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「麗子ちゃんのママ、あいじんだったでしょ?」
次の朝、バスの中でまた絵梨が言った。いつもの意地悪そうな笑顔で。
「そんなこと言うのやめて! うちのママをバカにしないで! これ以上言うんだったら麗子、先生に言う! 絵梨ちゃんはうちのママの悪口を言いますって。助けてくださいって! バスのおじさんにも言う。園長先生にも言う! 今度入る小学校の先生や、駅前の交番のおまわりさんにも言う! みんなに言いまくるよ!」
「麗子ちゃん、バカじゃない? そんなことしたら絵梨はそのみんなに麗子ちゃんは嘘つきだって言いふらしてやるから!」
虚勢を張りながらも絵梨はたじろいでいた。
「絵梨ちゃん、麗子本気だよ! ママを虐める人は絶対許さない! 言って分からないんだったら、その鼻を叩き潰してやる!」
鼻を叩き潰すなんてどこで仕入れたセリフかよくわからなかったが、幼い麗子がその時思いつく一番の脅し文句だったのだろう。
きっとテレビか何かで耳にしたのだ。
バスが園に着くや否や、絵梨は泣き出してバスから飛び出していった。




