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「お茶入れますね。」
彼女はキッチンへ行ってお茶を淹れ始めた。
「岩田さんは掃除が好きなの?」
「え?」
「楽しそうに掃除してるし。」
「好きなわけないじゃないですか! まあ、初めてでは無いので慣れてはいますけど…」
「そうなの? じゃ、何で?」
「雇ってもらいたいからに決まってますよ!」
「そんなにここで働きたいの? 他にももっといい条件の所があるだろう。」
「私、営業やサービス業は苦手で、出来るだけ事務作業的な、そしてノルマとかが無いとこでって思っていて…でもそういう募集ってあまりないんです。あっても面接で落ちちゃうし、この前みたいに面接までこぎつけられない場合が多くて…。やっぱり前の会社辞めてからのブランクが長すぎたようで、そこがネックになっているみたいです。私、正社員になりたいんです!」
「そっか…」
「でも、やるからには楽しくやりたいです。掃除も喜んでもらえるように創意工夫したいです。」




