レベル2/ヒト型
ダンジョン。
それは街を圧し潰し、中から現れる怪物は人々を襲う。
当然__ダンジョンから国民を守るべく、立ち上がる人々が現れ始めた。
機械で身体を強化して、モンスターを討伐、迷宮を踏破する職業が掃除屋。
彼らの中でも最も優秀な人材を、人々は”こう呼んだ”。
――”パワードスーツ”、と。
『現代ダンジョン攻略/レベル2/ヒト型』
古賀達也はダンジョンの最上層にいた。
依頼も満期の二日目であり、処分した怪物の数も、ノルマ以上の14匹をマーク。
パワードスーツすら使わず、親父の仕事道具である次元刀だけを引っ提げてここまで来た彼だが、ゴールも最早目前だった。
このまま無事に終わると良いが……
「達也くん! 少し悪いニュースだ。下層の隊員から連絡が途絶えた」
そう話すのは長髪の男。戦闘中らしいが、その様子は余裕綽々で、振り抜いた拳で怪物の頭を粉砕した。
「まぁこの程度の敵なら私達で十分ですが」
正直言って、ここらの怪物はあまり強くはない。
一、二年程度でも実地での経験があれば、命を落とすことなく進めるはずだ。
長髪の男がそう話す一方、達也には嫌な予感がした。
この感覚は母が殺された時に似ている。
「でも、念のため、今後は5分おきに連絡を取り合いましょう」
達也の提言通り、次の定時報告は直ぐに行われた。
しかし、班の数がやはり少ない。
「1班減ったな」
更に次の報告でも9班からの連絡が途絶えた。
とは言え仕事を止めるわけには行かない。
念のため救護班への連絡だけ済ませ、古賀たちはダンジョン最深部へと辿り着いた。
しかし既に定時報告なんて言葉は意味をなしていなかった。
アレから15分が経つが、全10班居たはずの、掃除屋は達也らの1班を残して、全てが連絡を途絶えさせていた。
最後に連絡が付いたのは中層中部で調査をしていた第5班。
彼らも既に7分前から連絡が付かない。
最悪の事態だが、もし連絡を途絶えさせた"何か"がいるなら、奴は徐々に下層から昇ってきていることになる。
そいつは相当に強力な個体に違いない。
しかし、ダンジョン最奥の結晶さえ破壊してしまえば、問答無用で中の怪物は死に絶えるはずだ。
達也が結晶に手を触れたところで、場の雰囲気が変わる。
「……来やがったな」
ダンジョンに潜む怪物には様々な個体が居る。
龍の様な爬虫類に近い個体、鬼の様に筋骨隆々の個体、人とは異なる異形の個体。
基本的には身体が大きいほど厄介なのだが、例外として、絶対に相手にしてはならないタイプがいる。
それはヒト型。
大きくも小さくもないが、
人語を介し、知能も高い、そして途方もなく__強い。
「こりゃ……何人かは生きて帰れないな」
達也はパワードスーツのスイッチを入れる。
達也らと対峙する個体。
それはヒト型だった。