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知り合いにそんなツテがあるのに、何故彼女は今までそこで働かせてもらわなかったのだろう?
そしてこの男も、長年彼女が正社員に就けなかった事を知っているはずなのに、何故今まで知らん顔をしていたんだ?
「あの…沢渡さんは、彼女とどういうご関係なんですか?」
「僕ですか? 何て言うか…親同士も知り合いで…幼馴染って言うか…」
なんとも要領を得ない返事だった。
「立ち入ったことをお聞きして申し訳ないのですが…、婚約者、とか?」
「い、いえ、違います。」
「だけど、彼女に気がある…そうですよね?」
「…。」
何も言わない事がそれを肯定しているのだとわかった。
「どうして今まで彼女を雇ってあげなかったんですか? 彼女、あれ程正社員になりたがっているのを長年の付き合いがあるあなたならご存知のはず。」
「僕はずっと前からそうしようと思っていたんです。だけど…そうすることで逆に彼女が辛い目にあうんじゃないかと…。」
「どうしてですか?」
「それは…深い事情もありまして…彼女の了承無しにお話しするのも…。」
「そうですか…。しかし、そういうマイナス要素があるにも関わらず、今彼女を受け入れて大丈夫なんですか?」
「彼女のパフォーマンス…長谷川さんもご覧になったでしょう? その効果というか…状況に変化が表れているのがわかったんです。」
え?
どういうこと?




