北の大地の代表・準々決勝前半
監督はモニターに映し出された試合映像を示しながら、より詳しく戦力分析を続けた。
「旭川イレブンズの特徴は、まず足腰が強ぇて、どんなにキツイ条件でも最後まで走りきるんだ。特に中盤のボランチは攻守に走り回って、相手の攻撃の芽を早ぐ摘みに来っから、そこの対応が大事だべ。」
「あと、フィジカルは強ぇけど、技術面はパスの精度がちっと落ちることもある。パスミスからのカウンターが多いのが特徴だ。ボール奪ったら、一気に攻め込むチャンスだと思ってけろ。」
ユリが手を挙げて言った。
「監督、あのボランチがしつこぐマークしてぐるとき、どう動げばいいべ?」
監督は穏やかに答えた。
「いい質問だな。そんときは無理して突破狙わず、一回味方にパス戻して、別の角度から攻撃作るんだ。特にサイドチェンジ意識して、相手の守備揺さぶるのが大事だっちゃ。」
迅も口を開いた。
「相手のフィジカル強ぇって聞いだんだけど、俺たちどう対抗すればいいんだべか?」
監督は頷いて言う。
「フィジカルは、ぶつかり合いで負げねぇように、まず正しい姿勢保つこと。体幹意識してバランス崩されねぇようにすんのが基本だ。そんでスピード活かして相手の隙つくこと。無理に力で押し合うんじゃねぇ、うまぐかわす技術も必要だ。」
柚月も質問する。
「守備ラインでの声掛けが大事だべさ。具体的な指示はなんかあるべか?」
監督は声を強めて答えた。
「そだな。守備ラインはみんなで意思疎通密にして、連動意識しろ。特に裏のスペースは誰かがカバー入るように声出せ。ここミスすっと命取りだ。」
選手たちは気を引き締めて頷き合った。
岩出コーチも一言。
「休みの日だって気抜ぐんじゃねぇぞ。ちゃんと頭に入れて、次の練習で身体に染み込ませろや。」
ミーティングが終わって、それぞれの部屋に戻ったけど、ユリは徹を誘って外に出た。
「おら、ちょっと体動かすべえや。じっとしどると逆に疲れっからな。」
徹は少し戸惑いながらも、
「んだな、ユリ。あんまり休みすぎると鈍るべ。」
二人はグラウンドの端で軽くランニングしながら、話し始めた。
「今日のミーティング、結構わがんねごど多かったなぁ。」
ユリは息を切らしながら、
「んだな、でも監督の話聞いで、なんだかやっぱり負げねぇって思えたべ。」
「そだな。旭川は足が強ぇらしいけど、こっちも負げでらんねぇ。おめぇのスピード、みんな頼りにしてっからな。」
ユリはちょっと照れくさそうに笑った。
「そう言われると、ちょっとプレッシャーも感じるけど…でも、徹もだべ?」
徹も笑って、
「もちろんだ。おら達みんなでがんばんねぇば、勝てっこねぇ。」
「そうだな。あと、こないだの試合のことも思い出すべ。」
「んだ、相手の速さやテクニック、けっこう脅威だったけど、おら達のチームワークがそれを凌駕したんだべな。」
ユリが肩を叩きながら、
「やっぱ、みんなで一緒に戦うんだて思うと、心強い。」
徹が少し真剣な顔で、
「おら達の夢、絶対あきらめんど。ユリの夢も一緒に背負って。」
ユリは力強く頷いて、
「んだ、そう思う。次の試合も、一緒に勝ち取ろうや。」
二人はまた軽く走り出し、寒さも忘れて前を見つめていた。
【旭川イレブンズ 宿舎・ミーティングルーム】
夕食後、宿舎の一室。ストーブが効いた室内に、選手たちが真剣な面持ちで集まっている。
壁のスクリーンには、仙台ジュニアFCのこれまでの試合映像が映し出されていた。
監督の松永誠一がリモコンを操作しながら言葉を紡ぐ。
「準々決勝の相手、仙台ジュニアFCだべ。東北予選勝ち上がってきて、ここまで三戦全勝。走るし、連携もうんと高いっしょ。ここが正念場だわ。」
まず画面に映ったのは、中央から左右にボールを散らすプレーヤー。
「この選手、柚月。右ボランチな。視野が広くて、いつも顔上げてプレーしてるべさ。落ち着いてパスつけてくるし、よう動くわ。」
続いて、左サイドから相手のパスをカットして切り替えを見せたのが——
「左ボランチの名取閖子。“ユリ”って呼ばれてるんだわ。守備範囲ひっろいし、読みも鋭い。1対1も強いし、インターセプトしてからの攻撃切り替えが、バカ速いのさ。」
映像は切り替わり、前線でスピードに乗ってボールを受けて抜け出すシーン。
「ここな、大事なのは左FW、大船徹。カットイン得意で、相手DFラインのギャップよう見てるっしょ。中に切れ込んでからのシュート、よう気つけれ。」
次は中央FW。
「んで中央FW、迅。裏抜けのスピード速いんだわ。タイミング合わせるのも上手いし、ボールの置き所も冷静。徹との連携もバッチリでさ、一瞬で抜けてくるぞ。」
さらに右サイドから抜けてきた選手に注目する。
「右FWは真斗。ドリブルのキレあるしょ、クロスの精度も高いんだわ。中にもズンズン入ってくるし、3トップが左右に動きまくるから、マンツーでつくのはオススメできねぇな。」
左サイドDFの原口隼人が手を挙げる。
「徹って選手、スピードやばいんすか?」
松永監督は一瞬考えてから頷く。
「やばいべさ。“速い”ってより、“しつこい”んだわ。しつこく追ってきて、前からもプレスかけてくるし、ディフェンスの戻りも早いっしょ。簡単にはボール持たせてくれねぇわ。」
DFの三浦洸太も映像に見入りながらつぶやく。
「名取って子、ボール奪ったあと、速っつ……」
「そだ。仙台の特徴は“攻守の切り替え”の速さな。ボール奪ってから、2秒で次のプレーに移ってくるんだわ。」
松尾キャプテンが前のめりになって言った。
「でも、うちらも体力と切り替えなら負けねぇべさ。冬の走り込み、伊達じゃねぇっしょ。前からのプレス、連動してかけたら、絶対揺らせるって!」
松永監督はその言葉に目を細め、頷いた。
「うむ。その気持ちは大事だわ。…でも、焦んなよ。仙台はカウンターも怖いからさ。特に真斗から迅の縦パス。あそこスイッチ入ったら、止まんねぇからな。」
「……マジ、全部走れるチームっすね。」
「そったらもんだ。だから、試合は“我慢比べ”だべ。焦れず、慌てず、正確に守って、確実に突け。うちら、そういうチームだっしょ?」
部屋中に、引き締まった空気が流れる。
「最後に。仙台は“仲間との連携”で点取ってくるんだわ。だったらうちらも、全員で止めて、全員で攻めるべさ。雪のピッチで鍛えた絆、ここでぶつけんぞ!」
「はいっ!!」
その声には、気負いのない確かな自信が宿っていた。
【準々決勝・旭川イレブンズ戦 試合開始】
試合開始のホイッスルが鳴ると同時に、両チームは激しくぶつかり合った。序盤から中盤でのボールの奪い合いが続き、少しでも隙を見せれば、すぐにボールを奪われてカウンターを食らう。
旭川イレブンズの切り替えは速く、攻守が一瞬で反転する。プレスがわずかに遅れれば、あっという間にペナルティエリアの中まで押し込まれる展開だった。
仙台ジュニアFCは、なんとか最終ラインで跳ね返しているものの、クリアが甘ければ、またすぐに拾われて二次攻撃を受ける。ポストに当たるミドルシュートもあり、ヒヤリとする場面が何度も訪れる。
ゴール前で構えるGKの道也は、冷静に状況を見ていた。
「……マーク、ズレてる……!」
的確に状況を読み取り、すぐさま前線に声を飛ばす。
「ユリ!雅!ちょい右寄れ!柚月は、中央下がれ!」
ボランチの名取閖子と右サイドの柚月、そして今日の試合で先発に入った雅がすぐに反応し、マークの位置を修正する。
——そして。
相手の縦パスを、ユリが一歩早く読み切ってインターセプト。
「ナイス、ユリ!」
そこから仙台の反撃が始まる。
ユリはワンタッチで左に展開。ボールは大船徹へと渡る。
徹が縦に抜けると、観客席からどよめきが起こった。
旭川の選手たちが一斉に戻り始める——。
スピードと読み合いの、次なる攻防が始まろうとしていた。
試合が動く気配を感じたのは、残り時間が10分を切ったころだった。
右サイドでこぼれ球を拾った隼人が、一気にギアを上げて前線を駆け上がる。
「いっけぇえええ!」
ベンチから誰かが叫んだ。
タッチライン際を一気に駆け上がった隼人は、ディフェンダーを一人かわし、思い切ってミドルレンジからシュート。
鋭く放たれたボールはゴールポスト左端を狙った――が、
「くっ…!」
相手キーパーが全身を伸ばして、ギリギリで指先にかけ、コースを変える。
惜しくもゴールにはならず、ボールはタッチラインを割った。
「おしっ、コーナーだコーナー!」
仙台ジュニアFC、絶好のチャンスに、チーム全体が一気に前がかりになる。
左からのコーナーキック。キッカーは柚月。
中では、迅が中盤、徹がゴール前、真斗が後方に構え、
そのさらに後ろ――誰も気づいていないポジションに、**名取閖子**が静かに立っていた。
柚月がボールをセットしながら、そっとユリにアイコンタクトを送る。
ユリが小さくうなずいた。
(……来る)
柚月が、ほんのわずかに重心をずらす。
蹴られたボールはふわりと浮き、速すぎず、ユリの前方へと吸い込まれるように伸びてきた。
「ユリ、行けっ!」
ベンチからの声に、誰よりも早くユリが動き出す。
完全にマークを外したユリが、ゴールへ向かって一気に飛び出した。
「よっしゃあ……!」
胸トラップからのボレー。狙いは、ゴールの右隅。
わずかに空いたディフェンスの間を通す、まさに一瞬の隙をついたシュートだった。
――しかし。
「んんっ!」
相手GKが、驚異的な反応を見せた。
反応が遅れたかに見えたが、足先にかろうじて当ててボールを弾く。
「うわっ、今の止められっか……」
惜しくもネットは揺れず、ボールはタッチラインを割って、今度は旭川イレブンズのゴールキック。
ユリは悔しそうに小さく息をついたが、すぐに表情を引き締めて戻りながら呟いた。
「……次は、決めっかんな」
旭川イレブンズのゴールマウスに立つ橘和也は、冷たい風に吹かれながら、試合の空気の変化を肌で感じ取っていた。
(――前半の序盤とは、まるで違う)
相手の足が止まりかけていた時間帯は終わり、今はむしろ彼らの方が動きにキレがある。中盤でユリと柚月が細かくパスを回そうとするたび、相手のプレスが鋭くなってきた。迅へのスルーパスも、以前より精度を求められている。
(このままじゃ、じわじわ押し込まれる)
背筋が冷える感覚。ボールを受けた味方のCBが下げてくるたび、橘は視線で問いかけた。
(もっと縦を狙え。走らせろ)
前がかりになった相手の陣形――隙がないわけじゃない。特に相手の左SBは攻め上がりの頻度が増えている。ならば――。
橘はロングキックの体勢に入りながら、大船徹をちらと見た。
(徹、お前なら、あのスペースを使えるはずだ)
徹はすでに反応していた。左サイドのライン際、ぎりぎりの位置で身体を開いて、橘の視線に応える。
――バチンッ!
橘の足から放たれたロングフィードは、澄んだ空気を裂いて弧を描く。徹は加速。相手SBの裏を取って、一気に駆け上がる。
「よしっ……!」
橘は拳を握った。その一手が、風を変えるかもしれない。
旭川イレブンズのゴールマウスに立つ橘和也は、冷たい風に吹かれながら、試合の空気の変化を肌で感じ取っていた。
(――前半の序盤とは、まるで違う)
相手の足が止まりかけていた時間帯は終わり、今はむしろ彼らの方が動きにキレがある。中盤でユリと柚月が細かくパスを回そうとするたび、相手のプレスが鋭くなってきた。迅へのスルーパスも、以前より精度を求められている。
(このままじゃ、じわじわ押し込まれる)
背筋が冷える感覚。ボールを受けた味方のCBが下げてくるたび、橘は視線で問いかけた。
(もっと縦を狙え。走らせろ)
前がかりになった相手の陣形――隙がないわけじゃない。特に相手の左SBは攻め上がりの頻度が増えている。ならば――。
橘はロングキックの体勢に入りながら、大船徹をちらと見た。
(徹、お前なら、あのスペースを使えるはずだ)
徹はすでに反応していた。左サイドのライン際、ぎりぎりの位置で身体を開いて、橘の視線に応える。
――バチンッ!
橘の足から放たれたロングフィードは、澄んだ空気を裂いて弧を描く。徹は加速。相手SBの裏を取って、一気に駆け上がる。
「よしっ……!」
橘は拳を握った。その一手が、風を変えるかもしれない。
旭川イレブンズのゴールマウスに立つ橘和也は、冷たい風に吹かれながら、試合の空気の変化を肌で感じ取っていた。
(――前半の序盤とは、まるで違う)
相手の足が止まりかけていた時間帯は終わり、今はむしろ彼らの方が動きにキレがある。中盤でユリと柚月が細かくパスを回そうとするたび、相手のプレスが鋭くなってきた。迅へのスルーパスも、以前より精度を求められている。
(このままじゃ、じわじわ押し込まれる)
背筋が冷える感覚。ボールを受けた味方のCBが下げてくるたび、橘は視線で問いかけた。
(もっと縦を狙え。走らせろ)
前がかりになった相手の陣形――隙がないわけじゃない。特に相手の左SBは攻め上がりの頻度が増えている。ならば――。
橘はロングキックの体勢に入りながら、大船徹をちらと見た。
(徹、お前なら、あのスペースを使えるはずだ)
徹はすでに反応していた。左サイドのライン際、ぎりぎりの位置で身体を開いて、橘の視線に応える。
――バチンッ!
橘の足から放たれたロングフィードは、澄んだ空気を裂いて弧を描く。徹は加速。相手SBの裏を取って、一気に駆け上がる。
「よしっ……!」
橘は拳を握った。その一手が、風を変えるかもしれない。
旭川イレブンズのゴールキーパー、橘和也は、後半に入ってからの相手の動きに微かな変化を感じ取っていた。
(――前半とは違う。立ち上がりの頃はもっと硬さがあった。いまは…流れるようにパスが回ってる)
フィールド全体を俯瞰する立場だからこそ見えるものがある。相手フォワードの呼吸、ミッドフィルダーのポジショニング、そして一瞬の判断の精度――すべてが確実に上がってきている。前線からのプレッシャーのかけ方も変わった。ボールを奪いに来るタイミングが、怖いくらいに的確だ。
(後ろで繋いでるだけじゃ、やられるかもしれん)
自陣でボールを回す時間が長くなればなるほど、相手の網に絡め取られる危険が増す。守備陣が余裕をもってパスを回しているように見えても、そこにはジワリジワリと忍び寄る罠がある。焦らず、しかし確実に仕留めに来ている――橘にはそれがわかった。
(だったら、あえて長いボールで勝負するべきや)
和也はそう結論づける。相手の守備陣形が整い始めた今、彼らを揺さぶるには、単調なパス回しでは足りない。中盤をすっ飛ばすロングパスで、相手のDFラインの背後を突く。フィールドを縦に一気に割るような展開を作れば、相手も戻らざるを得ない。そこに、隙が生まれる。
(俺が、そのリズムを作る)
ゴールキーパーとしてただ守るだけではない。チームのリズムを操る起点として、流れを変える役割を自覚している。状況を読み、判断し、正確に蹴り出す。その一球が、局面を動かす。
和也は、次のプレーに向けて静かに構える。視線の先には、仲間の動きと、わずかなスペースを窺う相手ディフェンスのライン。そのすべてを、冷静に、しかし熱く見つめていた。
和也は、相手フォワードの動きに目を凝らしながら、自陣からの視界全体を冷静に俯瞰していた。
――やっぱり、変わってきた。
序盤、相手の攻撃はやや単調で、明らかに様子見の色が濃かった。ロングボール主体で、前線の高さとスピード頼み。だが、今は違う。中盤の選手がパスの受け手として明確に機能し始め、連携のリズムも滑らかになってきている。
――後半の入りから、パスの質が上がってる。タイミングもいい。狙いもある。
ただ漫然とボールを回すのではなく、崩しの意図をもって、しっかりと形を作ってきている。その証拠に、旭川イレブンズの最終ラインは、さっきから押し込まれっぱなしだ。
――このまま受け身でいると、いずれやられる。
和也は、左手で一度グローブを握り直し、軽く肩を回した。冷静さを保ちながらも、胸の奥に微かな焦りが灯る。ゴールキーパーである自分は、最前線の指示は出せない。だが、味方の位置関係と相手の動きを誰よりも見渡せるポジションにいる。ピッチの全体像を把握できるのは、自分しかいないのだ。
「もっとライン上げろ! セカンド拾え!」
叫ぶ声に、自分でも熱がこもるのを感じた。守備ブロックの距離が少しずつ空きはじめ、ボールに食いつきすぎるDFと、カバーに回るはずの味方との連携が噛み合わなくなっている。
和也は思った。
――このまま押し込まれ続けるより、いっそ前に蹴って走らせる方がいい。ロングボールで相手を自陣に引き戻せば、少なくとも後ろのスペースを消せる。息を整える時間も稼げる。
それに――。
和也は、チームの前線にいる10番の姿を視界の端に捉えた。
――あいつなら、収められる。時間を作ってくれる。
判断は一瞬だった。自陣深くで相手にボールを持たれるより、たとえ精度が低くとも、一発で相手の陣形を揺さぶれる可能性がある方がいい。守るだけでは、いずれ限界が来る。
和也は蹴る準備に入った。センターバックにボールを戻すのではなく、自らの足で強く前へ――。
敵の包囲網に一瞬の“ほころび”が生まれた。
「そこだ……!」
徹はその瞬間を逃さなかった。
囲まれ、追い詰められたかに見えたが、彼の目は冷静に敵の配置を読み解き、微かな隙間を見つけていた。
踏み込む足に力を込め、体を一気にひねる。
ボールは鋭く蹴り出され、ミドルシュートとなって敵ゴールへと飛んでいく。
「行け……行けッ……!!」
場内の息を呑む音が伝わる。
飛んだボールはゴールキーパーの指先をかすめるが、わずかにそれを越えてネットを揺らした。
「決まったァッ!!」
歓声がスタンドを揺らし、仲間たちは歓喜の声を上げた。
和也の包囲は破られ、徹の決定的な一撃が勝負の行方を左右した。
フィールドの上では、徹の冷静な眼差しが炎のように燃え上がる。
「まだ終わらねぇ……だが、これでこっちが優位だ。」
敵陣の動揺がピッチを支配し始めた。
この一瞬の隙を逃さず、仙台ジュニアFCはさらに勢いを増していく――。
前半は1-0で仙台ジュニアがリードする展開となった。
激しい攻防の中、両チームとも譲らず、前半20分を終えた時点でのスコアはこのまま動かず。
アディショナルタイムは2分と告げられ、仙台ジュニアの攻勢は続く。
だが時間は刻一刻と過ぎていき、選手たちは気を緩めることなくボールを追い続けた。
そして、ホイッスルが鳴り響き、前半は1-0のまま終了した。