福音(ふくいん)
小さな砂粒のひとつ
とどまることない潮流
潮騒の音聴く眠り
朝日が昇る
繰り返す小さな呼吸
ぷうぷうと
目には見えない瞬間
輪郭が透けて見える
視線を落とせば
調和のとれたビルディングフロアへ
メトロノームの刻をきざむ
ピアノ鍵盤の音
ふるえた葉っぱ
ひろう
風のフルートの先に
街路樹たちがざわめく
展覧会に飾られたあなたの絵画
暗い壁の上
一兆年彼方から変わらぬ
人工のスポットライト
人の手が作り出したぬくもり
ゆっくりと息を吐く
鼻の奥にツンと響く
静けさ
あなたの匂い
まぶしい光
帰ってゆくの?
振り返れば
どこか
1度だけ聴いた
トライアングルの音色
目を閉じる
3次元に虹色
暗闇とは切り離せない光
三角のプリズムの中
いつまでも反射する
真実
どこまでも遠くて
大理石の床に響く靴音
鏡のように映る
遡る
人工衛星の旅立ちから
炎の誕生まで
借り物の姿で生まれては
生まれたての扉を開く
目覚めの大地
暗闇の彼方から
風に光に雲に頬ずり
どこまでも空飛ぶあなた
太陽の向こう側
まぶしくて
しばらく消えそうも無い残像
目の奥に閉じこめて
想う
光の筋
あなたと私を結ぶ
見えない小さな輝き
過去 現在 未来
どこまでも指し示す導き
青い光
胸の内で鼓動する鳴り響く証明
あなたへと向けて
私へと向けて
待ち合わせへと急ぐ
かけ抜ける
ビルの谷間
風
どこからか吹いて
ひとつになって
飛んでゆく
晴れた空
トランペットが鳴り響く
天使に囲まれた日




