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「♪防護服~を着て~お掃除するのよ~♪ そうよ~ガスマスクだって忘れないわ~♪」
ガスマスクの女が駅前広場で訳の分からない歌を歌いながら踊り狂っていた!
…帰ろう。
何も見なかったことにして帰ろう。
そして明日彼女に言おう。
残念だけど就職先は他をあたってくれと…。
そうだ、そうすべきだ…。
「ちょっとあなた! 許可とってるんですか?」
そこへ警備員がやってきた。
彼女は警備員をチラと見ただけで、またパフォーマンスを続けた。
「♪どんなに苦しくたって~負けないで~なんだったらこのガスマスクをあげるから~♪」
…酷い歌詞だ。
こんなレベルのくせに、よくこんな目立つ場所でパフォーマンス出来るな…。
彼女は警備員の制止を振り切って踊り続けている。
手で波のような動きをしたり、突然クルクル~っと回りだしたり、とてもじゃないけど、どう見てもド素人の振り付けだ。
そしてクルクル回っている途中でバランスを崩して倒れそうになったりしているし、これは誰が見てもダンスなんかやったこと無い人間だとわかる。




