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「雇用主さんですか…。」
俺と彼女は警備員スタッフに建物内の部屋へ連れられて行った。
警備員は眉間に皺を寄せて俺たち二人を交互に見た。
「困るんですよ。あそこは許可無しに使うことは禁止されているので。」
「すみません。」
謝る義理も無かったが、面倒な事は速く終わらせたかったので頭を下げた。
横目で彼女を見るとガスマスク越しの顔は悪びれもせずふんぞり返っていたので、頭に手をやって無理やり頭を下げさせた。
「もうしないで下さいよ! 今日の所はもういいですから。」
「本当に申し訳ありませんでした!」
俺は彼女の背中を押して急いで部屋を出た。
建物から出ると、疲れがドっと出た。大きなため息をついた。
「いったいどういうつもり?」
彼女は何も言わずガスマスクを取った。
長時間ガスマスクを付けていたせいで髪がベタっと張り付いていた。
その髪をほぐすかの如く、頭をボリボリと掻いている。
「君さぁ、反省してないの?」
「何であそこで踊ったらダメなんでしょうね…」
「…話しになんないな。」
「悪いけど、明日からもううちの事務所にはこないで。」
「そんなっ!」




