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「いえ…私があんな格好で玄関に出てきたから悪いんです。すみません。」
彼女は頭を下げた。
「やめてー! 謝られたら罪悪感で立ち直れなくなるわー! 私、こんなんだからミー君に疎まれてるのよ。そうなの、そうなの! 私、すぐ誤解するし、おせっかいやくし、こんなんだからミー君、私の事避けるのよ~!」
…勘弁してくれよ…
「お母さま、そんなこと言わないでください。私が世間の常識というものをわきまえてないからいけないんです。試用期間中なのに…こんなんじゃクビにされてもおかしくないです…。」
彼女は自分の境遇にまで思いを馳せだし、目に大粒の涙を浮かべた。
眉も目も口角も八の字になっている。
おふくろを見てみると、マジかよ!
おふくろも彼女と同じ表情でお互い見つめあっている。
何なんだこの寸劇は?
ってか、あんたたちソックリじゃないか!
ったく結局俺が一番悪いんじゃないか…
「…お昼食べに行こ。お詫びに俺おごるから…」
何故詫びなければならないのかわからなかったが、気付くとそう言ってしまっていた。
その瞬間、さっきまでベソをかいていた二人が俺の方に振り向き、ニッカーと笑った。
…やっぱこの二人、似てるわ…。




