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いつの頃からだっただろう、目立つのが嫌いになったのは…。
子供の頃はけっこう目立ちたがりだったような気がする。
幼稚園の時なんか、劇をやる時は一番目立つ役に立候補していた。
みんなの前で何かを表現することが大好きだった。
そしてパパとママから褒めてもらうことがとても嬉しかった。
大好きな両親、暖かい家族、私はそれをごく当たり前の事と思っていた。
が、大きくなるにつれて、我が家は普通の家庭ではない事が分かってきた。
そしてその事は噂好きの他人の大好物になるようなネタで、他人は平気で私の家族を無責任に傷つけることが分かった。
事の始まりは同じ園バスに乗っていた絵梨ちゃんだった。
それ以来、私が大勢の前に出る事があると、コソコソ噂話をする人たちを見かけるようになった。
心臓がギュっとつかまれるような気持ちになった。
でもそれよりも、ママの事が心配になった。
悲しい思いをしているんじゃないかと思った。
目立たなければ陰口を言われることもないだろう。
次第に私は表に出ないように、陰で息を潜めるようになっていったのだ。
そんな私が駅前でパフォーマンスを始めるとは…。




