1章 魔法大学入学 魔法大学野外活動2
野外活動3日目です。
魔の森での二日間を終え、一行は大学近くに位置する教育用のダンジョンの入り口に集まっていた。三日目の野外活動は、ダンジョン探索だ。ここもまた、通常の冒険者が立ち入るような危険な場所ではないが、魔の森とは異なる独特の環境が学生たちを待ち受けている。
「さあ、諸君! いよいよダンジョン探索だ!」ラガン教官の声が、薄暗いダンジョンの入り口に響いた。「今回はダンジョン最下層を目指すわけではない。第一層の探索と、鉱物資源の採取が主な目的だ! ダンジョン内は視界が悪く、音も反響しやすい。魔の森とは勝手が違うぞ! 各自、ライトと魔石を用意しろ!」
マクシム教授がダンジョンの壁を指差しながら説明する。「ダンジョン内部は、外部の環境とは異なる独自の魔力循環を持っている。そのため、内部に生息する魔物も、外部の魔物とは異なる特性を持つことが多い。また、壁面に埋め込まれた鉱石は、魔力を帯びているものも少なくない。注意深く観察し、採取すること」
エルダ教授は、ダンジョン内で採取できる鉱石の見本を手にしていた。「ダンジョンには、薬草の材料となる希少な鉱物も存在するわ。それらは特定の魔物と共生している場合が多いから、魔物の生態を理解することも重要よ」
説明が終わり、各班は緊張した面持ちでダンジョンへと足を踏み入れた。ミルディアスの班も例外ではない。
ダンジョン探索:三日目「闇を制する五感と魔力の応用」
ダンジョンの内部は、入り口からすでに薄暗く、一歩足を踏み入れるごとに、ひんやりとした空気が肌を包み込んだ。壁からはじめじめとした湿気が漂い、地面は不規則な岩肌で覆われている。学生たちの持つ携帯用ライトが、かろうじて足元を照らしていた。
「うわ、真っ暗で何も見えない…」アリスが思わず声を上げた。彼女の顔には、不安が浮かんでいる。
「本当に、森とは全然違うわね。精霊の気配も、なんだかぼんやりしてて捉えにくいわ」コレットも、周囲の魔力の淀みに戸惑っているようだった。
ズィガがボルカの背に乗ったまま、ライトを周囲に向けた。「おい、フレッド、どこ行けばいいんだ?」
フレッドが地図を広げたが、その地図も薄暗い中で読み取りにくい。「うーん、こっちで合ってるはずだが…」
ミルディアスは、ライトを持つことなく、ゆっくりと目を閉じた。彼の強化された視力は、わずかな光さえも増幅し、ダンジョン内部の微かな光の粒子、そして暗闇に隠された壁の凹凸までをも鮮明に捉えることができた。強化された聴覚は、反響する足音の中に、遠くで蠢く魔物の微かな振動、壁を這う小さな虫の音さえも拾い上げていた。そして嗅覚は、湿気と土の匂いの中に、魔物の独特の体臭、そして鉱石の微かな金属臭を嗅ぎ分けていた。
「この先、右に曲がって少し進んだところに、魔物の群れがいます。そこを抜ければ、目的の鉱石がある場所です」ミルディアスは、まるで昼間の森を歩くかのように、迷いなく方向を指し示した。
「え、もう分かったの!? 何も聞こえないし、何も見えないのに…」アリスが再び驚きの声を上げる。
「ミルズは目がいいんだな。俺にはさっぱりだ」フレッドがミルディアスの横顔を見つめた。
ズィガはボルカの背の上で身を乗り出す。「まじかよ! お前、夜目が利くのか? すげえな!」
ミルディアスの指示に従い、一行は迷うことなく進んでいく。そして、彼が言った通り、曲がり角を曲がった先に、数体のコボルトがうろついていた。彼らは、暗闇を味方につけ、奇襲を仕掛けようとしていたようだが、ミルディアスの班には通用しなかった。
「コボルトだな! ボルカ、行くぞ!」ズィガが叫び、ボルカの巨体が突進する。
ミルディアスは魔力杖を構え、矢のような魔力弾を放つ。それは正確にコボルトの急所を貫き、次々と無力化していった。ダンジョン内の閉鎖された空間では、魔力弾の音がわずかに反響するが、その威力は確かなものだった。
「シルフよ、敵を吹き飛ばせ!」コレットが詠唱すると、突如として巻き起こった旋風が、残りのコボルトを壁に叩きつけ、動きを止めた。
「さすがコレット、精霊魔法もダンジョンで使えるんだな!」アリスが感嘆の声を上げた。
「うん、でも、やっぱり精霊の反応が鈍くて、集中しないと難しいわ」コレットは少し息を切らしている。
戦闘を終え、さらに進むと、ミルディアスが足を止めた。「この壁の奥に、魔力鉱石の反応があります。そして、それを守るかのように、スライムの群れがいますね」
彼は、壁に手を触れると、微かに震える指先で鉱石の魔力を感じ取っていた。
「スライムかぁ…暗くて見つけにくいし、普通の攻撃も効きにくいんだよね」アリスがうんざりした顔をした。
「だが、ミルズがいれば大丈夫だろ」フレッドは、ミルディアスへの信頼を深めていた。
ミルディアスは魔力杖を構え、今度は魔力紐を形成する。それは、彼の意思一つで無数の細い触手のように分かれ、暗闇に紛れるスライムの群れを次々と絡め取っていった。魔力紐は、その粘着性でスライムの体液を吸い上げ、抵抗できない状態にしていった。
「うわぁ、気持ち悪いけど、すごい!」アリスが感心と嫌悪の混じった声を上げた。
「まさか、魔力紐でスライムを捕獲するとは…」コレットも驚きを隠せない。
「縛り上げるだけでも相当な魔力が必要だろうが、それを維持できるとはな…」ズィガがボルカの背から降りて、ミルディアスの魔力紐の動きを凝視していた。彼らの班は、魔力紐をマジックバッグに入れる必要もなく、その場で魔物討伐の証拠を回収していった。
鉱石の採取も、ミルディアスの強化された視力と嗅覚、そして触覚が役立った。彼は、わずかな色の違いや、微かな魔力の流れを感じ取ることで、高純度の鉱石を正確に見分けることができた。他の班が苦労して探し回っている間に、ミルディアスの班は次々と貴重な鉱石を採取していった。
ラガン教官が彼らの成果を見て、感嘆の声を上げた。「まさか、これほどの効率で探索を進めるとは…ミルディアスの班は、他の追随を許さないな!」
マクシム教授も頷いた。「彼の索敵能力と、その魔道具の応用力は、ダンジョン探索において絶大なアドバンテージとなる。まさに天性の冒険者だな」
エルダ教授は、採取されたばかりの鉱石を手に、ミルディアスに問いかけた。「ミルディアス君、どうやってこれほど正確に鉱石を見分けることができたの? 魔力の流れを感じ取れる、というだけでは説明できないほどの精度よ」
ミルディアスは少し躊躇した後、班のメンバーを見渡した。彼らは皆、自分に「どうしてそんなことができるんだ?」という疑問の眼差しを向けていた。今が、彼らに答えを明かす時だと判断した。
「皆さん、私がなぜ、他の人よりも早く魔物や薬草を見つけたり、暗闇の中でも周りが見えたりするのか、不思議に思っていましたよね?」ミルディアスは、普段の冷静なトーンで語り始めた。
アリスがすぐに頷いた。「うん、すごく不思議だった! なんでそんなに耳がいいの? 目もすごくいいし!」
コレットも続く。「精霊のささやきよりも、ミルディアス君の方が正確に気配を捉えるもの。まるで魔法みたいだったわ」
ズィガが「俺も俺も! ボルカより鼻が利くのかって思ったぜ!」と興奮気味に言う。
フレッドは静かにミルディアスの言葉を待っていた。
ミルディアスは、深く息を吸い込んだ。「それは…私の魔力による身体強化の応用です。私は、自身の魔力を使い、嗅覚や聴覚、そして視力といった五感を、極めて高精度に強化することに成功しました」
「え…?」アリスがぽかんとした顔になった。
ミルディアスは続けた。「強化した聴覚は、目を使わなくても周囲の状況を把握できるほどに、遠くの微かな音まで拾い上げます。嗅覚も同様で、不快な匂いは意識的に遮断できるため、森の匂いやダンジョンの湿気も気になりません。視力も、意識すればかなり遠くまで、そして暗闇の中でも鮮明に見ることができます」
「そして、これらの能力は、すべて強弱を自由自在に調整できます。例えば、普段は普通の感覚で生活し、必要な時だけ最大限に強化する、といった具合に」
班のメンバーは、その説明に呆然としていた。
「それって…それって、もう…」アリスが震える声で呟いた。
コレットも目を大きく見開いている。「まるで、万能の魔道具を体に埋め込んでいるみたい…」
ズィガは、ボルカの背の上で立ち上がったまま、叫んだ。
「それってもう…魔法でよくないか!?」
フレッドが、大きく息を吐きながら、苦笑いを浮かべた。「…全く、ミルズには敵わないな」
彼らの驚きと困惑の声が、ダンジョンの奥深くへと響き渡った。ミルディアスの持つ「魔法が使えない」という制約は、彼の常識を超えた「魔力操作」と「身体強化」の能力によって、完全に打ち破られていたのだ。そして、その能力は、彼がこれまで培ってきた知識と、新たな環境での探求によって、さらなる進化を遂げようとしていた。
そろそろ冒険者活動の方再開したいなと、
夏休みに冒険者活動をちょっと長めに
がその前に、期末試験てきなイベントがってもいいかな。




