表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すみません、妻です  作者: まんまるムーン
33/120

33




「どうぞ。」


オフクロと俺にお茶を持ってきてくれた。


そして「失礼します」と静かに言って部屋を出て行った。


いつも使っているお客さん用の湯飲みには蓋がしてあった。…そうだ。この湯飲みは蓋つきだった。


どうせすぐ飲むし、洗うのも面倒くさいし、どこかにしまったまま存在を忘れていたのだ。


オフクロは彼女を一瞥し、そして何も言わずにお茶を飲んだ。


さっき俺にどなって喉が渇いていたのか全て飲み干した。


それからしばらく湯飲みを手に取ったまましばらくそれを眺めていた。




「このお湯呑み…あの子が漂白したの?」


「…ああ。」


「これ、こんな色だったのね…。てっきり中は茶色のデザインなのかと思ってたわ。」


「…。」


「お茶の温度も丁度よかったわ。若い子は熱々のお湯で入れたりしがちだけど…ちゃんとわかっているのね。」


「え、熱い方がいいんじゃないの?」


「まったくミー君たら! お茶の味を引き出すにはこれくらいの温度の方がいいのよ。」


「へぇ、そうなんだ…。そういえば俺が入れるより味がまろやかだな…」



俺が改めて彼女の入れたお茶を堪能していると、おふくろはさっさと事務室の方へ向かって行った。


彼女は掃除の続きで、流しの下の整理をしていた。


「岩田さん!」


「はいっ!」


彼女はしていたマスクを取って振り向いた。


今日はガスマスクでも防護服でも無かった。


頭に三角巾をして普通のエプロン姿だった。


俺はホッと胸をなでおろした。


「私、瑞貴の母です。だらしない息子ですけど、よろしくお願いしますね!」


だらしないことは無いだろう!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ