冒険者たちの微かな呻き声を探した。そして、アジトの最奥、地下へと続く階段の先に、複数の人間の気配と、鎖が擦れる音を捉えた。


「見つけました」


ミルズは、音もなく階段を降りていく。そこには、檻の中に閉じ込められた冒険者たちがいた。彼らは傷つき、疲弊していたが、まだ息はある。ミルズは、檻の鍵を魔力紐で器用に開け、彼らを静かに外へ出した。


「…君は…誰だ?」一人の冒険者が、透明なミルズに気づき、かすれた声で尋ねた。


ミルズは、小声で囁いた。「ギルドの者です。今から合図を出します。その音を合図に、外の討伐隊が突入します。皆さんは、私が安全な場所へ誘導しますので、その指示に従ってください」


捕らえられた冒険者たちは、ミルズの言葉に希望の光を見た。


ミルズは、彼らを洞窟の奥にある、比較的安全な岩陰へと移動させた。そして、手に持った爆音弾に魔力を集中させる。


「準備はいいですか…?」


ドォォォォォン!!


爆音弾が炸裂し、洞窟全体に轟音が響き渡った。盗賊たちは、突然の爆音に耳を塞ぎ、混乱に陥る。同時に、ミルズは自身の周囲に魔力の触手を卵状に展開し、その内側に身を隠して身を守った。爆音は彼の聴覚にも響くが、魔力で強化された聴覚は、その衝撃をある程度緩和し、同時に盗賊たちの混乱した声や動きを正確に捉えていた。


その爆音を合図に、洞窟の外で待機していたガルドたちが一斉に突入した。


「突入だ! 奴らを逃がすな!」ガルドの咆哮が洞窟に響く。


内と外から挟み撃ちにされた盗賊団は、為す術もなく次々と無力化されていく。ミルズは、卵状の魔力触手の中から、無力化された盗賊たちを魔力紐で拘束し、捕縛を助けた。


戦闘は、ミルズの奇襲と、ガルドたちの連携によって、あっという間に決着した。盗賊団の親玉も、ミルズの魔力紐によって瞬く間に捕らえられ、抵抗する間もなかった。


英雄の帰還と新たな評価

討伐が完了し、捕らえられた盗賊たちがギルド職員によって連行されていく中、ミルズは保護した冒険者たちを連れて洞窟の入り口に戻った。その中に、かつて何度か依頼で顔を合わせたことのある、細身の女剣士フィオナがいた。


フィオナは、傷だらけの体で、ミルズを見上げた。

「ミルズさん…本当に、助けてくださってありがとうございます。私たち、もうダメだと思っていました…」

その目に涙が滲んでいた。ミルズは静かに頷き、彼女たちの安否を確かめるように軽く魔力を流した。


ギルド職員のロッドが、現場に到着し、捕らえられた盗賊団の親玉を見て驚きの声を上げた。

「まさか、これほどの規模の盗賊団を、これほど迅速に…! そして、捕らえられていた冒険者たちも無事とは。ミルズさん、あなたの功績は計り知れません!」

ロッドは深々と頭を下げた。


盗賊団の親玉は、縄で縛られながら、ミルズを睨みつけ、怨嗟の声を上げた。「ぐぅ…化け物め…! お前のような奴がいるなんて、聞いてねえぞ…!」


ガルドはミルズの肩を力強く叩いた。

「流石だな、ミルズ! お前がいなけりゃ、こうはならなかったぜ! 俺たちも、外で待機してはいたが、お前が中から合図を送ってくれたおかげで、被害も最小限で済んだ。本当に感謝する!」


リリアも興奮気味に言った。「ミルズの作戦、完璧だったわ! あの透明マントも、爆音弾も、本当にすごかった!」


エリックも優しい笑顔で頷いた。「ミルズさん、あなたの能力にはいつも驚かされます。本当に頼りになります!」


ミルズは、仲間たちの言葉に、控えめに答えた。

「皆さんの協力があってこそです。無事に終わってよかった」


今回の討伐は、ミルズの持つ「魔法が使えない」という制約をものともしない、常識外れの魔力操作と身体強化の能力を、改めて周囲に知らしめる結果となった。ギルドからの評価はもちろん、冒険者仲間からの信頼と尊敬も一層深まり、彼はこのギルドで、確かな存在感を築き上げていた。


ミルズの冒険者としての道は、まだ始まったばかりだ。

冒険者登録名はミルズだったことを忘れていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ