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当初は絶対に雇うことはないと思っていたはずなのに、今ではその気持ちが揺らいできている。
心地いいんだ、一緒にいると。
それはもちろん、多少の不安はある。
津田の嫁さんみたく、結婚したとたん態度が変わるとか…。
いやいや!
俺と彼女は結婚するのではない!
雇用だ!
そうなったら辞めてもらうこともできる。
そして、一番気になっているのは…やはり彼女の奇行…あのパフォーマンスだ!
うちでの様子を見ていると、ごく普通だし、常識も持ち合わせているように思える。
とても人前であんなパフォーマンスをするようなタイプとは思えないのだ。
しかも彼女自身、ダンスは好きじゃないと言っていたし。
なのに何故?
そこが俺を疑心暗鬼にさせて、彼女を雇用するかどうか悩ませているのだ。
職業柄、お堅いイメージを保たなければならない訳だし…。
「先生…」
「はい。」
「あの…私、そろそろここに来て3週間たちますよね…。」
彼女の方から話を切り出してきた。




