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「も~、ミー君! ママがどんな気持ちになったかわかってるの?」
玄関を開けるなり、おふくろが怒鳴り込んできた。
「先方さん、もう激怒だったんだから! …あら…」
おふくろは横に立っている岩田麗子に気付いた。
「ミー君、こちらは…?」
「は、初めまして。岩田麗子と申します。」
彼女は頭を下げた。
おふくろは俺の手を掴んで応接室の中へ引きずり込んだ。
「ちょっと、ミー君! どういう事なのよ!」
「どういうことって?」
「あの子…それならそうと初めから言ってくれていたら、ママわざわざお見合いなんて頼まなくてよかったのに!」
「違うよ! あの子はうちで働いてもらってるの!」
「あら、ミー君、誰も雇わないって言ってたじゃない!」
「そのつもりだったんだけど何故かこんなことになってしまったんだよ!」
おふくろは腑に落ちないようで俺を睨み続けていた。
「失礼します!」
彼女がドアをノックして入ってきた。




