55
「いや、いろいろ言ったけどあくまで俺の想像だからね! 男がみんなこう思ってるわけじゃない。」
「…なんか先生逃げてないですか~?」
やれやれ…。
お茶と飲んで一息ついたところで、午後の作業を始めた。
彼女は掃除の続きを始めた。
本当は嫌いな掃除をこんなに一生懸命やってくれているのを見ると、俺の心は罪悪感で一杯になってきた。
どうせ何だかんだ理由をつけて雇わないつもりなのに…。
雇わないんだったら早めに言った方がいいに決まっているのに、彼女の顔を見ると言い出せなくなっている自分がいた。
「先生、四時なので帰らせていただきます。ちょっと着替えたいので、応接室使っていいですか?」
「どうぞ!」
彼女が応接室に入ってからしばらくして、ドアが開く音がした。
「お先に失礼しまーす!」
玄関から声がした。
ちょうどトイレに行こうと思っていたので事務室のドアを開けた。
目の前に玄関扉がある。
ちょうど扉が開いて彼女が出て行くところだった。
後ろ姿がチラっと見えた。
…チャイナ服?
確かに赤いチャイナ服を着ている彼女の後ろ姿が見えた。
仕事帰りに何故チャイナ服なんだ…。
また嫌な予感がした。
俺は駅前広場へ向かった。




