37/120
37
「麗子ちゃんのおうちはどうしてパパがいないの?」
幼稚園バスの中で隣に座っている絵梨ちゃんが聞いてきた。
「いるよ! 麗子のパパいるもん!」
「うそ! おうちいつもママだけじゃん!」
絵梨ちゃんはちょっと意地悪な子だった。
「パパいるもん! パパはお仕事が忙しくって、なかなかおうちに帰ってこられないだけだもん!」
綾子は、一郎がいつも家にいない事を麗子にそう説明していた。
「麗子ちゃんのママね、あいじんって言うんだって。絵梨のママが言ってた。」
「…あいじん?」
麗子は家に帰ってから母親に聞いた。
「ママ、あいじんって何?」
綾子は目を見開いて我が子を見た。




