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ますます彼女の事が分からなくなってきた。
そんなに嫌いなダンスを、そしてお世辞にも上手いとは言えないダンスを、何故あんなに目立つ場所で披露するのだ?
「あの…踊ってたよね? 駅前広場や三角公園で…」
それを聞くと、彼女は顔を真っ赤にして俯いた。
「それは…」
彼女が話してくれるまで待とうと思っていたが、どうやら彼女はそのことについては話したくないようで、どう言ったらいいのか困ったような表情をしていた。
プライベートに立ち入ることはしたくなかったし、すべきでないと思ったので、もうこれ以上の詮索はやめた。
「ちょっと早いけど、もうすぐ時間になるし、そろそろ帰ってもいいよ。帰りにそれ、ポストに出しておいてくれる?」
「はい!」
彼女は郵送物をまとめると、帰りの支度を始めた。
「あの…、ちょっと着替えたいので、応接室借りてもいいですか?」
…着替え。もしかして…
「どうぞ。」
そう言うしかなかった。




