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1章 魔法大学入学 サークル活動

ちょっと長め部活(サークル)決めました。

今後の活動に活きてくるサークルを選んだんだろうと思いたい。

魔法戦闘模擬戦でのオルガとの試合は、ミルディアスにとって大きな転機となった。彼は、自身の魔力操作という技術、そしてそこから編み出した「魔力毛」という魔力操作の一形態が、魔法を使えないという制約の中でどれほどの可能性を秘めているかを実感したのだ。そして、勝利の興奮の裏で、彼の意識はすでに次なる段階へと向かっていた。それは、自身の魔力操作をさらに深く理解し、その可能性を広げることだった。


魔力操作は、誰にでも努力次第で習得できる基本的な技術だ。 魔術師であれば誰もが基礎として学ぶものだが、その多くは特定の属性魔法へと派生していく。魔力を直接操り、特定の形に変化させるような「魔力毛」の技術は、確かに誰にでも習得できるものだった。しかし、一般的には属性魔法を使った方が遥かに効率が良いため、他の魔法使いがわざわざ手間をかけて魔力を直接操作する技術を極めることはなかった。それが、この分野における**「盲点」だったのだ。ミルディアスの膨大な魔力量**と、魔法を使えないという境遇が、この盲点に彼を導いた。彼は、非効率と見なされる道を、効率を度外視した探求心で突き進むことを選んだのだ。


魔法大学では、学生は複数のサークルに参加し、専門分野を深く学ぶことができる。通常の学生であれば、自身の得意な魔法属性や、魔法剣士、身体強化といった一般的なサークルを選ぶだろう。しかし、ミルディアスは、これまでの彼自身の道を歩むように、一風変わった選択をした。


彼は結局「魔法剣士部」「身体強化魔法部」のいずれのサークルにも参加しなかった。代わりに、彼は自身の特殊な状況と未来の目標に合致する、二つのサークルにその名を連ねることにしたのだ。


生物研究部:深淵なる生命の探求

ミルディアスが最初に選んだのは、奇妙な噂が絶えない**「生物研究部」だった。この部を選んだ彼の目的は明確だ。それは、魔力による身体強化を正しく扱うため、自身の身体、そして生命そのものを深く理解する必要があると考えたからだ。彼の魔力操作は、身体能力を高める身体強化と密接に結びついている。この身体強化を最大限に引き出し、かつ安全に利用する**ためには、自身の肉体が魔力によってどのように変化し、機能するのかを知るのが不可欠だと彼は直感していた。


大学の奥まった棟のさらに地下に続く階段を降りた先に、生物研究部の研究室はあった。扉を開けた瞬間、ミルディアスを包み込んだのは、薬品の匂い、埃っぽい空気、そして、何かを煮詰めるような、形容しがたい混じり合った匂いだった。薄暗い室内には、天井まで届くような本棚が並び、その棚には見たこともない分厚い専門書がぎっしりと詰まっていた。部屋の中央にはいくつもの作業台が置かれ、フラスコやビーカー、解剖道具などが雑然と並んでいる。


そして、何よりも目を引いたのは、その**「展示物」の数々**だった。部屋の隅には、防腐処理が施されたのであろう、巨大な魔獣の頭蓋骨が飾られている。その横には、まるで液浸標本のように、奇妙な形状をした魔物の臓器が瓶の中に浮かんでいた。さらに、壁際には人体の骨格標本がいくつも吊るされており、その中に紛れて、明らかに人間ではない、しかし人間に酷似した骨格も確認できた。それらはどれも、見る者に生理的な不快感と、同時に強烈な好奇心を抱かせるものだった。ここが、一般的な生物学の研究室とは一線を画す、「ダーク」な雰囲気を持つ所以だった。


「あら、新しい入部希望者かしら?」


不意に、背後から澄んだ声が聞こえた。振り返ると、そこに立っていたのは、すらりとした長身の女性だった。黒いローブを羽織り、その下からは端正な顔立ちが覗いている。色素の薄い琥珀色の瞳は知性と好奇心に満ち、形の良い唇には微かな笑みが浮かんでいた。彼女の容姿は紛れもない美人だが、その視線には、まるで獲物を観察するかのような鋭さが宿っていた。


彼女こそが、生物研究部の部長を務めるリリアナ・ヴァレンタイン助教授だった。この大学のOGであり、若干30代前半にして助教授の地位にあるという才女だ。その専門分野における知識は深遠で、学生たちからは畏敬の念を込めて「魔女」と呼ばれることもあった。


「はい、ミルディアス・ブルークアルです。生物研究部への入部を希望します」ミルディアスは深々と頭を下げた。


リリアナは興味深そうにミルディアスを見つめた。「珍しいわね。この部を選ぶ学生は、大抵が変わり者か、よほどの研究熱心な生徒ばかりよ。あなたの専門は何かしら? 魔法ではなさそうだけど」


「その通りです。私は…直接的な魔法は使えません」ミルディアスは一瞬言葉を選んだ。「ですが、魔力操作による身体強化が得意です。それをより効果的に使うため、そしてその身体強化を極めた先に何があるのかを知るために、この部の活動が役に立つと思いました」


リリアナの琥珀色の瞳が、一層鋭くなった。「ほう。魔法を使えない魔術師、という噂のあなたね。面白いわ。それで、身体強化を極めるために、なぜ生物学を選ぶのかしら?」


「はい。身体強化を極めるには、体の機能を知る必要があるからです。そして、その極めた先に何があるのか、その可能性を知りたい。 また、自分の身体が魔力によってどう変化し、どこまで耐えられるのか、その限界を知りたいからです。生物の構造や、生命活動そのものが魔力にどう影響されるのか、それを理解することで、私の魔力操作もより精密に制御できるようになるのではないかと…」ミルディアスは、自分の考えを懸命に説明した。


リリアナはフッと笑った。「なるほど。理にかなっているわ。ここには、あなたが知りたいと思うあらゆる生命のデータと、それを探求するための手段がある。ただし、一つ忠告しておくわ。この研究室は、あなたの想像以上に『生々しい』かもしれないわよ」


彼女はそう言うと、部屋の奥の一角を指差した。そこには、ガラスケースがいくつも積み重ねられ、その中で無数の昆虫が飼育されていた。色とりどりの蝶、甲羅が光るカブトムシ、そして、見たこともない奇妙な形状の虫たちが、それぞれ独自の動きを見せている。中には、魔力の影響を受けているのか、明らかに常識外れの大きさに成長した虫もいた。


「これらは、魔力の影響を研究するための実験体よ。特に、魔力環境下での行動パターンや、身体機能の変化を観察しているの」リリアナは説明を加えた。


ミルディアスはガラスケースに近づき、食い入るように虫たちを観察した。

(確かに、奇妙だが、興味深い…)


それからというもの、ミルディアスは生物研究部に足繁く通った。リリアナ助教授の指導のもと、彼は身体構造に関する座学はもちろん、薬品の調合や、解剖の補助なども積極的に行った。最初は気味悪がっていた標本や、複雑な生命のシステムも、彼の探究心を満たす刺激的なものに変わっていったのだ。彼は、身体強化によって自身の筋肉や骨だけでなく、脳や内臓、神経、血管といった体のあらゆる機能が、どのように魔力を取り込み、限界を超える力を生み出すのか、その詳細なメカニズムを生物学的な視点から紐解こうとした。


リリアナ助教授は、そんなミルディアスの熱意を高く評価していた。

「ミルディアス君、あなたは本当に飽きないわね。普通の学生なら、こんな『生々しい』場所は敬遠するものだけど」

「リリアナ助教授の研究は、私にとって新しい発見ばかりです。退屈する暇もありません」ミルディアスは真剣な眼差しで答えた。

「そう。それは何よりだわ。あなたの目指す身体強化は、単なる力の増強に留まらない。魔力によって身体を補い、究極的には複製することさえ可能になるのかもしれない…そんな、誰も考えつかなかった未来が待っている予感がするわね」リリアナは、どこか遠い目をして呟いた。彼女自身、その領域にまでは至っていないが、ミルディアスの探求心の中に、漠然とした可能性を感じ取っていたのだ。


生物研究部は、彼にとってただの学びの場ではなかった。それは、自身の身体と魔力の繋がりを深く理解し、魔法を使えない彼が、唯一無二の道を切り開くための、**「生命の図書館」**のような場所だったのだ。リリアナ助教授も、彼の類稀な探求心と、魔力操作が秘める未知の可能性に、静かながらも深い関心を寄せるようになっていた。


魔法道具研究部:魔力の新たな器を探して

ミルディアスが二つ目に選んだのは、実践的な技術と理論が融合する**「魔法道具研究部」**だった。この部への参加目的もまた、彼にとっては明確だった。それは、自身の膨大な魔力を有効活用できる道具、特に、魔力を遠くへ飛ばすための「武器」となり得る道具を見つけ出すこと。執事のクラウスから、遠距離から魔力を放つ魔道具の存在を聞いたことがあり、この部ならばそうした道具があるかもしれない、あるいは作れるかもしれないという淡い期待を抱いていたのだ。単純に魔法が使えないからこそ、道具でその代用ができれば、と彼は考えていた。


魔法道具研究部の研究室は、生物研究部とは対照的に、光が差し込む明るい部屋だった。しかし、その内部は、様々な魔法道具の部品や、未完成の試作品、複雑な魔法陣が描かれた設計図などで溢れかえっていた。部屋の隅には熱気を放つ鍛冶場があり、中央の作業台には魔力を帯びた金属片が散らばっている。ここでは、日々、新しい魔法道具が生み出され、あるいは既存の道具の改良が試みられていた。


この部は、魔道具の構造や、そこに込められる魔法陣の理論、そして魔力を効率的に道具へ流し込む方法などを研究している。魔法道具の製作には、高度な魔力制御技術と、魔力の特性に関する深い知識が不可欠だ。


ある日、彼は研究室の資料庫で、とある古い設計図を見つけた。それは、先端に魔力増幅の魔法陣が刻まれた「杖」の設計図だった。その設計者の手書きメモには、こう記されていた。

「この杖は、理論上、術者の魔力を長距離にわたり集中させ、強力な一撃として放出することを可能にする。しかし、**そのために必要な魔力は膨大すぎて、並の魔術師では一日で杖を使い果たすだろう。**まさに『魔力食い』の欠陥品。実用にはほど遠い」


ミルディアスは、そのメモを読み、確信した。まさにこれだ、と。

(膨大な魔力…俺には、無駄にあるほどある!)


彼は、その設計図を部長である老教授の元へと持っていった。教授は、白衣をまとい、分厚い眼鏡をかけた、いかにも研究者といった風貌の老人だった。


「教授、この杖は…」ミルディアスは、設計図を指し示した。


教授は眼鏡越しに設計図を見て、顔をしかめた。「おお、これは古の魔術師が残した設計図だな。懐かしい。確かに強力なはずだが、いかんせん魔力効率が悪すぎてな。実用にはならんよ」


「実用にはならない、ですか」ミルディアスは問い返した。


「うむ。並の魔術師が使えば、たちまち魔力枯渇で倒れるだろう。まるで魔力を食い潰すかのような代物でな。誰も手を付けようとしなかったのだよ」教授は残念そうに首を振った。


「では、もしこの杖に必要な魔力を供給できる者がいれば、どうでしょうか?」ミルディアスは、慎重に問いかけた。


教授は驚いたようにミルディアスを見た。「まさか、君がそれを使いこなせるというのかね? 君は魔法が使えぬと聞くが…」


「直接的な魔法は使えません。ですが、私の魔力量ならば、この杖に足りない魔力を補えるかもしれません」ミルディアスは続けた。


教授は興味深げに眼鏡の位置を直し、ミルディアスを観察した。「ふむ、君の魔力量か…。確かに、この学園でも並外れているという噂は聞いている。だが、魔力量だけでは足らない。この杖は、ただ魔力を流し込めば良いというものではない。繊細な魔力制御が不可欠だ。君はそれができるのかね?」


「私の魔力操作は、訓練を重ねてきました。精密な制御には自信があります」ミルディアスははっきりと答えた。「そして、もしこの部での研究に私の魔力が大量に必要であれば、喜んで提供します。私の魔力が、少しでも研究の役に立てば幸いです」


教授は、ミルディアスの真剣な眼差しと自信に満ちた言葉に、何かを感じ取ったようだった。

「ほう、君のその魔力量と、精密な魔力操作か。確かに、誰も持ち得ない組み合わせだ。これならば、この『魔力食い』の杖も、あるいは失われた可能性を取り戻せるかもしれんな」教授は顎髭を撫でながら考え込んだ。

「では、試してみる価値はあるかもしれんな。だが、危険も伴うぞ。この杖の調整は、特定の属性を持つ魔術師向けではない。魔力を純粋なエネルギーとして扱う、君のような特異な存在に合わせる必要がある」


「承知しております。私にできることなら、何なりとお申し付けください」ミルディアスは迷いなく答えた。


教授はミルディアスの言葉に興味を示し、その「魔力食い」の杖をミルディアス用に調整する実験を開始した。それは、杖の構造をミルディアスの魔力に最適化し、彼が持つ膨大な魔力を効率的に消費して、最大の効果を発揮できるようにするための調整だった。この調整は、特定の属性を持つ魔術師には不向きで、魔力を純粋なエネルギーとして扱うミルディアスの特性に合わせたもので、彼の膨大な魔力量がなければ成り立たないものだったのだ。


ミルディアスは、この魔法道具研究部で、自身の魔力操作を道具を通して発現させる新たな道を模索した。そして、自身の魔力が、ただ身体強化のためだけでなく、失われた可能性を秘めた魔法道具に新たな命を吹き込むことができると知った時、彼の心には、また一つ、魔法の世界への深い繋がりが生まれたのだ。彼は、この部での研究を通じて、自身の魔力操作とは異なる、新たな魔力活用の可能性を見出そうとしていた。


自分で決めたんだけど、ミルディアス魔法の勉強しないんだなって思った。

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