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「れ、麗子ちゃん…そういう事だったの?」
「?」
「だったら私もミー君と麗子ちゃんのご両親に挨拶に行かなきゃね! あー、忙しくなるわ! 準備しなきゃいけない物とかたくさんあるだろうし…。えっと、病院はどこにしたの?」
「ちょっと待ってよ母さん。相手は俺じゃない!」
俺は彼女に向き合った。
「君、妊娠してたの? そんな体でうちの事務所の大掃除なんてしちゃダメだろ! 相手の男も何考えてんだ…」
「えっ? ミー君それどういう事? ミー君の子供じゃないの?」
おふくろは混乱している。
「あの…私、妊娠してませんよ。」
「だってそのお腹!」
「…私、かなりの胃下垂で…たくさん食べるとお腹が出ちゃうんです…。今日、あんまり美味しかったから、つい欲張っちゃって…」
彼女はもじもじしながら恥ずかしそうにそう言った。
「…なんだぁ~」
母親は気が抜けて椅子にへたり込んだ。
ったく人騒がせな…。
案の定、食後しばらくすると、彼女の腹は元に戻っていた…。
帰りしな、おふくろはずっと「残念だわ~」と恨めしそうに俺に呟き続けた。
 




