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「ちょっとあなた! いい加減にしてください!」
警備員は彼女の前に立ちふさがった。
しかし彼女は警備員を交わしながら踊った。
まるで警備員が最初から仕込まれたパフォーマンスの一部みたいに!
観客からは笑いが出た。
痺れを切らした警備員は彼女の手を掴み、引っ張っていった。
「離せ―! まだ途中だー!」
この女は何かに憑りつかれているのか?
そしてこの言葉遣い…。
同じ人間とは思えない。
さっき事務所にいる時はまともだったのに…。
いや!
まともじゃなかった!
態度は普通だけどガスマスクだったじゃないかっ!
「助けてーーーー!」
彼女は突然俺に向かって助けを求めた。
俺の周りから人々が離れた。
マジで?
やめてくれー!
仲間と思われている~!
「助けてーーーー!」
彼女は警備員に腕を引っ張られながらも反対の手を俺の方に伸ばして必死で叫んでいる。
警備員は俺を見て彼女の手を摑まえたまま近寄ってきた。
「ご家族の方ですか?」
「…え?」
「もしかして、奥様ですか?」
「違いますっ!」
「ちょっとご一緒に来ていただけますか?」
は~、もう勘弁してくれよ!




